ニューノーマル時代の
サプライチェーンマネジメントとは
第3回

 

 

原田 健志

P&T Digital ビジネスユニット
SCMセクター ダイレクター

 

本連載は、ニューノーマル時代のサプライチェーンマネジメント(SCM)とは何かについて、前半はリスクの再拡大や非常時に備えどのようにレジリエンスを高めるのか、そのために、可視化・多重化・機動化するSCMについて解説する。後半は先端デジタル技術を活用することで各業務のオペレーションのリスクを抑えつつ、同時に業務自体も高度化するSCMの可能性について解説する。第3回は、サプライチェーンにおけるリスクの可視化、ネットワークの多重化に続き、リスクが実際起こった際に如何にサプライチェーンでの対応を機動的に行っていくのかについて取り上げる。

非常時に備えるサプライチェーンマネジメントとは –
STEP3.サプライチェーンを機動化せよ

どんなに準備していたとしても予測を超えた事態は起こる、それは今回のCOVID-19だけではなく近年多発する大規模災害も同様である。そのような状況下で、如何にレジリエンス(復旧・復元力)を高め、迅速にかつ機動的にサプライチェーンを復旧させるかが、サプライチェーン部門にとっての重要なミッションとなる。これは、先日、議論したある企業のSCM企画部門長の言葉である。勿論、機動的な復旧を成し遂げるためには、サプライチェーンの能力やリスクの可視化は欠かせないし、いざという時に切り替えるための多重化も欠かせない。以下、部材の調達、生産、物流、そして、需給調整(意思決定)の観点から、非常時にサプライチェーンの能力・ネットワークの確保を機動的に進めていく際の論点を整理する。

図3-1. サプライチェーン非常時対応の機動化のフレーム

図3-1. サプライチェーン非常時対応の機動化のフレーム

調達を機動化せよ

  • 調達においては、まず、多重化の際に整備したサプライヤパネルに則り、サプライヤの被災状況や生産能力、調達物流機能の被災状況や配送能力を迅速に確認することが求められる。主力サプライヤの能力への影響が大きい場合は、速やかに、準主力や代替候補、もしくは、自社生産への切り替えを進めていく。勿論、キーパーツを生産しているサプライヤなど、優先度の高いサプライヤに対しては、速やかに、人的、資金的な支援を行い、復旧に努めるのである。海外の先進企業ではサプライヤパネルで整備した企業に対し、いざという時の優先順位だけではなくどこまで助けるのかの方針を予めルール化している企業もある。

    切り替えや復旧までの間、キーパーツの在庫を自社の拠点間でどのように融通していくのか、また、調達先とのリードタイムの調整も踏まえた自社側の生産のコントロールも必要となる。

生産を機動化せよ

  • 生産においては、ハードとソフト両面からの被災状況や能力の確認が必要となる。ハード面とは、自社やOEMの生産拠点や生産設備などのインフラの被災状況であり生産能力であり、ソフト面とは、従業員、協力会社、原材料・部材の在庫等の生産のためのリソースである。

    確認後、被災拠点に対する復旧方針や優先付けを行う一方で、残存生産能力に対してはどの製品に能力を割り付けるか、つまり、どの顧客・製品を優先付けして生産するかの判断が必要となる。ある電子部品メーカーでは、COVID-19の影響で生産能力が落ちた際に、事業企画が司令塔となり、どの顧客を優先するかビジネスボリュームだけではなく、後回しすることによる顧客からのペナルティのインパクトもトータルで考慮して判断を行っていた。

物流を機動化せよ

  • 物流においても、生産と同様に、物流拠点、設備、車両の被災状況や配送能力の確認だけではなく、従業員、協力会社、製品在庫のリソースの確認も必要となる。3PLを活用している場合などは、当然、3PLに対する被災状況や能力確認も欠かせない。その上で、被災拠点への復旧方針や優先付け、多重化の際に整備した代替物流手段への切り替えを順次進めていくのである。復旧過程においては、リードタイムを通常よりも要するなどサービスレベルが悪化することも見込まれるので、顧客に対しての調整、納期見通しの回答も必要となる。

需給調整を機動化せよ

  • 最後に、需給調整においては、調達・生産・物流能力の残存能力の確認と代替能力の確保が前提となる。また、自社だけではなく顧客の被災状況と生きているオーダーの確認が重要となる。その上で、前述のように、どの顧客に対して、どの製品をいつ供給するのか計画を立てると同時に、顧客とも調整を進めていくのである。

    被災の状況によっては影響が長期化することも想定される。今回のCOVID-19でも、幾つかの企業では非常時の緊急対応を行う一方で、在庫や運転資本の削減も同時に進め、キャッシュを確保する動きを見せている。直近数か月、弊社にも、在庫の削減をどのように進めたらよいのか、という企業からの切実な相談が増えてきている。以下、参考まで、弊社が在庫削減を支援する際のアプローチの概略を掲載するので、ご参考となれば幸いである。

図3-2. 在庫削減のアプローチ

図3-2. 在庫削減のアプローチ

本稿は、『ニューノーマル時代のサプライチェーンマネジメントとは』の第3回として、実際にリスクが発生した場合の機動的な対応について解説した。機動化におけるポイントは、第1回、第2回で解説した可視化、多重化を整備した上で、いざという時にどのように意思決定をするのかのルール・プロセスについて整備し、事前に関係者と合意形成することである。危機はある意味、機会の裏返しでもある。非常時の迅速な対応が企業にとって今を生き残るためだけではなく、一早くビジネスチャンスを掴むことに繋がることは言うまでもない。

次回以降は、少しトーンを変え、Withコロナをきっかけとして加速する、VRによる遠隔化・非対面化、ロボティクス・自動化によるソーシャルディスタンスの確保、オートメーション技術による自律化など、先端デジタル技術を活用することでのサプライチェーンのオペレーションの進化の可能性ついて取り上げる予定である。

ニューノーマル時代のサプライチェーンマネジメントとは 第1回

ニューノーマル時代のサプライチェーンマネジメントとは 第2回

執筆者

関連サービス

page top