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『先進技術×新事業』難問を突破できるチームの条件

新規事業開発
事業開発責任者向け
チーム組成
先端技術の活用
People

2021年8月17日

『先進技術×新事業』難問を突破できるチームの条件
はじめに:新技術を活かした事業開発に向けたチームの取り組み
 アビームコンサルティングでは、エンターテインメント業界をリードするavexグループのエイベックス・マネジメント様と共同で、デジタル技術を活用したダンス教育事業を行っています。この共同事業プロジェクトでは、スマホアプリで撮影したユーザーのダンス動画をAIでスコア化するという高度な動画解析・評価技術をコアにして、いつでもどこでも受けられるダンス検定のアプリ受験化を実施し、全く新しい教育・エンタメ体験の提供を実現しました(図1参照)。
 今回のコラムでは、我々が本プロジェクトに取り組む中で見えてきた、新技術による新サービスという未開分野でチャレンジを行うチームに必要な条件についてご紹介します。

<図1.アプリ受験のイメージ写真>


図1.アプリ受験のイメージ写真


新規事業を成功に導くチームの条件:専門性の融合
 さて、突然ですが、ここに「延べ1000時間」という数字があります。
 これは我々がプロジェクトで最も重きを置いたある活動の延べ時間です。実は、サービスチームと技術チームが、動画解析技術を用いた新サービス検討の打ち合わせに費やした関与時間なのです(図2参照)。

<図2.本事業における新規事業検討のチーム編成とダンススキルのスコア化プロセス>


図2.本事業における新規事業検討のチーム編成とダンススキルのスコア化プロセス


 この数字をご紹介した意図は、この時間数が我々の重視する点をリアルに物語ると考えたためです。
 我々の考える、新規事業にチャレンジできるチームの条件は「専門性の融合」です。この言葉が月並みに響いてしまう懸念以上に、我々はこの「融合」という言葉にかなりの想いと熱量を持っています。
 サービスチームと技術チームがコミュニケーションに費やした1000時間はその一端で、実際に「サービスの専門家」と「技術の専門家」がどれだけの真剣さをもって協働していく必要があるかの根拠になるかと思います。
なぜ融合が必須なのか:新事業は連立方程式、一人では解けないパズル
 なぜ、「サービスの専門家」と「技術の専門家」が緊密に情報を共有して、ともに検討する必要性があるのか。
 その理由は、新事業の推進チームに求められる判断の性質にあります。
 昨今の新事業では、DXを主軸にしたものが多いため、新規技術の活用などで当然のことながら専門家の関与が求められます。さらに、技術の生む価値は、サービス提供価値のコアと不可分に結びついています。例えば我々のプロジェクトでは、AI技術で動画からダンサーの動きを正確に判別できることが、サービス成立に直結していました。新技術を用いた新サービスでは、技術的課題とサービスに関する課題を切り離して考えることは困難なのです。
 このように、技術面でのチャレンジの成果は即サービスの武器として競争価値になる反面、技術的ハードルは、サービスの根本を揺るがす課題としてプロジェクトに立ちはだかります。
・チャレンジしたいサービスには、どういった技術的アプローチが可能か?突破の見込みはあるか?
・直面した技術的限界の中で、ユーザー体験を最大化するにはサービス形態はどうあるべきか?
新サービスの開発で生じるのは、こういった複合領域の問題です。適切かつスピーディーに対処していくためには、「サービス」「技術」の両面を複合して、すべての課題を「連立方程式」として解いていく必要があります。したがって、問題の解決には、専門家同士が「同時」かつ「両面から」考察して、互いの打ち手を出し合って取り組む融合チームが必要なのです。
 分業連携のようなチーミング、たとえばサービスチームが「マーケットイン」で発案を行い、技術チームが実装検証する、あるいは逆に技術チームからの「プロダクトアウト」な発案を、サービスチームで受け取って取捨検討し直すなどのアプローチは、チーム間で課題が往復する手間がかかり、スピード感も効率も落ちてしまいます。おそらく市場で勝ち残ることは困難でしょう。
融合の難しさ
 もちろん連携を図るために、やみくもに打ち合わせ時間を増やせばよいということではありません。取り組む課題の種類によって、サービスサイドと技術サイドの協調の仕方は全く変わってきます。大切なのは、専門性を組み合わせて問題を突破できる一体感を持ったチーム状態を作ることです。
 同じ会社の同じ部署内のチームであっても、一体感をもって推進力を生むことは簡単にはいかないのではないかと思います(読者の皆様にもご経験があるのではないでしょうか)。バックグラウンドが異なる専門家同士ともなると、これを成し遂げる難度はさらに高まります。

 難点1:共通言語
 難しさの要因の一つは、背景知識が異なることによるコミュニケーションの難しさです。この点については、以前のコラムで詳細について触れているので、ぜひご参照ください。

 難点2:問題解決における視点や発想の違い
 もう一点、プロジェクトの中で感じたのは、視点や発想の違いをうまく補完しあうことの難しさです。前項で述べたように、新事業ではサービスと技術の領域を横断する問題に取り組む必要があります。一方で各チームのメンバーの経験としては、サービスや技術のそれぞれの専門領域の中で完結する問題への対処に馴れていることが多く、領域横断的な課題の経験までも持っていることは稀です。結果的に、専門領域内での問題解決に適した発想に寄ってしまったり、他方の領域の考慮漏れをしたりすることがあります。
 例として、動画分析精度を高めるためのAI精度の課題がある場合を考えます。
 技術チームが、精度問題の突破にフォーカスした結果、サービス面の影響や考慮が不十分な方式を提案してしまいがちです(例えばユーザーの入力負担増など)。得意領域外での影響は想像がつきにくく、とらえることが難しいものです。
 逆にサービスチームがこの漏れをフォローできれば良いのですが、そのためにはサービスチームが、技術チームの検討している打ち手候補から、サービス影響を想像できる必要があります。しかし、ここにも、得意領域外の視点をもって問題をとらえなければいけない難しさがあります。
 具体的な問題を解決する場面で、お互いの視点や発想の差をうまく補い合い、プロジェクトが必要とする融合を実現するのは簡単ではないのです。
 ここで誤解していただきたくないのは、視点や発想の差異自体は問題ではないという点です。チーム内に各領域の専門家の様々な視点が存在すること自体は、以前のコラムでも触れているとおり、様々な角度からスピーディーに多様な課題を解決するチームのポテンシャルとして非常に重要です。しかし、そのポテンシャルを発揮してプロジェクトを推進しようとする際、その多様性のゆえに、共通言語の課題や、視点の差を補い合って問題解決を行う難度もまた高まるというジレンマが存在するのです。
 では、どういった要素があればこの諸刃の剣にもなりうる多様性を、新事業推進に立ちはだかる困難を退ける「宝刀」とできるのでしょうか。
融合のポイント:複数領域の理解者
 当然重要となるのは、メンバー間の相互理解です。しかし各領域の専門家だけが集まってそこから相互理解を行うことは、言葉も習慣も異なる国の人々が会話しようとするようなもので、なかなか困難です。
 ポイントは、各分野の専門家の間に複数領域について横断した知見があるメンバーや、複数領域をまたぐプロジェクトの実行経験があるメンバーが混ざることです。相互の知識や思考様式のバリエーションに対する理解を持ったメンバーが介在することで、チーム内の断絶を避けることができます。
アビームコンサルティングでは、こういった先端領域での事業推進経験があるコンサルタントや、システム領域と分析領域あるいはビジネス領域と分析領域など、複数領域の専門性を持ったコンサルタントを擁しています。今回のプロジェクトでも、各領域の専門メンバーだけでなく、サービス検討と動作解析等の高度な技術の両面に知見があるメンバーもアサインしました(図3参照)。

<図3.領域融合へ導く当社のメンバー編成>


図3.領域融合へ導く当社のメンバー編成


 実際に、サービス検討における視点と、動画解析技術の課題が密接に絡むシーンが多々ありましたが、専門メンバーの知見や個別課題突破力を適切にサービス価値と結びつけることができ、サービス実現に大きく貢献しました。

今後も、アビームコンサルティングは幅広い知見と経験を活かし、最新技術だけでもビジネス戦略だけでもなく、現場の融合を実現して事業開発成功に向けたチャレンジをお手伝いします。情熱をもって新事業立ち上げを検討される皆様にぜひ貢献したいと考えています。

コンシューマービジネスユニット
ダイレクター              

山根 太一

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