こうして、プロジェクトでの分析によって、215のESG指標の中から45の指標で対外開示に使うことができる望ましい相関を検出することができた。「社内的にも、プラスの相関が得られた指標については、担当部署が今後も自信を持って推進を続けられますし、マイナスの相関だった指標については、取り組みの改善が必要です。加えて他社との比較分析もいただきましたので、KDDIに欠けている、あるいは弱い取り組みについて気づきを得る良い機会となりました」(最勝寺氏)。
特に、KDDIフィロソフィ浸透活動や気候変動への取り組みにプラスの相関が出たことは、担当部署にとっては励みになった。逆に顧客とのエンゲージメントや人財活性化の相関が少し弱いと指摘されたことは社内でも課題と感じていた部分だったので、IR室のスタッフにとっても実感と重なるところがあり、納得することができた。
分析結果の報告はIR室だけでなく、サステナビリティ推進室やリスクマネジメントの部署なども集まって行われたことで、ESGを推進する部署の意識を更に高める良い刺激になった。
さらに分析結果の一部は2021年3月期決算説明のプレゼンテーション資料で「企業価値向上に向けて、財務・非財務両面の強化を推進」として発表された。「決算発表後に投資家の取材で、ESG関連の質問を受けましたが、投資家の満足度は高いと感じました。非財務と企業価値の関連分析は始めたばかりだと話をしたのですが、投資家からは『着手していることが重要で、それ自体が評価できる』と言われて、とても嬉しく感じました」(最勝寺氏)。
KDDIでは今後、今回のトライアルの結果を社内全体での具体的なアクションにつなげていくと共に、毎年データを効率的に収集・蓄積し、価値関連性の分析に使えるように管理していく考えだ。またAnalyticsを継続的に実施した上で、新しい経営管理をKDDI自身の力で継続する自走に向けた準備を進めながら、アビームの第3者としての関与を受け、財務・非財務両面の取り組みにより企業価値最大化を目指すESG経営に向けて取り組んでいく。