セッションの後半では、宮川氏と久保田によるディスカッションが行われた。まず久保田は、「AIネイティブ化で職種の境界線があいまいになる中、組織あるいは職種をどのように定義していくべきか」と問いかけた。
これに対して宮川氏は、現在日本企業の多くが人事制度をジョブ型へと転換しようとしているが、今後はジョブ(職種)よりさらに細分化されたスキルによって分類するスキル型へと進化していくと見ていることを明かした。
「これは従来の日本企業におけるメンバーシップ型の職能の概念に、再び近づいていくものではないかと感じます。そうなった際に必要なのは、多様なスキルを持った人材が『染み出せる』仕組みをいかに迅速につくれるかであり、そうした人材が、しっかりと輝いて評価される土壌をつくることだと考えています」(宮川氏)
AIが進化すればするほど、専門知識の価値はAI側に移っていく。そうなった時に、個々人に求められるスキルは、いかにAIを使って業務を遂行していくのかということになる。この際に欠かせないスキルとして久保田は、宮川氏の発言を引用して「戦略構想力や変革の実現力」が必要と強調した。
さらに、こうした意識の変革を推進・浸透させるためにメルカリが不可欠と考えたのは、「マインドセットシフト」であると宮川氏は説明する。AIの導入が進み、他の部署や領域から「染み出して」くるようになると、必然的に「自分の仕事が取られるのではないか」という拒否反応が起きる。
「この時、『AIに仕事を奪われるのではなく、本当に大事な仕事ができるようになる』と、発想を転換してもらうように働きかけるのです。今は120%で稼働している忙しさをAIで軽減すれば、自分がより時間をかけて取り組みたいタスクに集中できることに気づいてもらう。そういうマインドセットシフトが重要だと思っています」(宮川氏)
この点について久保田は、AI時代とIT時代の違いを指摘する。
「専門知識が必要だった従来のITとは異なり、AIは年齢を問わず活用しやすい。そのためスキルを持たない若手社員でも、この業務を効率化するにはどうしたら良いかという柔軟な思考力(マインドアジリティ)さえあれば、AIを使って価値を生み出せます」(久保田)
加えて、宮川氏は、AIを使った価値創造について「グロースマインドセット、すなわち『自分は新たな形で進化していける』と信じられるかどうかが鍵」と示唆。そのためにメルカリが重視しているのが、小さな成功体験の創出であり、具体的な施策を紹介した。
「現在、ハッカソンを社内で開催しています。エンジニアがサポートしながら、2時間ぐらいでAIを使って実際に何かをつくってみる試みです。体験した社員は成功体験を得て、『これなら自分もできる』と思うようになります」(宮川氏)
座学による講座もあるが、メルカリのAIネイティブ人材育成では、実際に試す機会をつくることを重要視している。その上で、AIを使って業務を効率化している社員をクローズアップし、その成果を社内に共有していく。役員が率先垂範して見せる。これも同じ哲学の延長線上にある。