これまで「金融機関にとって不要な業務」に関する議論は、業務効率化に関するものが多かった。すなわち、「書類の作成や管理に時間がかかる、堅確な事務を追求する余り工数が過剰などの要因により不要なコストが発生している。従って、書類の簡素化や業務のペーパーレス化といった業務プロセスの見直しや、機能特化型店舗の導入、DX化の推進により業務の効率化を図る」という観点である。最近では、業務がAIに代替されることによって人が不要になるという観点も加わり、金融業界でも対応を急いでいる状況である。
これらは、いずれも「当該業務そのものは必要である」ことを前提とした上で、「どう実施するか」という観点からの議論である。
これに対して、集配金の横領や貸金庫の不正利用などの事象が起こると、コンプライアンス上の問題はもとより、人や設備の維持コストがかさむ一方で需要が減って採算が取れない業務の存続自体の是非に関する議論が呼びおこされる。
これは、「当該業務そのものが不要かどうか」の観点であり、これまで盛んに議論されてきた業務効率化等に関する観点とは異なっている。かつての業務環境や制約、顧客ニーズなどに基づいて、古くから金融機関が担い続けてきた業務(以下、「レガシー業務」)であるが故に、余り議論されて来なかった“新しい観点”である。
本インサイトでは、このような業務について、“存在意義”の観点から、実務とコンサルティングの経験豊富な筆者※1が考察し私見を述べる。