新しい挑戦を推進するための仕組みや外部活用
(菅原)前回の対談では、制度や仕組みという観点で、検討そのものの再現性というよりも、新しいことに挑戦する個人の重要性も観点に上がりました。
一方、そうした個々人の熱量やWill(想い)は、外部から教えたり、育てたりすることが難しいという現実があると感じます。今回はそうした、高い熱量を持って取り組みを牽引する人材をどのように巻き込むか、または、育てていくかをテーマに、対話を進めていきたいと思います。
(矢野)前回の議論の補足として、イノベーション界隈での一つの指標になっている『フェクチュエーション(市場創造の実効理論) 』を紹介したいと思います。これはサラス・サラスバシー教授が2008年にまとめた理論ですが、彼女はこの理論をもって、2022年に「Global Award for Entrepreneurship Research」という経営学におけるノーベル賞のような権威のある賞を受賞しました。イノベーションの領域に関わる実践者の中でも、この理論における主張が主流となってきている印象です。
(菅原)ご紹介いただいた理論では、行為の主体となる人やチームが持つべきマインドセットについて書かれている点が非常に参考になりました。スキルは教えることが出来てもマインドセットは、中々教えることができないので、事業開発に関わる方はぜひ読んでいただきたい理論体系だと思います。中でも、パートナーとの関係性や直面している現状に対する意思決定への姿勢や活動量を維持しつづけるための組織的な工夫などは、机上での検討に偏りがちな「0‐1」のフェーズにおける一つの方針になるものだと感じました。
特に、「エフェクチューションの原理」では6つの要素を紹介しています(図1参照)。書籍の中では、一部検証が済んでないというただし書きの要素もありますが、過去のコンサルティング支援の経験に照らし合わせても、実効性があるものだと感じています。