東海旅客鉄道株式会社

従業員エンゲージメントのKPI設計・分析基盤の構築支援 ~東海道新幹線・在来線の安全安定輸送を支える使命感と関連事業の展開や中央新幹線の開業を見据えた未来を創造する挑戦の価値観の浸透を目指して~
事例
  • 交通・運輸・物流
  • 人的資本経営
  • 人材/組織マネジメント

東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)は、コロナ禍を経て大きな変革期を迎え、安全輸送の確保を大前提に、新たな発想による「収益の拡大」や最新技術を活用した「業務改革」を柱とする「経営体力の再強化」という新たな戦略を打ち出した。変革にあたっては、社員の意欲と能力を最大限に発揮できる環境を整え、社員と会社がともに成長にしていくことを重要視している。
そこで、2024年からアビームコンサルティングの協力のもと、戦略の推進力となる社員の意識を測定可能な指標として定義し、全従業員1.8万人を対象にした従業員サーベイを実施。組織のエンゲージメントの可視化や、データドリブンな人材マネジメントを推進している。

経営/事業上の課題

  • 変革の推進にあたっては、これまで以上に挑戦する風土の醸成していくため、現時点の従業員の価値観や現場での実践度を会社や現場責任者である箇所長が認識する必要があった
  • 人事部、各部門エンゲージメント担当者、箇所長がエンゲージメントを高めるための課題分析とアクション検討、実行を推進するための知識習得が必要だった

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • JR東海の経営理念や戦略に資するエンゲージメントの定義と測定可能な指標の定義
  • 人事部、各部門エンゲージメント担当者、箇所長が組織の強みと改善点を把握し適切なアクションを実行するための設問とダッシュボードの設計・基盤構築
  • 人事部、各部門エンゲージメント担当者、箇所長が自律的にエンゲージメント向上サイクルを実行するための箇所長向け説明動画の作成と各部門エンゲージメント担当者向けワークショップ

支援の成果

  • エンゲージメント調査基盤を構築し、社員の経営理念・同社の使命(安全・サービス)・挑戦する文化に対する意識を定量的に把握できるようになった
  • 人事部、各部門エンゲージメント担当者、箇所長が社員のエンゲージメントを高める上で、アクションに取り組むべき要素を特定できるようになった
  • 人事部、各部門エンゲージメント担当者、箇所長がデータドリブンに課題を把握し、社員との対話を通してアクションを設定し、実行できるようになった

クライアント課題の難所

JR東海の事業特性や戦略達成に資する調査の設計、課題特定とアクション実行を自律的に実施するための基盤整備

■一般的なエンゲージメント調査が自社に馴染まなかった
JR東海では、2023年に一般的なエンゲージメント調査を採用し実施していた。しかし、一般的な調査は他社との差を課題とする考え方や、従業員の満足度の低さを改善するという考え方をベースに設計されている。そのため、鉄道事業という事業特性やJR東海の戦略達成に資するかという観点では必要性に対する整合性が不足しており、実施の意義や本質を理解しづらいと語る社員も少なくなかった。

■エンゲージメントを高めるキーパーソンである箇所長サポートの必要性
新たなエンゲージメント調査においてはインターネット環境下におけるSaaSを活用することで省コストかつ効率的に実施することを前提としていたため、箇所長が簡単に情報にアクセスして要点を読み取ることができるダッシュボードの設計や、マニュアルの作成を行うことが重要であった。

プロジェクトの重要成功要因

社員にとって「納得感」のある調査へ

■経営理念「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」、事業戦略「経営体力の再強化」の推進力となる従業員のエンゲージメント指標を独自定義
調査はエンゲージメントを示す「指標」を測定するパートとエンゲージメントに相関がある「要素」を測定するパートで構成されている。
指標は会社として醸成したい企業文化の体現度を示すものを指標化し、総合指標と2つの個別指標を設けた。総合指標はすべての社員が持つべき経営理念への共感とそれに基づく仕事への意欲を測る指標となっている。個別指標は各社員の担当業務によって経営理念を体現する場面が異なることを想定して、少なくともいずれか一方において高い数値となることを目標とするために2つ設定した。個別指標①は同社の使命(安全・サービス)に対する共感と実践度を、個別指標②は安全安定輸送を維持しながらも挑戦していく文化への共感と実践度を測る指標となっている。
要素は指標に影響する、職場環境、上司、人事制度などの会社の仕組みなどに対する社員の実感を測る。要素策定においては、アビームコンサルティングが有するクアルトリクス社の知見を活かし、クアルトリクス社の従業員体験フレームワーク「EX25」を採用した。
これによって、調査結果を数値で受け取る箇所長は、各指標の数値及び、指標と相関がある要素を把握することができる。箇所長は職場の業務内容に合わせて総合指標及び、個別指標①と②のいずれか、または両方の維持・向上を目標として指標と相関がある要素に着目し、各職場でのさまざまな活動を深度化することができる。

EX25 フレームワーク(出典:クアルトリクス)

■箇所長が簡単に分析結果を入手でき、対策が必要な課題がわかるダッシュボード構築
クアルトリクス社のプラットフォームにアビームコンサルティングの独自テンプレートを適用し、JR東海の箇所長向けのダッシュボードを構築。調査3週間後に箇所長にダッシュボードのアクセス権限が付与され、自身の職場のエンゲージメント調査結果を確認できるよう設計した。
さらに、社員の業務領域を現業、非現業に分け、それぞれにおける相関分析結果をダッシュボードで表示し、エンゲージメントを向上するために改善するべき要素を簡単に特定することができるよう工夫した。

箇所長が簡単に分析結果を入手でき、対策が必要な課題がわかるダッシュボード構築

■箇所長を継続的に支援する体制構築
社員のエンゲージメントを高めるキーパーソンである箇所長を支援すべく、ダッシュボードのマニュアルや操作方法や、結果分析からアクション実行までの一連の流れを説明した動画を作成した。また各部門からエンゲージメント担当者を選任した。エンゲージメント担当者は箇所長の伴走パートナーとなり、箇所長と共に管掌する部門のエンゲージメント向上のための活動を行う。選任されたエンゲージメント担当者は、アビームコンサルティングが実施したワークショップにより分析手法から箇所長へ支援を行う際のアプローチの仕方まで実践に役立つスキルを事前に学習し、箇所長に対して自発的な振り返りや行動改善を促進している。

箇所長を継続的に支援する体制構築
箇所長を継続的に支援する体制構築

アビームの貢献

JR東海ならではの悩みに寄り添い課題を共に乗り越えるパートナーとして貢献

アビームコンサルティングは、JR東海の企業理念や信念、事業特性、現在の事業戦略と経営が目指す未来の企業風土を丁寧に情報収集し、背景を踏まえて、新たなエンゲージメント指標の定義やダッシュボードの構築、役員向け報告や現場への浸透など定着に向けた支援を円滑に行った。サーベイに慣れない社員であっても回答しやすいような設問設計や、ITツールに精通していない箇所長であってもアクションができるようダッシュボードの構築、マニュアルや説明動画作成などをカスタマイズして提供した。
今後、アビームコンサルティングは、JR東海の人事部を後方から支える立場として、エンゲージメント向上活動における社内広報・啓蒙に関するアドバイザリー、組織改編や人事異動などに伴うシステム反映の技術的支援、毎年の調査実施におけるトラブル対応などを継続的に支援していく。

■アビームコンサルティングのエンゲージメント向上ワンストップサービスの豊富な実績
アビームコンサルティングでは、エンゲージメント調査の設計から分析、課題に応じたアクション策定、企業によって多種多様なアクションの企画、実行、効果検証まで、エンゲージメント向上に向けて一貫した伴走支援を実施している。

アビームコンサルティングのエンゲージメント向上ワンストップサービス アビームコンサルティングのエンゲージメント向上ワンストップサービス

アビームコンサルティングの皆さまのご支援により、弊社の事業内容を踏まえた独自のエンゲージメント調査設計を行いました。経営理念と社員の内面的要素の核となる「仕事観・価値観」が結びつき、会社と社員が共に成長していくことを念頭にエンゲージメントを定義し、社員の意識を可視化することができました。今後はエンゲージメント調査の結果を活用しながら、人材育成や働きがいのある職場づくりなどの取組みを進め、企業価値の向上につなげてまいります。

東海旅客鉄道株式会社
執行役員 人事部長
花原 雄一氏

東海旅客鉄道株式会社 執行役員 人事部長 花原 雄一氏

弊社のエンゲージメント調査は、事業の特性を踏まえた戦略に資する設計が必要であり、難易度の高いプロジェクトでした。さまざまな課題について専門的な知見から丁寧にアドバイスいただきました。指標や設問についても、ひとつひとつ納得がいくまで一緒にご検討いただきとても心強かったです。

東海旅客鉄道株式会社
人事部人事課
下田 友理乃氏

東海旅客鉄道株式会社 人事部人事課 下田 友理乃氏

Customer Profile

会社名
東海旅客鉄道株式会社
所在地
愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 JRセントラルタワーズ
設立
1987年4月1日
事業内容
鉄道事業、関連事業
資本金
1,120億円
東海旅客鉄道株式会社

2025年5月15日

専門コンサルタント

  • 佐藤 一樹

    Director

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