アクションプランについては、スキルレベルに応じて内容を検討することが求められる。例えばL0の「知識、経験なし」のスキルであれば、まずは知識不足を補うためのトレーニングが必要になるため、アクションプランとしては、具体的なトレーニング受講計画を立てる必要がある。一方L3であれば、ある程度独り立ちしたポジションでの経験が必要となるため、リーダーなどのポジションでプロジェクト推進することをアクションプランに盛り込む必要がある。このようにスキルレベルに応じて、不足する部分を補うためのアクションを決めることで、より具体的な育成計画になるだろう。
Step2 個人目標の確認
上司やプロジェクト上位者は個人の立てた目標を客観的な視点で評価し、より実現性を持ったアクションプランにしていく必要がある。個人の目標は高ければ高いほど良いというものではなく、達成不可能な目標にしていては意味がない。目標値が無理な設定値になっていないか客観的な視点で判断して、目標値を補正する必要がある。
上司、プロジェクト上位者の視点でより実現性をもったアクションプランとするには、例えば、設定した目標レベルに応じてプロジェクトでのポジションを準備する必要がでてくるだろう。ある程度経験のあるメンバーにはストレッチを考慮して、リーダーやマネジメントの役割を与え、実践での力を養ってもらいたい。このようなプロジェクトの体制に関しては、目標設定者ではできないことが多いため、アクションプランの実現性を上げるためのサポートをしっかりと入れる必要がある。
このように、体制構築において上司、プロジェクト上位者は、個人スキルを見極め、育成とプロジェクト成功のバランスを取った要員配置が求められる。自分達で推進することを基本方針としつつも、自社リソースだけで内製化するには、プロジェクトの遂行リスクも出てくる。専門知識を持つコンサルティングファームも併用して「プロジェクトの成功+人材の育成」を達成することが重要だ。
Step3 実践の中でのフォローアップ
個人目標の確認が済んだら、目標としたスキルレベルを目指しプロジェクト実務を開始する。しかし、プロジェクトを進めるうえでは日々課題が発生し、今のスキルレベルではできないことや、つまずくことが多く発生するのが実態だ。育成においては、このような問題を適時、適切にフォローアップすることで学びの機会が増え、成長が加速していく。具体的なフォローアップの手段としては、例えば日次、週次などの短サイクルで定期的に時間を確保したフィードバックをお勧めしたい。フィードバックというと半期に1度まとめて実施することが多いが、育成という観点においてそのタイミングでのフィードバックは効果的と言えるだろうか。特にプロジェクトが始まると、業務が多忙になり、理解しないまま進んでいくことは、多くの方も経験があるだろう。機会を失わないためにも、短サイクルで定期的に時間を確保したフィードバックの仕組みを構築することが重要だ。
ただし、短サイクルのフィードバックはフィードバックする側の負荷も考えなければならない。高頻度でのフィードバックはそれだけに時間を割くことになりかねない。全員同じ粒度で実施するのではなく、例えば経験の浅いメンバーにはより短いサイクル、経験値の高いメンバーには一定スパンでの実施など、育成担当者のスキルに応じたフィードバックの仕組みを構築し、育成担当者に合わせた成長の気付きを与えていきたい。
Step4 実践終了後の振り返り
最後にプロジェクトを通した育成実績の振り返りを行う。プロジェクト実務で高い成果を残しても、経験をきちんと振り返らなければ学びとして蓄積されづらい。プロジェクト実務での経験を振り返り、内省・検証し、学びを可視化していくことでスキル獲得につながっていく。
振り返りにおいて、まず取り組むのが目標としたスキルの到達度確認だ。具体的には前述の通り、スキルレベルを用いて定量的な評価を行い、到達できたスキル、できなかったスキルを確認していく。
プロジェクト実務を通しての定量的な到達度が確認できたら、次に到達度を糸口として目標到達・未達の要因を分析していく。達成できた目標に対しては、なぜうまくいったのか、成功パターンは何なのか。未達になった目標に対しても同じく、なぜできなかったのか、失敗した要因を探っていく。できなかった出来事、状況、行動を振り返るリフレクションを用いた分析をするのも良いだろう。重要なのは結果に対するプロセスを検証していくことだ。
最後は、検証を通して見えた課題や、課題を解決するためのアクションプラン、また、継続すべき良かったアクションを検討し、検討結果をプロジェクト実務で得た学びとして残していく。Step2でも述べた通り、上司、プロジェクト上位者の第3者視点を含めた客観的な視点も忘れずに入れていきたい。
継続的な育成サイクルにつなげるためにも、実践終了後は上記の流れで振り返りを行うことが重要だ。