ターゲットユーザーのニーズや価値観を把握することは、多くのプロジェクトの戦略策定の段階で求められる。
これはブランド戦略策定やマーケティング施策立案においても同様である。昨今は市場の変化が早いため、極力スピーディかつ反復的にターゲットユーザーのニーズ・価値観の調査を行い、戦略や施策に反映することが望ましいと考えられている。通常は一般の人の中からターゲットに該当する人をリクルートし、インタビューなどの調査を実施するが、この方法だとリクルートや調査結果を得るまでに一定の時間とコストを伴うという課題がある。収集したデータの分析を生成AIに委ねたとしても、最低でも2ヵ月程度は要するのが一般的だ。加えて個人情報の管理や倫理審査など、考慮しなければならない事項も増える。このようなリアルな人物への調査を定期的に行い戦略や施策を修正するのは相応の時間とコストがかかるため、初回は実施できても、定期的に継続するハードルは高い。
そこでアビームコンサルティングでは、リアルな人物のかわりに、ターゲットの属性を持たせた生成AIを用意し、その生成AIへ質問し回答を得るという新しい方法をとることとした。具体的には、年齢、性別、年収などを定義したターゲットユーザーのセグメント情報をあらかじめ生成AIに設定し、生成AIがすべての質問にその属性を持つ人間として回答するように設計したのである。生成AIは指定した属性を持つ人物の代表的・平均的な意見を回答するため、その属性のマジョリティへのインタビューと同等の結果を得ることができる。
こうして調査に伴う時間とコストを削減し、かつインタラクティブに一定のニーズ・価値観を確認できるようになった(図1)。これを活用することで調査者が知りたいことにピンポイントで回答が返ってくるため、小さな質問を繰り返しながらユーザーに対する理解を深め、戦略や施策の仮説を立案段階で細やかに検証できるようになった。