「①アイディアの”種”発掘」は、世の中の動き等から顧客ニーズを把握し、スタートアップや他の事業会社の新規事業担当者との出会いを活かしながら、「共創」アイディアの”種”(=「お互いがどのような強みを持ち合い、それらをどう活かし、何の価値を生み出すのか」という、「共創」のコアとなる部分)について、スタートアップと共通認識を持つことを指す。また、「②ビジネス案作成」は、市場性・事業性も考慮し、「アイディアの“種"」をビジネスモデル(具体的な事業構造・収益スキーム)に落とし込み、ビジネス・技術などの有効性を、次のプロセス「③検証とブラッシュアップ」で仮説として検証できるレベルの「ビジネス案」に具現化することを指す。
新規事業検討時の失敗例の一つとして、「①アイディアの”種”発掘」から「③検証とブラッシュアップ」(PoC)に一足飛びに進み、PoCが上手く進まないというケースが挙げられる。「②ビジネス案作成」の検討が十分に行われていないために、「何を検証すべきか」の認識が事業会社とスタートアップの間でずれており、PoCのゴール設定が甘くなる、単にスタートアップの技術やソリューションを試すだけで終わってしまう、「④事業化」の検討まで進まずPoCまでで完了してしまう、といったことが起こってしまう。「③検証とブラッシュアップ」以降のプロセスを確実に進めていくためにも、「①アイディアの”種”発掘」と「②ビジネス案作成」を通じて、事業会社とスタートアップが「目指すべき姿」の認識を合わせておくことは非常に重要である。
しかし、「①アイディアの”種”発掘」や「②ビジネス案作成」の重要性を理解し、各プロセスを踏んだとしても、実際には、スタートアップとのディスカッションを上手く軌道に乗せられず、つまずいてしまう事業会社も多い。次章では、これら2つのプロセスで事業会社が直面する課題について、これまで見聞きしてきた事業会社やスタートアップの声を参考にしつつ、まとめていきたい。