壁を乗り越えた企業に共通する実践として、松浦は以下の4点を提示した。
要諦①:Day 1以前に統合構想を描く
統合後のあるべき姿とシナジーの方向性をクロージング前に定義し、TOMを早期に整理した上でオペレーション・人材・システム・ガバナンスの実行計画に反映させる。「統合構想とは、戦略をどう実行し、価値をどう立ち上げるかを描いた全体設計図」であり、この構想の早期策定が統合の成否を分ける。
要諦②:明確な権限を持つ統合推進人材を設計する
買い手と対象会社をつなぐ統合推進人材を、明確な権限と責任を持たせた上でデューデリジェンス段階から関与させる。この人材は単なる調整役ではなく、「経営と現場をつなぎ、制度設計と現場浸透を一体で進める役割」を担う。実務上は部長から執行役員クラスが該当し、対象会社側にも対応するリエゾン・トランジションリーダーを配置する企業が増えている。
要諦③:Post PMIの展開と成果定着を仕組み化する
クロージングや100日プランの完成はゴールではなく、そこからが企業価値創出の本番である。成功している企業はPMIのKPIやシナジー指標を経営会議の管理指標として定常化し、中期経営計画と連動させて運営している。統合を「終える」のではなく「続ける」設計こそが成果定着の鍵である。
要諦④:経営層が自ら統合を実行する
PMIを現場に任せすぎると、統合は作業に矮小化され、シナジー実現が後ろ倒しになる。成功企業に共通する実践として、松浦は「シナジー創出を経営KPIとして明確に位置づけること」「進捗レビューを制度として仕組み化すること」「経営層自身が現場に足を運び、課題と意思決定を直結させること」の3点を挙げた。「PMIは任せるマネジメントではなく、共に走るマネジメント」という言葉に、要諦の核心が凝縮されている。