そもそも地域通貨とは何であろうか。簡単に地域通貨の定義を整理したい。
本インサイトでは、地域通貨は大きく以下4つの特徴を持つ通貨だと定義する。
(1)法定通貨ではないこと
(2)特定地域でのみ流通すること
(3)交換手段、価値尺度、蓄積手段という通貨の基本機能を有すること
(4)社会的価値を有すること
(3)について補足する。地域通貨は特定地域で物品などと交換可能であり、域外への資金流出を阻止し、域内の経済循環を促す役割がある。また、地域通貨は独自の通貨単位を用いており、価値尺度がある。ただし、その通貨単位は日本円と等価である場合が多い。また、地域通貨は蓄積手段にもなり得る。ただし、地域通貨はあくまで地域での利用を目的としたものであり、蓄積としての位置付けは限定的である。そのため、多くの地域通貨は有効期限を設定していたり、時間と共に減価する仕様を持たせていたりする。利子=資本増殖の機能も、あえて排除している。
また、(4)については、地域通貨は経済合理性以上の社会的価値を有している。あえて利用範囲や用途を限定することで、その地域での使用に意味を持たせている。また、地域ボランティアへの参加やコミュニティ内での贈与など、労働や販売以外のシーンでも地域通貨は受領できる。そして、地域通貨の利用時においても、単純に“安いから買う”という傾向だけでなく、地域特産品の購入など、地域参画をベースにした消費をする場合が見られる。地域参画を通貨という形で可視化することで、その広がりを促している。このように、地域通貨は経済性と社会性の二側面を有している。
上記の定義を参照し、地域通貨と地域商品券の差異も確認できる。すなわち、交換手段における差異である。
確かに、地域商品券も、(1)(2)(4)の特徴は併せ持っている。
一方、(3)の特徴、わけても交換手段の特徴は限定的である。地域通貨は繰り返しチャージし、繰り返し決済に使える。一方、地域商品券は、基本的に1回の購入、1回の使用を想定しており、繰り返し使えない。つまり、受取人がそのまま利用者になれず、例えば事務局へ券を毎回返却して精算するような場面を想定しなければならない。
上記のような差異はあるものの、実際は、プレミアム付デジタル商品券を発行して、まず利用者を増やし、その後、類似の事業スキームを継承して、デジタル地域通貨に繋げるケースも多い。