昨今、各種規制の緩和や進展するデジタル技術の活用などを背景に金融機関による異業種進出が活性化している。本インサイトでは、金融サービスの高度化や非金融サービスへの参入など総合的なサービス提供を目指したビジネスモデル変革に特に取り組んでいる「地域金融機関※1」にフォーカスをあて、①取り巻く事業環境②アビームコンサルティングが考える“総合サービス化”と各地域金融機関の取り組み状況③総合サービス化の本質について取り上げ、地域金融機関による総合サービス化検討におけるポイントを解説する。
① 地域金融機関を取り巻く環境
地域金融機関を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しており、持続的なビジネスモデルへの変革が必要な状況にある(図1)。足許の国内人口減少や首都圏への人口集中により、特に地方に営業基盤を有する地域金融機関にとって、個人顧客・法人顧客ともに減少していくことが懸念されている。低金利政策も継続見込みであり、単なる預貸収益頼みの従来型ビジネスモデルの継続は益々困難になるだろう。加えて、テクノロジーの進展により足許では異業種からの金融サービス参入が相次いでおり、異業種からの参入プレイヤーは本業である非金融サービスの顧客基盤や洗練されたUI/UX(ユーザー接点・体験)によるアプリなどを武器に地域金融機関の顧客基盤を侵食し始めている。他方、地域金融機関にとって足許では“競争”関係にある異業種からの参入プレイヤーとの関係が中期的な時間軸で見ると“競争”から“共創”に変わっていくケースも予想される。このような環境下、2021年11月に改正銀行法が施行され、他業禁止規制の緩和により非金融サービス進出のハードルが下がっていることや国・地方自治体による地方創生に関する各種支援策などによる機運の高まりなど、変革に向けた追い風のトレンドも存在する。