経済のグローバル化、多極化に伴い、多くの企業は、グローバル規模で自社のサプライチェーン、取引先も含めたバリューチェーンを拡大してきた。しかし、2020年初頭より世界的に広まり、本校執筆中の8月現在もなお深刻な影響を及ぼしているCOVID-19は、企業のサプライチェーンにも甚大な影響を与えると同時に、新たな変革の必要性も突きつけている。
発生初期は、特に中国を中心としたサプライヤの操業や出荷の停止・縮小による影響で、多くの日本企業が部品調達の観点から多大な影響を受けた。次いで、欧米・日本への感染拡大に伴い、自社の生産・物流機能が影響を受け、いかに能力を確保するのか、いかに代替するのかに苦しめられた。また、先進国を中心に一旦のピークを迎えた後は、再拡大のリスクを引き続き抱える中で、リスクを抑えつつ、どのようにオペレーションを回していくのかということに今もなお、多くの企業が直面している。
Withコロナと言われる、リスクとの共存は少なくとも2~3年は続くという声もある。僅か半年ほどの間に、世界が大きく変わったのである。
弊社はこの間、多くの企業のサプライチェーンの企画部門や現場から相談を受け、膝を突き合わせながら、どのように対応すべきかの議論を重ねてきた。サプライチェーンの繋がりであり、各業務の継続性をどのように担保するのか、言い換えれば、サプライチェーン自体のレジリエンス(復旧・復元力)を高めつつ、各業務のオペレーションに対してもデジタル技術を活用し如何にリスクを抑えていくか、という2点についてである。
本連載では、それらの示唆をもとに、ニューノーマル時代のサプライチェーンマネジメント(SCM)とは何かとしてまとめる。連載の前半はリスクの再拡大や非常時に備えどのようにレジリエンスを高めるのか、そのために、可視化・多重化・機動化するSCMについてそれぞれのステップを解説する。連載の後半は先端デジタル技術を活用することでオペレーションのリスクを抑えつつ、同時に業務自体も高度化するSCMの可能性について解説する。今もなお、現場で奮闘を続けている企業の方々への参考となれば幸いである。