日本国内の自動車販売台数に占めるEV(電気自動車)※1の割合は2022年時点で1.7%※2。環境意識の高まり・政策的後押し・各ブランドのEVモデルラインナップの拡充などにより、今後もEV比率が上昇していくことは間違いなく、自動車販売台数だけでなく保有台数も徐々にEVへとシフトしていくと見込まれる(EVシフトで先行する中国では、既に2022年時点で、EV化率が21%に達している※3)。
EVシフトが確実視される中、テスラ社のオンライン販売や株式会社ヤマダ電機の自動車販売への参入などが注目を集め、「EVシフトでクルマの売り方が変わる」と言われている。また、EVシフトによって自動車ディーラーの収益は大きく減少すると言われている。そのため、自動車ディーラーが生き残るためには、いわゆる「ビジネスモデル変革」が必要との論調が強まっている。自動車ディーラーの中には、新たなマネタイズポイントの創出にチャレンジする事例も出始めている。
アビームコンサルティングでは、自動車販売・アフター領域におけるEVシフトへの対応を検討するには、「EVシフトによって、何が変わり、何が変わらないのか」を具体的に把握することが前提と考えている。
そこで、本インサイトでは、新車販売領域およびアフターサービス領域においての変化点を整理した。特に、収益インパクトについては、簡易的なモデルケースで定量化を試み、EVシフトによるアフターサービスの台当たり売上の減少を約3割と推計した(この収益インパクトの詳細は、後段で解説する)。
本インサイトでは、EVシフトが新車販売領域およびアフターサービス領域に与える影響および収益インパクトを詳述した上で、自動車ディーラーに求められる対応を解説する。
なお、本インサイトにおける分析は、自動車ディーラー12店舗の現地調査および自動車ディーラー関係者へのインタビューに基づいている。また、自動車ディーラーの新車販売とアフターサービスの領域※での影響を主たる対象としている。