アビームコンサルティングでは、こうした事業戦略に基づきイノベーションに挑戦するクライアントから、イノベーションへと通ずるDXの実現方法について相談を受け、プロジェクトを実施してきた。
優先的に取り組むアジェンダは各社各様だが、アビームコンサルティングでは、長期的かつ継続的なイノベーションの実現に向けてプロジェクトを確実に推進し、実績を重ねていくアプローチを採用している。これらの挑戦にあたり、特に重要なのは下の3点だと考える。
(1)真のマーケット視点の醸成
過去の成功体験の延長線、自社ないし自部門のみの視点だけで変化に挑戦することは、諸刃の剣である。その経験や視点が、オリジナリティや競争力の源泉となる一方で、バイアスとなり変化の本質を見逃してしまう場合があるからである。変化を複眼でとらえるために、自社ないし自部門だけではなく外部の知見を取り入れることが重要であり、これが旧態依然としたアプローチを変える起爆剤となり、真のマーケット視点醸成による企業間や部門間を跨いだ業務変革のきっかけとなる。
(2)変化の早さよりも速く取り組む
日々挑戦に取り組むこと以上に、その挑戦のスピードが大切である。産業基盤変化の根本にあるのはデジタル技術の急速な進化であり、成果が出るころには、さらに新しい変化が起きて手遅れになるという事態が当たり前に起きるのが昨今の状況だ。そのためにも最新のデジタル技術の知見を持ち、それを課題解決(=ソリューション)としてハンドリングできる人材を活用し、スピーディに取り組むことが重要である。
(3)自律志向、ケイパビリティ向上による継続性
イノベーションの挑戦は、市場に変化がある限り継続的に取り組む必要がある。一時的に外部の力を借りて挑戦を推し進めることは前述の「視点」、「速さ」の面では有効だが、最終的には自社内部に原動力を持つことが継続性を高めることにつながる。推進メンバー自らが考え動く自律性を持ち、ケイパビリティを向上させていくことが重要である。
上記3点のポイントは、容易に実現できるものではないが、取り組みを始めないことにはイノベーションは推進できない。以降は「DX事例」として、実際にアビームコンサルティングがDX推進に携わっている企業の取り組みを紹介する。DXの推進がイノベーションの実現に繋がると考えており、時には千里先に見えるその実現も、必ず足元の一歩から始まる。
イノベーションへの道のりを確実に歩む事例企業の紹介を通じて、製造業のイノベーションに向けた取り組み加速の一助となれば幸いである。