持続可能な事業設計をしていく上では様々な観点からの検討が必要になるが、特に重要になると考える観点を3点挙げる。
(1)地域通貨事業単体での黒字化をまずは目指す
まずは事業として最低限持続できるような目標設定をするという観点が重要になる。黒字化なのか、あるいは大きな赤字回避なのかは試算次第となる。
そこにおいて、重要になるのが、各種料率の設定である。地域通貨に住民や地域企業支援という側面がある以上、加盟店手数料や個人間の送金手数料に高い料率を設定することは現実的ではない。一方、地域通貨の普及、利用促進の観点で、チャージ時や決済時に例えば1.0%のプレミアムをつけるなどの工夫をすることも必要である。また、地域通貨へのチャージ方法として、クレジットカードやコンビニATMなどを設ける場合、それらに対する手数料の支払いも必要になってくる。
そうなると、全体の取引量を考慮した上での、各種手数料率が重要になってくる。例えば、地域通貨から現金に引き出す際の手数料は高く設定するなどし、一度地域通貨になったらなるべくその中で循環させるような工夫をする。
また、いかに地域通貨を転々流通させて、その効果を波及させるか、つまり乗数効果を得られるかという観点が重要になってくる。そのため、一回の取引で現金に換金されてしまう割合を減らし、企業間取引を増加させるなどの仕掛けが必要となる。
(2)間接収益の確保を狙う
地域通貨の発行体として、直接的な収益だけではなく、間接収益を想定することも重要な観点である。間接収益とは、例えば、口座開設の促進、それによる融資の実行などが挙げられる。地域通貨に関するプランを複数用意し、チャージ上限額や有効期限などに機能差を持たせ、上位のプランに移行するためには口座開設を必須とする方法などである。特に金融機関が発行体になる場合は、この点が顕著になってくる。
(3)地域全体のメリットを可視化し関係者を巻き込む
行政や地域企業とも協議しながら、例えばスマートシティや観光誘致といった街全体の文脈の中に、地域通貨を組み込んでいくことが重要になる。特に地方自治体が発行体になる場合は、この点が顕著になってくる。その場合、地域通貨発行の目的も、経済性というより、社会性の追求が優先になる傾向がある。そうなると、システムの構築費用および月額利用料は最小化し、加盟店開拓や問い合わせ応対も既存業務と統合して対応するなど、運用コストを可能な限り最小化することがポイントになってくる。