パナソニック エナジー タイ株式会社

製販在一体のサプライチェーン管理プロセスの確立とサプライチェーン全体での在庫適正化を実現
事例
  • 小売・流通
  • 消費財
  • サプライチェーンマネジメント

タイ国内乾電池シェアNo.1を誇るパナソニックエナジー タイ株式会社。同社はマーケットシェアの最大化に向けディストリビュータ(卸売業者)とともに販売活動の効率化を進めている。
マーケットが必要とする商品をタイムリーに供給するために、アビームコンサルティングの支援のもと、これまで組織毎に個別で行われていたSCM(サプライチェーン管理)業務をメーカー・ディストリビュータの垣根を超えて統合・連携。マーケットの実需から始まる製販在一体となったSCM業務プロセスを実現し、サプライチェーンモデル改革を推し進めている。

経営/事業上の課題

  • サプライチェーン全体では「在庫が増加」傾向であった
  • 一方で製品 x 拠点レベルでは「欠品も発生」していた
  • ディストリビュータ間では「在庫の偏り」も起きていた

課題解決に向けたアビームの支援概要

  • 目指すべき「将来のサプライチェーンモデル」をデザイン
  • 「計画サイクルの週次化」に向けた業務プロセスの変更
  • ディストリビュータ在庫への「共通在庫基準の適用」

支援の成果

  • 「全体在庫の削減」と製品 x 拠点レベルでの在庫適正化
  • 予実差異と需要変動に対する「タイムリーな調整」の実現
  • 偏在庫の削減と「実需に合わせた生産・在庫供給」

クライアント課題の難所

クライアントおよびディストリビュータの意識改革と合意形成

マーケットの実需を起点とした製販在一体となったSCM。その実現のためにはこれまで個別に行われていたSCM業務をディストリビュータまで含めて統合・連携させる必要があった。しかしながら、単なるオペレーション変更にとどまらず、商売の要である「仕入れる」と「売る」、ここに対する意識をクライアントとディストリビュータの双方で変えなければならない難しい取り組みであり、これまで実現できずにいた。そこでバックオフィス業務改革や営業支援アプリ開発でクライアントの変革を支援してきたアビームコンサルティングが相談を受け、2022年から支援を行った。
これまで各ディストリビュータ独自の基準で管理されていた在庫に共通の在庫基準を適用、その基準に従って在庫を供給することでサプライチェーン全体をスムーズに歪みなく連動させ、マーケットの実需に応じた生産を可能にする。そのためにクライアントサイドでは、ディストリビュータに売って終わりではなく、自社の売上を達成するためにディストリビュータ売上の最大化に注力するという意識改革が必要であった。ディストリビュータサイドでは、これまで自らの基準で管理していた在庫を他者が設定した共通の基準で管理される、この点への抵抗感を払拭し、共通在庫基準への信頼を得ることが重要であった。在庫基準とは在庫高と欠品リスクのバランスをどう取るかのポリシーであり、在庫高が減るディストリビュータもあれば増えるディストリビュータもある中で、コンセンサスをいかに作っていくかがプロジェクトの重要なポイントであった。

目指すサプライチェーンモデルのイメージ

プロジェクトの重要成功要因

きめ細やかな在庫基準の調整とディストリビュータとの粘り強い対話

今回のサプライチェーンモデル改革の要となるディストリビュータへの共通在庫基準の適用。そのためには適用する在庫基準の妥当性とディストリビュータの納得感が成否の鍵であった。
共通在庫基準の設定においては、販売実績を統計的に分析することで販売特性に応じた標準値を算出したのちに、販売ポリシーにもとづいた確認・意思入れをすることで、理論と意思を両立させた現実的な基準を作りあげていった。また、パイロットディストリビュータの選定とロールアウト順序・タイミングを戦略的に決めるとともに、ロールアウト前後でのコミュニケーションを丁寧に行っていった。特に、在庫レベルに対する考え方のギャップが大きいディストリビュータとは、ロールアウト後も定期的に対話を続けることで、在庫基準に対する考え方のすり合わせとコンセンサス形成を進めていった。
アビームコンサルティングは共通在庫基準の算出とその後の確認・意思入れからディストリビュータとの対話まで、在庫管理のエキスパートとしてクライアントをリード、サプライチェーン在庫の適正化を実現した。

在庫基準の考え方と実際の在庫推移

アビームの貢献

ビジョンに沿った改革構想の策定から在庫の現場を変えるところまでトータルにサポート

メーカー・ディストリビュータの垣根を超えてサプライチェーンの統合・連携を目指した今回のプロジェクト。アビームコンサルティングは、製造業と小売業双方のサプライチェーンマネジメントに関する専門知見を持つコンサルタントが、改革構想の策定から実際の現場オペレーションの変革までトータルにサポート。
改革構想フェーズでは、現場インタビューだけではなくデータ分析により客観的事実を把握、正しい現状認識と専門知見に基づいて課題と根本原因を特定した。その上で、クライアントと議論を重ね将来のあるべき姿をデザインした。さらに、実現フェーズでは、在庫の供給に支障を出さないようにオペレーションを現場レベルで確認、新業務に合わせた需給計画テンプレートの整備から安全在庫や販売予測といった各種パラメーターの調整まで新業務の定着をサポート。また、計画段階では認識されていなかった・やってみて始めて分かる課題や不満が出てくる中で、改善すべきものはテンプレートの拡張やパラメーター変更でタイムリーに対応、納得してもらうべきものは対話を続けることで新業務への理解を深めていった。
こうした実践的な活動をクライアントとともに続けることで、マーケットの実需から始まる製販在一体となったSCM業務プロセスをスタートさせることができた。
今後はさらにSCM業務をより効率的に実行していくためのオペレーション改革にアビームコンサルティングが伴走しながら取り組んでいく。

サプライチェーン改革の流れとアビームコンサルティングの支援

アビームコンサルティングによる極細かく粘り強い対応と豊富な知見により、タイ国内主要顧客と一体となった実需起点によるPSI(製販在)管理の仕組みを構築することができました。
これにより長年の課題であった販売予測の精度向上ならびに、当社および顧客在庫の適正化に向けた一歩を踏み出すことができました。ありがとうございました。

パナソニックエナジー タイ株式会社
社長
谷本 卓也氏

Customer Profile

会社名
パナソニック エナジー タイ株式会社
所在地
166 Moo 4 Sukhumvit Road, T.Teparak A Muang Samutprakarn 10270, THAILAND
事業内容
アルカリ乾電池、マンガン乾電池の製造・販売

2024年9月19日

専門コンサルタント

  • 原 市郎

    Principal
  • 原田 健志

    Principal

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