本連載では、企業がスポーツの価値を享受するためにというテーマを掲げ、スポーツが企業にもたらす価値を最大化させるための考え方や評価観点、価値の毀損防止に必要なポイント、それらを踏まえて企業に求められる対応について、スポーツ領域のコンサルティング支援実績から導き出した独自の知見をもとに解説する。
サステナビリティの潮流が高まる中で、企業は社会的責任の遂行と経済的価値の両立が求められている。その両立に向けて、企業活動がもたらす社会的インパクトの評価や開示、ステークホルダーとの連携といった多岐にわたる取り組みを強化している。このような中で、スポーツを支援している企業は、企業姿勢の体現や象徴、地域や社会との接点など、企業規模の大小を問わず、社会貢献やCSRでスポーツを積極的に活用している。
さらに、昨今、企業の競争力強化や持続可能な成長を支える要素として、企業の無形資産に対する評価・関心が高まっている。その背景から、企業に多くの無形価値をもたらすスポーツを、企業価値の源泉の1つとして捉え、スポーツの価値を最大化し、経営や事業運営に駆使することが有益であると当社は考えている。
しかし、スポーツ活用に携わる企業担当者からは、活用に伴うリスクや制約がありスポーツを活用できない、スポーツ活用は難しい、という声が散見される。一方で、スポーツとうまく付き合うことで、事業への貢献や企業イメージ向上といった効果を発揮している事例も存在する。例えば、企業が保有する実業団から世界に誇るオリンピアンを輩出し、所属選手のメディア露出を通じた企業のブランド価値向上や、スポンサー・協賛という形の露出も身近な例であり、これらを通じてスポーツ文化の発展にも寄与している。
そうした企業の実態を踏まえ、本稿では、企業とスポーツの歴史を概観したうえで、当社が体系的に整理したスポーツの価値を提示するとともに、スポーツが企業にもたらす価値を最大化させるための観点を紹介する。