2024年8月21日
2024年8月21日
アビームコンサルティング株式会社(以下、アビームコンサルティング)は、日本企業におけるスマートファクトリーへの取り組み実態の把握と課題特定を目的として、6,186名の製造業従事者を対象に「スマートファクトリーの現状調査(以下、本調査)」を実施したことをお知らせします。
■主な調査結果
(1)スマートファクトリーに取り組んでいる企業は全体の4割未満であり、企業規模が1兆円以上の企業でも6割以上が着手できていない
スマートファクトリーの取り組み状況について、「モデル工場を設定し、スマートファクトリーに取り組んでいる」と回答した企業は23.5%、「モデル工場での取り組みが完了し、他工場への展開を進めている」と回答した企業は9.4%となり、スマートファクトリーの取り組みを進めている企業は全体のわずか4割にも満たず、まだ発展途上であることが明らかになりました。
企業規模別で見ても、規模が大きくなるほど取り組みが進んでいる傾向はあるものの、1兆円以上の規模を持つ企業でもわずか38.6%しかスマートファクトリーに取り組んでいない状況でした。
(2)スマートファクトリーに取り組む目的は「完全自動化の実現」が半数を占める
スマートファクトリーで目指す姿としては、全体では「完全自動化の実現」が45.7%と半数を占め、次いで「工場データとサプライチェーンデータの連携の実現」が20.9%、「匠の技術継承の実現」が13.7%という結果となりました。
一方で、業種別で見ると、化学や鉄鋼・非金属・金属などのプロセス産業では「工場とサプライチェーンデータの連携」が約3割にも及んでおり、複雑化したサプライチェーンへの対応を重要視していることが分かりました。
(3)半数の企業が「上手く進んでいる」ものの、4割の企業が「上手く進んでいない」。スマートファクトリーの成否は二極化している。
また、(2)の結果をさらに深掘り分析し、それぞれの目指す姿に対する進捗度について調査した結果、半数以上の企業では取り組みが上手く進んでいることが分かりました。しかし一方で、「匠技術の伝承の実現」を除き、4割以上の企業では取り組みが上手く進んでいないことも判明しており、このことからスマートファクトリーの成否が二極化していると考えられます。
(4)取り組みにおける課題は、人材・資金不足だけでなく、既存業務の延長線上での取り組みになっている結果、生産性向上につながらないことが挙げられる
「完全自動化」および「工場データとサプライチェーンデータの連携」を目指す企業における課題・困りごととしては、人材や資金不足が一番多く挙げられました。しかし、寄せられたコメントを具体的に見ていくと、個別工程の自動化やサプライチェーンデータ活用のモデルケースの不足、完成後の業務イメージがない、といった課題も挙げられています。
本来、将来の工場像に向けて取り組むべき自動化やデータ連携が、既存業務の延長線上での取り組みになっている結果、生産性向上につながらない等の問題が生じていると考えられます。
(5)経営層がスマートファクトリーに対し積極的に関与している企業は、8割以上が「上手くいっている」
スマートファクトリーに対する経営層のコミットメントと取り組みの成否の関係性について調査した結果、「経営層の活動理解度が高く、積極的に参加している」という企業のうち「上手くいっている」と回答した企業が83.3%にも及びました。このことから、経営層による積極的な参画とコミットメントが、スマートファクトリーの成否に大きな影響を与えることが分かりました。
一方で、経営者のコミットが高い企業であっても「人材不足」や「活動予算」を課題にあげる企業が多く、リソースを十分には確保できていない状況が分かりました。
経営者はコミットするだけでなく予算や人員を割く必要があり、デジタルツインの使いこなしや部門間横断の取り組みに向け、現場の努力だけに頼らないリソースの確保が必要になってきていると考えられます。
■調査結果から共通して見えた課題
アビームコンサルティングは、本調査によって明らかとなった実態を分析し、スマートファクトリーに取り組む企業から共通して見られる課題として、大きく以下の4つを導き出しました。
スマートファクトリーの将来像の巻き直しが必要
何が目的の活動なのか、どう業務や効率性が変わるのか、将来の工場像を明確にしないまま、テーマアップでの技術適用や局所業務改善が先行している。
既存の延長にない工程・レイアウトなどの作り込みが必要
既存の工程・レイアウトの延長線上の取り組みが多いが、結果として自動機器が高額化し、ROIが見込めない取り組みが多くなっている。また既存ラインのカイゼン文化の衰退がみられる。
デジタルツインの活用が重要
直近は技術偏重でスマートファクトリーを進めてきたものの、OT(Operational Technology)を最も助けるシミュレーション技術であるデジタルツインの活用が進まない。
経営層は活動へのコミットだけでなくリソース確保も必要
経営層がスマートファクトリー活動を理解・関与するほど活動は進みやすいが、リソースへの対応は不十分な傾向にある。また、部署間横断での取り組み(データ連携)については経営層がリードをすることが必要である。
本調査の全文、および課題に対する示唆などの詳細については、以下リンクよりご確認いただけます。
https://www.abeam.com/jp/ja/insights/010/
■調査概要
調査名:スマートファクトリーの現状調査
調査期間:2024年2月15日(木)~16日(金)
調査方法:インターネット調査
調査対象:製造業従事者
調査人数:6,186名
相談やお問い合わせはこちらへ