銀行、証券、保険、リースといった伝統的な金融機関は、創設以来、政治、経済、社会、テクノロジーに関する様々な外部環境の変化に適時適切に対応することが求められてきた。特に近年はテクノロジーの進展が著しく、金融業界ではFinTechによるビジネス変革は留まることを知らない。
FinTechによる金融業界への影響としては、テクノロジーと金融の融合が進み異業種から金融業への参入障壁が低下したことで、金融機関にとっての競争相手がこれまでの同業他社から新規参入企業に変わってきた点が挙げられる。スタートアップ企業や異業種からの新規参入企業は、コスト構造や顧客接点などのビジネスモデルが既存金融機関と大きく異なり、各社の強みに特化した金融サービスを廉価に提供することが可能となる。その結果、既存金融機関がフルラインナップで提供してきた金融サービスをアンバンドル化(分解・解体)するケースが増えてきた。
一方で、既存金融機関自身がテクノロジーを活用し新たな金融・非金融サービスに進出し、成長の機会として捉える動きも見受けられる。特に足元では「Embedded Finance(組み込み型金融)」と呼ばれる銀行・保険などの金融機能を事業会社のプラットフォームに組み込む取り組みや、事業会社が金融機関を顧客チャネルとしてサービスを展開する取り組みなど、金融機関と非金融機関が手を組む事例も増えている(図1)。こうした昨今のトレンドを踏まえると、既存金融機関はもとより非金融機関にとってもFintechへの取組みが重要な経営アジェンダの一つであると考えられる。