製造業では、製品事故に伴うリコールや工場における火災・労働災害など事故・トラブルが絶えず、未然防止が喫緊の課題である。主な発生原因の一つは、作業前や設備・機械設計時の調査・検討不足によるヒューマンエラーであると推察する。社内外には業務に関するナレッジ(本インサイトでは、電子化されたテキストデータを対象とする)が積み上がっているが、量が膨大であること、解を導くために必要なナレッジが点在していることなどが原因で、ナレッジを十分に活用できていない。
この解決手段として、社内外のナレッジをインプットした大規模言語モデル(LLM : Large Language Model)の活用が挙げられる。有効性はあると思われる一方、特定のデータをインプットしたLLMシステムを利用している企業はまだ少なく、その理由として自社ユースケースおよび得られる具体的な効果が不明確であるためだと考察する。
そこで、アビームコンサルティングは、企業へユースケースの検討環境を提供すること、および事故・トラブルの未然防止への有効性を検証することを目的に、失敗学の第一人者である東京大学名誉教授の畑村洋太郎先生と共同で失敗学のデータをインプットしたLLMシステム「失敗学コンサルタント」を開発した(期間限定で無償提供予定、詳細は後述)。「失敗学コンサルタント」に作業の注意事項などを質問すると失敗に関する気づきを得ることができ、さらに自社ナレッジを追加でインプットすることでベテラン社員以上のアドバイスを提示するLLMシステムを構築できるため、事故・トラブルの未然防止に大きく寄与するとともに新たな価値を創出するサポートも可能になると考えている。
本インサイトでは、製造業の事故・トラブルの現状を踏まえた上で、未然防止策としてLLMシステムの活用についてまとめる。