本シリーズの第1回では、モビリティの現在地として、様々なサービスが誕生してきている結果、生活者からすると混沌とした状態となっていることを解説した。第2回では、混沌とした世界の中に光明を見出すために必要な視点を解説する。
アビームコンサルティングでは、混沌とした世界の中に光明を見出すために、その第一歩として全てのステークホルダーが「まち」の多様性を真正面から受け入れることを提唱している。なぜならば、「まち」は、その地政学的要因・歴史的要因・人口動態的要因・文化的要因・環境的要因・政治的要因によって多様性を持ち、抱えている社会課題および目指したい「まち」の姿、さらにはそこに至るまでのプロセスも千差万別だからである。それらの多様性を受け入れずに、最適なモビリティサービスのパッケージを提案することは非現実的だろう。
アビームコンサルティングでは、モビリティサービスの設計に向け、「まち」の多様性が重要であることを理解するため、アジア中心に11※1の都市における下の各モビリティサービス拠点の密度を調査した(図1)。この調査結果が示していることは、「まち」ごとの公共交通機関の発展度や規制内容、既存事業者の動きなどの要因が相関しあった結果が、現在のモビリティサービスの姿となっていることである。
カーシェア
パリや東京など、公共交通が整備された都市で普及する傾向がある。パリや東京はそれぞれの国の中でも世帯あたりの自動車保有台数が低い都市であり、カーシェアは成熟した都市で自家用車ニーズをカバーしているものと考えられる。
シェアサイクル・マイクロモビリティ
地理的特徴のみならず政府の動向が与える影響が大きい。シェアサイクルは中国の都市で普及しているが、放置自転車が問題となり、地方政府によるシェアサイクルの台数制限が進められている。シンガポールでは、同様の問題に対してシェアサイクル事業者をライセンス制とし、手数料を課した結果、事業者・台数がコントロールされている。
電動スクーターをシェアするマイクロモビリティは、事故の増加により安全性の担保が課題となっており、パリやヘルシンキでは上限速度の規定など政府による規制が進められている。また、シンガポールのように禁止とする都市も出てきている。
ライドヘイリング(Uberなどのオンライン配車サービス)
公共交通の駅が少ないアジアの都市で普及しているように見受けられる。一方、政府に加えタクシー事業者との対立が見られ、パリではタクシー事業者によるデモもあり、想定ほど普及しなかった。