味の素食品の包装工程の生産ラインでは、様々な規格の機械や設備が稼働している。生産ラインの稼働時間中、オペレーターは品質保持に不可欠な工程記録を紙帳票に記録しており、その量は1ライン当たり1日20枚にも及ぶ。生産ラインでは定期的に何度も製品を抜き出して、重さなどをチェックし記録。さらに、包装量の変更や製品の切り替え時には、設備の設定など細かな部分をチェックし、間違いがないように記録していく。
味の素食品ではこれらの工程記録をデジタル化して、ペーパーレス化を図り、オペレーターの業務負荷を軽減するとともに、設備が持っているデータを収集して分析する仕組みを整え、業務の改善スピードを向上させることを計画した。しかし、「自動化」の設計は進む一方で、業務オペレーション・KPIマネジメント・改善活動・IT・OTなど多様な要素を統合した「スマートファクトリー化」のノウハウは社内にはなく、課題を整理し、実現に向けた道筋を共に歩んでくれるパートナーが必要だった。そうした中、展示会で聴講した製造業DXに関する講演に感銘を受け、製造業の知見を多く有するアビームをパートナーに選んだ。
味の素食品の数多くある生産ラインには、同じ型の装置が導入されているわけではなく、それぞれメーカーが異なり、最新の装置もあれば、長く使ってきたものもある。ところが、SIerが提供するパッケージソフトは特定の装置としか連携していないため、現状の生産ラインに対応させるとなると、装置の入れ替え、またはラインごとに個別投資することとなり、膨大な費用がかかってしまい、現実的ではない。
「現在稼働している設備を前提に、そこからデータをしっかり集められるシステムを作る必要がありました。アビームの提案は、パッケージソフトを利用するのではなく、個別の設備にも対応する開発の方法で、異なる設備や装置で通信方法が違っても、一括してデータを収集でき、多数のラインへの横展開が可能という内容だったので、私たちの要件にぴったり合っていました」(海老澤氏)。
また、アビームの提案はシステム構築で終わるのではなく、その後の運用、導入後の現場への定着までを含んだもので、最後まで一緒にプロジェクトを成功させることができるだろうと考えた。