味の素株式会社は、2019年にDX推進部を設立し、それまで局地的に行われた活動を統合して、グループ・グローバルへの全面展開を開始したが、システムやデータのサイロ化が大きな課題の1つだった。この状況を打開するため、同社は2021年にアビームコンサルティングをパートナーに選び、全社データマネジメントに着手した。アビームはマスタプラン策定から内製化に至るまでワンストップで支援。早期の事業価値創出を目指し、ユースケース起点にデータを統合。事業変革の一手として、全社横断型のデータ活用を推進している。
味の素株式会社は、2019年にDX推進部を設立し、それまで局地的に行われた活動を統合して、グループ・グローバルへの全面展開を開始したが、システムやデータのサイロ化が大きな課題の1つだった。この状況を打開するため、同社は2021年にアビームコンサルティングをパートナーに選び、全社データマネジメントに着手した。アビームはマスタプラン策定から内製化に至るまでワンストップで支援。早期の事業価値創出を目指し、ユースケース起点にデータを統合。事業変革の一手として、全社横断型のデータ活用を推進している。
経営/事業上の課題
課題解決に向けたアビームの支援概要
支援の成果
味の素株式会社(以下、味の素社)は、1909年創業の調味料・食品、冷凍食品、ヘルスケア等の製造販売を手がけるグローバル企業である。同社は、パーパスとして「アミノサイエンスⓇで、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を掲げ、2030年のありたい姿に10億人の健康寿命の延伸と環境負荷の50%削減と事業成長の両立という目標を定めている。この目標を実現するために、持続的に成長できる事業変革を進めており、その一環としてDX施策を通じた既存業務の変革や新事業開発に取り組んでいる。
「味の素グループでは、事業や国・地域の現地法人が高い独立性を持ちながら運営され、現地に根付いた商品を提供するビジネスモデルを採用しています。これが大きな強みである一方、事業や法人間の横のつながりが弱いという課題を抱えていました」と味の素社 コーポレート本部 DX推進部 企画・改革グループ シニアマネージャー 安間 千晃氏は語る。
この課題を解決するため、全社横断型のデータマネジメント基盤である「ADAMS(Ajinomoto DAta Management System)」を整備するプロジェクトを始動した。プロジェクトを推進するパートナーを募り、5社程度のコンサルティング会社の中からアビームコンサルティングをパートナーに選定した。
「ADAMSはシステムだけでなく、ルールや体制も含んだ包括的な仕組みです。多くのパートナーがどちらか一方に強みが偏っている中で、アビームの提案はそのバランスが優れており、さらに当社の事業特性を考慮した内容でした。ユースケースを起点にADAMSを進化させる際、具体的なデータ利活用シーンまで踏み込んでワンチームで進めるイメージが持てた点が、他社との大きな違いでした」(安間氏)
また、過去にアビームが味の素社のグループ関連会社を支援した実績も後押しとなり、アビームがパートナーとして選ばれた。
本プロジェクトは、業務活用に有益なデータを統合し、社員一人ひとりがDX施策に活用できる状態を目指した。具体的には、国内SCM、海外SCM、顧客、R&D、管理会計、社外連携等の幅広い範囲をターゲットとし、最初に事業部門からのニーズが明確であった国内SCM領域から着手する方針とした。活動の軸としては、「戦略」「データマネジメント基盤構築」「利活用支援」「ルール策定」「人材教育」の5本の柱を掲げ、各領域のバランスを取りながら進める計画を立てた。さらに、実際に事業部門の利用や高い効果が期待されるユースケースを選定し、その実現に必要なデータを統合するユースケース駆動型のアプローチを採用した。
「業務活用に有益なデータとするため、事業部門のニーズを確実に引き出し、実際に事業部門にデータを活用してもらいながら、真に業務に有益なデータを確実に統合するプロセスが重要でした」と味の素社 コーポレート本部 DX推進部 企画・改革グループ マネージャー 熊本 徹氏はプロジェクトの難所を振り返る。
「ユースケース駆動型のアプローチによって、事業部門との対話を通じて、本来の課題やニーズ、ありたい姿を正しく理解しながら、事業間を繋げるためのデータ活用の枠組みを構築できました。特に、各事業間のデータ連携を強化や横断的な視点で問題解決に取り組むことで、従来のサイロ化されたデータを全社的に活用できるようにしました。その結果、プロジェクトのQCD(品質・コスト・納期)を最大化できた点も、このアプローチの大きな強みとして評価しています」(熊本氏)
味の素社とグループ関連会社のNRIシステムテクノ株式会社、アビームの3社の共創体制を構築し、プロジェクトを推進した。アビームは立ち上げ段階のマスタブラン策定から、ユースケース選定、データマネジメント基盤構築、統合データ設計・開発、データカタログ策定、内製化に至るまで幅広く支援している。
「各社の特徴や強みを理解し、共創体制をリードしてくれた点が、プロジェクト成功の要因ではないでしょうか。また、プロジェクト全体を見通し、各ステークホルダーとの連携を強化しながら、必要なタイミングで適切な指示やサポートを提供してくれたリーダーシップが非常に大きかったと感じています」(熊本氏)と語る。
「どのようにしてADAMSの価値を早期に生み出し、その成果を関係者に理解してもらうのかが、プロジェクト立ち上げ当初の私の悩みの1つでした。ディスカッションを通じて、新たな視点を提示してくれたり、こちらの曖昧なイメージを具体化してくれるなど、単なるプロジェクト推進に留まらないサポートがありがたかったです」(安間氏)
「アビームが体系化してくれた組織知に助けられています。積み重ねられた豊富なノウハウのおかげで、プロジェクトをスムーズに推進することができました」と味の素社 コーポレート本部 DX推進部 企画・改革グループ 小野塚 祐太氏は振り返る。
ADAMSが目指す全社データ活用のありたい姿
本プロジェクトの成果として、ADAMSのデータ整備と国内SCMの15種類のユースケースへのデータ統合が実現した。これらは一つひとつの効果以上に、事業部門を超えて利益を最大化するためのローリングフォーキャスト実現につながっている。また、事業部門ごとに個別最適化され、閉じていたデータがADAMSに統合され、業務変革が進んでいる。
「同期社員と作った、営業業務を効率化するユースケースがあります。従来の営業担当はPOSデータをもとにExcelで来月の販売見込みを立てていましたが、膨大な商品数があり、負担が大きかった状況でした。ADAMSへ統合した結果、営業担当の負担が軽減され、空いた時間をより重要なアイデアの創出等に活用できるようになったと感謝されています」(小野塚氏)と本プロジェクトの成果を語る。
さらに、ADAMSを活用した業務横断型の取り組みが現場主導で始まっている。九州事業所では、ADAMSのことを知った社員が、他の事業所とデータでつながれば生産計画をより効率化できると考え、ADAMSを活用し始めている。
「ADAMSを活用した社員からは、日々新たなアイデアが寄せられており、その数は着実に増えています。最近では、社内やグループ会社からも多くの相談が寄せられており、ADAMSの取り組みが当初の予想を上回って広がっていることを実感しています。これまでの取り組みが現場で着実に価値を生み出し、さらに多くの部署やチームに影響を与え始めているのは、非常に嬉しく感じています」(熊本氏)
ADAMSの社内利用が加速している。最近では、データ活用に不慣れな社員に向け、生成AIを活用したチャットボットを開発し、データ活用の定着を進めている。今回の国内SCM領域の取り組みを皮切りに、今後は顧客、R&D、社外連携といった領域やグローバルのデータマネジメントへ拡大予定であり、全社横断型のデータ活用を通じて、さらなる事業変革を目指していく。
Customer Profile
2024年12月20日
橘 知志
安藤 有紀
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