選択軸を設計した後に重要となるのが、その軸を社会にどう広げていくかという「戦略PR」の視点である。
戦略PRとは、自社がメディアに働きかけるだけでなく、社会全体に対して新たな視点や課題を提示し、世の中の関心や議論を喚起するような仕掛けを行うことを指す。
例えば、有識者や第三者機関に働きかけ、新たに協会を設立したりすることで、そのカテゴリー特性の有用性や重要性を発信するエンドースを行う。また、行政のマニフェストや政策方針に沿って「この選択をすること自体が社会的に正しい」というストーリーを構築し、メディア取材などを通じて発信していく。さらに、自社や自社商品のみでカテゴリーを創造するのではなく、同業他社や流通事業者と連携し、商材や棚を共同で開発することで、カテゴリー自体が生活者にとって新しい提案となるように仕掛けていく。こうした多面的なアプローチによって、単なる商品訴求ではなく、社会全体を巻き込んだ市場創造が可能となる。
先述の某食品素材メーカーは、この戦略PRの視点から、美容への関心が高まっていた時流を捉え、「腸が汚れているから肌が荒れる」というメッセージをエビデンスとともに発信した。これにより、単に「食物繊維デトックス」という新しい概念を提唱するのではなく、「腸が汚れている」という課題とともに「腸活をしなければならない」という社会争点を提示した。
そして、この社会争点を軸にメディアへの働きかけを行い、「腸活」というテーマで取り上げてもらうことで、「腸活、食物繊維デトックス」の認知とともに、「それを解決できる自社ブランド」という流れを作り出した。さらに、専門家による情報発信の場として「アカデミア」を設立し、技術的なエビデンスを提供することで、信頼性の高い情報として広く認知されるようにしたのである。
このように、まずマーケットをオケージョンで再定義し、ホワイトスペースを見出す。そして、その空白に対して自社の提供価値を活かした選択軸を設計し、社会争点と結びつけて戦略PRを展開する。商品ではなく、選択軸そのものを世の中に広げることで、新たな市場を創造し、その中で自社ブランドがNo.1であるというポジションを確立する。
この二段階のアプローチこそが、カテゴリー創造戦略であり、カテゴリーブランディングという手法である。
カテゴリーブランディングとは、マーケットユニバースを生活者視点で捉えなおし、新たな選択軸を提示してカテゴリーそのものを創造することで、No.1のポジションを確立していく戦略である。その実現には、広告だけでなく、社会争点を起点とした戦略PRの活用が有効であり、さらには他社との共創や行政、金融機関などとの連携によって、カテゴリーの認知獲得にとどまらず、事業としての広がりを生み出すことも可能となる。
本インサイトでは、エナジードリンクや食物繊維、食品といった消費財の例を中心に紹介したが、このフレームワークは、例えば建材やホテル、飲食チェーン、医薬品など、BtoB商材やサービス業にも同じように活用することができる。
アビームコンサルティングでは、こうしたカテゴリーブランディングの構築から実行、戦略PRの設計、共創パートナーとの連携支援まで、カテゴリー戦略を通じた新市場創造を総合的に支援している。特に、新事業や新ブランドをローンチする際に莫大な広告投下をせずに市場形成と認知獲得を行いたい場合、カテゴリー戦略に基づき戦略PRを用いることが有効である。アビームコンサルティングは、新規事業立ち上げからブランディング、顧客形成に至るまで、市場創出・展開の成功に伴走していく。