マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策(以下、マネロン対策等1)を含む金融犯罪対策に官民を挙げて注力する中、2024年6月、犯罪者集団が起業家を装って約4,000もの法人口座を開設し、700億円もの犯罪資金の洗浄を行っていたという衝撃的な報道がなされた。
この集団は、形式上は真正な登記を行った法人として口座開設を申し込み、指南書によって理論武装して審査を潜り抜け、疑わしく見えない普通の人がよどみなく回答することにより対面審査もクリアし、複数の金融機関に多数の法人口座を開設していた。金融業界は、あらためてマネロン態勢の再点検を迫られることになった。
本インサイトでは、マネロン対策等の実務経験豊富な筆者2が、当該事案の概要3を俯瞰した上で、犯罪者集団の跳梁跋扈を許さないためには何が必要かについて私見を述べる。