KDDI株式会社

KDDI株式会社

Customer Profile

会社名 KDDI株式会社
所在地 東京都千代田区飯田橋3丁目10番10号ガーデンエアタワー
設立 1984年6月1日
事業内容 電気通信事業等
資本金 141,852,000,000円

※会社名、肩書き、役職等は取材時のものです。

ESG関連情報を分析し、企業価値と望ましい相関関係を持つ指標を抽出、投資家との対話などIRに積極活用しさらなる企業価値向上を目指す

総合通信事業会社のKDDI。同社はESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)関連の意識の高まりの中で、ESGなど非財務情報の企業価値向上への影響を明確にしたいと検討し始めた。ESG関連指標と企業価値の関連性の数値化が可能であることを知り、アビームをパートナーにプロジェクトに取り組み、企業価値向上と望ましい相関関係にあるESG関連の指標を検出することができた。KDDIはこの指標を積極的にIR開示に活用すると共に、財務・非財務両面の取り組みにより企業価値の最大化を目指していく考えだ。

プロジェクト概要

導入前の課題

  • ESG/SDGsなど非財務情報の企業価値向上への影響が不明確
  • ESG関連情報の開示強化

ABeam Solution

  • アビームDigital ESG Data Analyticsソリューション
  • ESG開示動向への知見
  • プロジェクトを完遂する推進力

導入後の効果

  • ESG活動と企業価値向上の関連性を定量分析しIR開示に活用
  • 非財務情報と企業価値向上の関係を可視化することによる社内の意識向上

Story

最勝寺 奈苗 氏

新しい経営管理を自身の力で継続する自走に向けて、アビームには引き続きサポートをお願いします

 

KDDI株式会社 
執行役員 
コーポレート統括本部 
経営管理本部長
最勝寺 奈苗 氏

Story

プロジェクトの背景

投資家との積極的な対話のために、IR開示におけるESG関連情報の充実を模索

 KDDIは、2000年に第二電電(DDI)と国際電信電話(KDD)と日本移動通信(IDO)が統合して発足した総合通信事業会社である。同社は豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献することを企業理念として掲げ、既存事業の持続的成長とイノベーションへの挑戦の両軸で成長を図っている。その事業は個人向けと法人向けに分けられるが、個人向けでは5Gならではの体験価値を実感できる環境を早期に作り上げていくと共に、顧客接点となる「au PAY」のさらなる普及促進などで、通信とライフデザインの融合を進めている。法人向けはさまざまな業界や利用シーンで企業のDXが加速し、ビジネスモデルが大きく変化している中で、新規ビジネスの開発拠点KDDI DIGITAL GATEと新たなライフスタイルを提案する研究開発拠点KDDI research atelierを東京・虎ノ門に開設。この二つの拠点が連携して、オープンイノベーションを加速することで、新しい体験価値とビジネスの創造を進め、あらゆるモノに通信が溶け込む時代のデジタルインテグレーターを目指している。

 KDDIでは、投資家との対話の中で、世界的な関心の高まりとともに、昨年来ESGやSDGs関連の質問が増えている。「KDDIには、従業員が持つべき考え方・価値観・行動規範を示したKDDIフィロソフィがあり、その中でも、社会への貢献、従業員・お客様、取引先様、株主様などすべてのステークホルダーの皆様から愛され、信頼される企業を目指すことが謳われています。よって、これまでの株主至上主義の考え方には違和感がありました。SDGsの全世界的な取り組み強化とともに、2020年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)でステークホルダー資本主義への転換が提唱されたこと、それに加えて新型コロナウイルスの感染拡大で企業の社会貢献が強く意識されるようになり、投資家の目もESGの取り組みに着目して、企業の非財務的価値を評価するように変わってきたのです。特にこの1年の変化は大きかったですね」とKDDI 執行役員コーポレート統括本部経営管理本部長 最勝寺奈苗氏は語る。

 従来KDDIでは財務情報に加えて非財務情報について統合報告書を中心に開示してきたが、四半期ごとの決算開示、投資家との対話の中で、そうした非財務情報がどのように企業価値向上に結びついているのかを定量的に説明する必要性は感じつつも、どのようにしたらいいのか具体的な方法を見出だせずにいた。

Story

アビームの選定理由

企業価値向上との関係を定量的に説明可能との提案により
まずはトライアルとしてプロジェクトを開始

 ESG関連情報の開示充実を模索していた2020年2月、KDDIはアビームコンサルティングから招待を受けて、アビームが主催するDigital ESG-CxOラウンドテーブルに参加した。そこでESGの経営課題化や新たな経営管理としてのDigital ESGに関するアビームからの提案を受けて、参加した他の企業と問題意識の共有を図ることができた。最大の課題は自分たちの行動が企業価値向上に結び付くことについて数値化することの難しさだった。参加企業は皆同じところで悩んでいたが、ラウンドテーブルでエーザイ株式会社専務執行役CFO(最高財務責任者)早稲田大学大学院客員教授の柳良平氏が開発したESGとROE(株主資本利益率)の同期化モデルを使うことで、数値化が可能であることが分かり、開示の方向性を見出だすことができた。

 ただラウンドデーブルだけでは詳細な分析の仕方が分からず、出された数値に納得しきれないことや、実際に適用する場合の踏み込み具合など、判断に迷うところがあった。しかし、半年後の2020年秋にアビームから再度個別に提案を受けたときには投資家のESGに対する関心は更に高まっていたこともあり、KDDIではトライアルとして、Digital ESG Data Analyticsプロジェクトを実施することを決めた。「今回のプロジェクトを会社全体の取り組みと位置付けると、影響範囲が広く調整に時間がかかりスピーディに進められません。そこで、トライアルは会社全体のサステナビリティの取り組みとはある意味切り離して、開示を充実させるための定量分析を投資家対応の窓口であるIR室主導で実施することにしました」(最勝寺氏)。

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プロジェクトの目標・課題と解決策

過去10年間のデータを収集、最終的に20部署以上の215指標を分析

 プロジェクトでは、ESG活動と企業価値の関連性を実績やデータから見出すために、アビームのDigital ESG Data Analytics ソリューションを活用したデータ分析を実行。これによって、ESGデータを可視化して、KDDIのESGの取り組みの中で企業価値に影響を及ぼす取り組みや指標を把握、それをIR情報として開示に活用することを目標に据えた。「企業価値に定量的に大きな影響を与えている項目を抽出すると共に、実際の行動との関連付けをトータルで示すことを目指しました。2020年9月からプロジェクトを始めて、2021年3月期の本決算発表に間に合わせるかたちで完了させようと考えました」(最勝寺氏)。

 プロジェクトでは、ESG関連の数値データを集めるところから着手。データが1カ所に集まっているわけではないので、さまざまな部署から収集しなければならなかった。加えて、過去10年分のデータのため、存在するかどうか分からないものもある。そこで各部署に目的をきちんと説明して協力を得ながら、データの収集を進めていった。最終的に分析に利用したデータは、20部署以上から収集した215指標に及ぶ。集めることができたデータはそれを上回っていたが、分析が可能となる4年分に足りずに分析に回すことができないものもあった。「これだけ多くのESG関連データを一カ所に収集したこと自体が一つの成果であり、非財務データとして当社の大きな資産になることは間違いありません」(最勝寺氏)。

 その上で、プロジェクトではデータをDigital ESG Data Analyticsツールで分析、積極的に対外開示できる企業価値と望ましい相関を持つ指標を検出することができた。検出された指標をもとに、KDDIが定めている六つのマテリアリティ(重要課題)の分類に従って、プロジェクトメンバーで議論しながら、因果関係やストーリーを組み立てていった。

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導入効果と今後の展望

分析結果の一部は決算説明会で発表、投資家は取り組みを高く評価

 こうして、プロジェクトでの分析によって、215のESG指標の中から45の指標で対外開示に使うことができる望ましい相関を検出することができた。「社内的にも、プラスの相関が得られた指標については、担当部署が今後も自信を持って推進を続けられますし、マイナスの相関だった指標については、取り組みの改善が必要です。加えて他社との比較分析もいただきましたので、KDDIに欠けている、あるいは弱い取り組みについて気づきを得る良い機会となりました」(最勝寺氏)。

 特に、KDDIフィロソフィ浸透活動や気候変動への取り組みにプラスの相関が出たことは、担当部署にとっては励みになった。逆に顧客とのエンゲージメントや人財活性化の相関が少し弱いと指摘されたことは社内でも課題と感じていた部分だったので、IR室のスタッフにとっても実感と重なるところがあり、納得することができた。
分析結果の報告はIR室だけでなく、サステナビリティ推進室やリスクマネジメントの部署なども集まって行われたことで、ESGを推進する部署の意識を更に高める良い刺激になった。

 さらに分析結果の一部は2021年3月期決算説明のプレゼンテーション資料で「企業価値向上に向けて、財務・非財務両面の強化を推進」として発表された。「決算発表後に投資家の取材で、ESG関連の質問を受けましたが、投資家の満足度は高いと感じました。非財務と企業価値の関連分析は始めたばかりだと話をしたのですが、投資家からは『着手していることが重要で、それ自体が評価できる』と言われて、とても嬉しく感じました」(最勝寺氏)。

 KDDIでは今後、今回のトライアルの結果を社内全体での具体的なアクションにつなげていくと共に、毎年データを効率的に収集・蓄積し、価値関連性の分析に使えるように管理していく考えだ。またAnalyticsを継続的に実施した上で、新しい経営管理をKDDI自身の力で継続する自走に向けた準備を進めながら、アビームの第3者としての関与を受け、財務・非財務両面の取り組みにより企業価値最大化を目指すESG経営に向けて取り組んでいく。
 

図 Analyticsトライアルから自走までのアプローチ

図 Analyticsトライアルから自走までのアプローチ

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金村 浩海
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Hiromi Kanemura
エンタープライズ トランスフォーメーションビジネスユニット長

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