『スタートアップとの真の「共創」を実現するために ~
出会いからPoCに至るまで~』(後編)

 

(前編)では、事業会社の新規事業検討プロセス(下例)のうち、「①アイディアの”種”発掘」と「②ビジネス案作成」に焦点を当て、事業会社が実際に直面している課題を明らかにした。魅力的な出会いがあっても、PoCはおろか、ビジネス案の具現化もなかなか進まないのはなぜだろうか。課題を乗り越え、先に進んでいくにはどうしたら良いのだろうか。本稿では、(前編)にてまとめた「①アイディアの”種”発掘」および「②ビジネス案作成」での事業会社の課題について、その真因と解決策を明らかにしていく。

事業会社の新規事業検討プロセス(例)

1. 「①アイディアの”種”発掘」:スタートアップと”種”の方向性がすり合わない

弊社がこれまで見聞きした事例、また、日頃のメンタリング経験より、事業会社がスタートアップから協業の提案を受けた際、その提案の良し悪しだけを軸に評価し、協議を継続するかどうか判断しているケースが多く見られる。しかし、多くのスタートアップにとって、大規模で複雑な事業会社のビジネスを深く理解することは難しい。そのため、特に初回の提案では、事業会社の課題やニーズに十分に訴求できない可能性がある。事業会社も受け身ではなく、積極的に自社について情報提供を行い、スタートアップと共に何ができるかを考えなければ、アイディアの”種”を見つけ、ブラッシュアップしていくことは困難である。仮に受けた提案そのものの実現は難しくても、その技術・サービス自体に見込みがあれば、社内の各領域で自社の強みを探り、スタートアップの強みと合わせて新しい価値を生み出せる可能性があれば、スタートアップに自ら情報を提供することで、議論を前に進め、共創の実現に着実に近づくことができると考えられる。

一方で、事業会社側に「自ら考える」意思があっても、考え方が分からず、アイディアを出せないということもある。考え方のヒントの一つとして、最近トレンドとなっている「未来のニーズや世界観を想像する」思考が挙げられる。世の中の変化のスピードは日々増しており、今見えているニーズにフォーカスしても、いざサービスをローンチする際に、競合サービスの登場や環境変化等により、ニーズが大幅に変化しているということも十分にあり得る。日々アンテナを高く張り、様々な情報を集め、「世の中が将来(10年程度*1 こう変わるだろう」という予測の元にビジネスをデザインし提案することで、より自由な発想で独自性のあるサービスを生み出せる可能性が高まると考える。スタートアップとの議論を進め、将来性のあるアイディアの”種”を見つけるためには、スタートアップの提案内容や既存のビジネスの枠にとらわれず、幅広い視点で思考し提案する力が求められ、実際、様々な事業会社がこの考え方にチャレンジしている。

(*1 事業内容等により適切な時期は異なるものの、10年が一つの目安となる)

事業会社が直面する課題の真因と解決策①

2. 「②ビジネス案作成」:アイディアの具現化が進まない

ビジネス案を作成する過程では事業性や収益性も加味する必要があるが、事業会社とスタートアップの1:1だけの関係では、事業領域、活用可能なリソース、負担可能なコスト等が限られ、事業の拡大も限界がある。その場合、自社のクライアントやパートナー企業をはじめとした、他の事業会社とコラボレーションし、前編に述べたような「n:n」の枠組みの中でアイディアを練ることも選択肢になり得る。複数企業の強みが共存することで、より広がりと深みのあるサービスを生み出せる可能性がある。他の事業会社とスタートアップが共同で事業を行い、自社はその一部機能を担う、といったやり方もあり得ると考えられる。

また、既存事業との兼ね合いで、新規事業の検討に割けるリソースが限られている事業会社も多い。先に述べた通り、昨今はコンサルティングファーム等の「共創」支援が拡大している。自社内のリソースが限られている時や、複数社が関与するために進捗が遅れそうな時には、こうした社外リソースの活用が検討の推進力を上げる一つの方法となる。実際、弊社が、アイディア出しや調査、ビジネス案のとりまとめ、スタートアップとの交渉・紹介等の支援をさせていただくケースも増加している。

さらに、前述の「n:n」の枠組み活用も、ここでも解決策になり得る。複数社と共同のプロジェクトを立ち上げることにより、複数社でリソースを融通し合い、1社当たりのコスト負担は抑えながら、新規事業の検討を進めることができる。

事業会社が直面する課題の真因と解決策②

3. スタートアップとの「共創」実現に向けて

せっかくスタートアップと出会えたにも関わらず、初めの提案がフィットしないというだけで、関係を断ち切ってしまうのは非常にもったいない。事業会社側も「共創」実現に向けた積極的な姿勢を示すことで、対等なパートナーとして、スタートアップと良好で継続性のある関係を築くことができると考える。弊社が見聞きした経験の中でも、初めは小規模な協業から始め、事業会社内で徐々に当該スタートアップに対する信頼を積み重ねていき、最終的に大規模な協業にたどり着いた例や、時代を先行し過ぎて検討を一時中断した協業テーマが、世の中の変化を受け注目を浴びるようになり、協議が再開した例等もある。スタートアップと良好な関係を維持することで、今すぐには「共創」が難しくても、将来の「共創」機会に繋がっていくと考えられるため、粘り強く新規事業にチャレンジして頂きたい。

弊社も、ビジネスアイディアのディスカッションやブラッシュアップ、スタートアップの紹介、アイディアソン*2 の企画・運営、スタートアップのメンタリング依頼等を頂く機会が増加している。今後もより一層、業界を問わず、様々な事業会社の挑戦をサポートしていきたいと考えている。

(*2 「アイディア」と「マラソン」を掛け合わせた造語。 特定のテーマを決め、制限時間内にテーマについてグループ単位でアイディアを出し合うイベント)

 

『スタートアップとの真の「共創」を実現するために ~出会いからPoCに至るまで~』(前編)

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