環境変化の激しい現状において、データドリブン経営管理によって、高度な経営管理を目指すことになるが、同時に、ある種の慣性が働くことで、過去の慣習が障壁となり、レベルアップの足かせとなることも多い。この点、経営を担うリーダーシップチーム(経営会議メンバーで構成され、DXに関する意思決定をする集団)がレベルアップの取り組みをけん引していくことが重要となる。
ここでは、レベル3以降で重要となるポイントを解説していく。
「レベル3:事後対応経営」ではデータに基づく客観的な対応方針の意思決定が重要となる。本来は、ドリルダウンできるようにデータが体系化されており、実績値をベースに、その原因と対策の分析を行っていくのが理想的な姿だ。
しかし、実際には、データは見るものの、結局は経験と勘によって対策を意思決定してしまう。むしろ、想定する原因・対策を正当化するための追加的なデータ分析が行われ、所期の目的が達成できないケースも多い。リーダーシップチームによるデータ活用の徹底が必要だろう。
「レベル4:事前対策経営」では、実績データに基づく原因分析に加えて、将来リスクに備えて事前に対策を講じ、改善することを目指す。従前の対策の結果をモニタリング・レビューすることで次の打ち手の精度向上につなげていく。
しかし、財務指標を中心とする実績データおよび対策結果のデータを分析するだけでは、行動につながる指標にまで自動的にブレイクダウンできず、KPIに基づいて自ら考えないと実践可能な打ち手につながらない。このレベルでは、リーダーシップチームによるコーチング型のスタイルが期待される。
「レベル5:予測・臨機応変経営」では、環境変化に対応するために、対策の方向性自体を機動的に見直すことを目指す。非財務・非構造化データなども活用し予兆を捉えることで、How(手段、方法)にとどまらず、What(何をするか)についても見直していく。
しかし、ここでも、実際にはAIなども用いたシナリオ分析にとどまるケースも多い。年間予算サイクルで企業全体が運営される中、期中などでの予算組み替えには社内的なハードルが存在するため、もう一歩踏み込んで、計画自体を適宜に見直すまでには至らないケースも多い。これついては、リーダーシップチームによる大胆な意思決定でしか、実現が難しい。
上記に見られるように、データドリブン経営の実現は、仕組み・技術の問題というより、使う側の変革意識や能力、更には社内での合意形成に依存している。この点で、データドリブン経営を推進するリーダーシップチームがデータ活用に関する意識を統一し、創意工夫を促す仕組みを整備することが重要となる。データ活用による経営管理の高度化に向けては、リーダーシップチームでの方針に関する一枚岩化に取り組むことが望まれる。