再エネ導入が先行する欧州市場の動向から分析すると、非インセンティブ型再エネ電源開発アプローチは2種類ある。
一つ目は、再エネ電力ニーズのある企業との長期的PPAの締結である。既に国内市場においては複数のエネルギー事業者が①オンサイトPPA、②オフサイトPPAおよび③コーポレートPPAスキームを活用し、再エネ電源の開発を行っている。ただしこのスキームの場合、再エネ開発事業者の資金調達は需要家企業における信用リスクに依存する。そのため、これらのスキームでの再エネ電源開発は、与信リスクの低い大企業に限定されると想定される。
二つ目は、地域で再エネ電源を共同保有し地域内で自家消費を最大化する「エネルギーコミュニティ」構築である。これは欧州で現在CSC(共同自家消費/Collective Self -Consumption)として普及し始めているスキームである。共同保有した再エネ電源をコミュニティ内の複数の需要家に供給し、コミュニティ内での再エネの自家消費率を最大化するスキームである。フランス、ベルギー、スペインなどでは様々なスキームで提供され始めている。本スキームの特徴はコミュニティ内で再エネを共同利用することで長期的な電力需要を確保するだけでなく、エリア内の需要家から創出されるDSF(デマンドサイド・フレキシビリティ)を活用することである。DSFを再エネの自家消費率の最大化に活用もしくはTSO(送電事業者)に対する調整力やDSO(配電事業者)における設備投資抑制対策として供給することで外部からインセンティブによる収益を獲得し、再エネにおける投資採算性を最大化することが可能となる。
現在欧州のエネルギー市場では、大量の再エネ電源の系統への接続による逆潮流の増加とともに、EV充電やヒートポンプ等の電力需要の増加に伴いDSO(配電事業者)における配電系統の混雑回避が大きな課題となっている。そのため「再エネ電源とDSFを統合したエネルギーコミュニティ」の構築はDSOの立場から系統混雑回避のための設備投資を抑制できるためメリットがあるスキームとなっている。
この「再エネ+DSF統合によるエネルギーコミュニティ構築」は国内においてはまだ実現されていないスキームであるが、今後の国内における新たな再エネ導入のスキームの一つになる可能性があると想定される。