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B2B企業がサブスクリプション型ビジネスで成功するためには

事業開発
事業開発責任者向け
サブスクリプション
B2B

2021年9月2日

B2B企業がサブスクリプション型ビジネスで成功するためには
B2B企業のサブスクリプション型ビジネスの広がり
 近年、サブスクリプション型のビジネスモデル※への取組みがB2CからB2B企業にも広がってきています。B2B企業の有名な事例ですと、複合機のカウンターチャージモデルや、コマツのスマートコンストラクションなどが挙げられ、多様な業界で実績が生まれています。
 Zuora社によると、”サブスクリプションエコノミー”は2012年から2020年の9年間で6倍成長しており、従来のビジネスより5~8倍成長しているとしています*1。元々はB2Bのソフトウェア領域から始まったとされるサブスクリプションですが、「Netflix」や「Apple Music」などのB2Cでの盛り上がりを受けて、B2Bで改めて着手し始める動きが広がっています。
 一方、私たちがコンサルティングさせて頂く中で、一部には「収益の継続的な獲得」だけに注目し、顧客との継続的なリレーションの構築、カスタマーサクセスには視線が向けられていないケースもあるように感じています。

※本コラムでは、利用者が定額料金を支払い、サービスや商品を一定期間「利用」できる形式のビジネスモデルと定義します。
B2Bのサブスクリプション型ビジネスの難しさ
 自社でサブスクリプション型ビジネスを検討するにあたり、例えば次のような課題に直面していないでしょうか?
従来同様のコスト積上げ方式でプライシングした際の厳しい勝算見込み、サービス強化を担う機能立上げやサービス開発方法、請求計算などのオペレーション設計のナレッジの不足、顧客との継続的な関係構築のためのタッチポイントの設計の難しさ、短期的なKPIを求めるマネジメントとの価値観の違い、従来の売り切りの販売契約ではないサービス契約が書き上げられない、などです。これらは一例ですが、このようにサブスクリプション型ビジネスを検討すると、従来型のビジネスモデルやオペレーションと相反することが多々現れます。

 B2B企業の具体例として、我が国産業を牽引し、名目GDPにおける産業別構成比で約20%を占める製造業を挙げて考えてみます。
 日本の製造業においては完成品メーカーばかりでなく、部品メーカーも多く、最終製品の基幹部品を担っていることも特徴の一つといえます。例えば、部品メーカーにとって顧客は、完成品メーカー、エンドユーザーどちらもなり得ますが、いずれの場合でも自社のみで意思決定・実行できないケースがあることがサブスクリプションビジネスを難しくしている要因の一つと考えられます。

 顧客数の観点では、特に重電系では業界プレイヤー数が限られているため、B2Cビジネスのように見込み顧客の母数を大幅に増やす事が難しく、サブスクリプション型ビジネスで重要な顧客数が頭打ちになってしまうという制約もあります。
 サービス利用の継続期間の観点では、自社の提供するプロダクトが法定検査の必要な業種で活用されている場合には、定期的に検査・部品交換されることになるため、プロダクト提供している業種にとって効果的なプレディクティブ・メンテナンス (予知保全)の提供価値が得にくくなるケースもあります。
 蛇足ですが、良くも悪くも阿吽の呼吸でビジネスを行ってきた日本企業にとってはプロダクトに付帯するインストールやアフターサービスなどの各種機能が「サービス(=無料)」と顧客から受け止められる/強いられる慣習も見受けられます。これは、これまでの提供価値をアンバンドリング(分解)してサービス化することを困難にしており、サブスクリプション型ビジネスとしての実現を難しくしている一つの要因かもしれません。
戦略の転換
 従来の大量生産・大量消費の時代においては、多くの製造業にとって、ジャパンクオリティと称される高品質なプロダクトを、どのように設計・製造・販売して、いかに多く販売するのか、が従来の戦略上の論点でした。現在ではプロダクトの機能・性能で差別化することが困難になってきており、プロダクトベースから顧客バリューベースに重点が移っています。従来とは異なる競争のルールの中で、KPIはプロダクト(販売数)からバリュー(顧客数×継続期間)にシフトし、新たな戦略立案の必要性が生じています。
 例えば、B2C領域の好事例として、AppleはiPhone/iPadなどのハードウェア事業がダウントレンドの中、Apple Watch Series6 にセンサー機能やセキュリティ機能を実装し、これまでの「ライフガジェット」に「ウェルネス」デバイスの機能も持たせ、顧客接点の一手段として位置づけ、成長路線を作っています。これにソフトウェア事業として、Apple Fitness+などを連携させることで、顧客との関係性を長期化し高収益を獲得しているといえます。全体として「ヘルスケア事業」としての仕組みを構築し、顧客のニーズをうまくとらえていると考えられます。
実行のために必要な観点
 これまでは、顧客の要望を受け、いかに実現できるかが、価値の一つでした。近年は、デジタルの活用で顧客における機器(自社プロダクト・サービス)などの使い方をデータ分析することで、顧客を深く理解し、近い将来顧客が伝えてくるであろう要望を予見することが可能になってきました。顧客から要望を受ける前に、先回りして提案することが可能になってきたといえるでしょう。顧客をいかに理解して、顧客自身も気づいていないニーズを発見できるかが、B2B企業がサブスクリプション型ビジネスモデルに取組む際の成功のポイントといえます。

 例えば、圧縮空気の従量課金で知られているケーザー・コンプレッサー社では、従来はいつ顧客からコールがあるかわからないためにエンジニアのアサインが非効率になっていたのに対し、機器からのアラートで事前に察知できるようになったことで科学的にアプローチすることが可能になり、効率的な訪問、コストの削減を実現しているとされています*2。

 B2Bビジネスでは顧客事業・プロセスを支えるために提供プロダクトの在庫を長期に渡り、自社や販社などで抱えているはずです。したがって、サブスクリプション型ビジネスモデルへの転換にあたっては、プロダクトのライフサイクルは何年なのか、必要となる在庫数をどれだけ、どこで保管するのか、新しい型番への切替・管理はどうするのか、などの論点をあらかじめ考慮してサプライチェーンを再設計する必要があります。
 また、従来のプロダクトベースの組織編成から、提供価値に合わせたプロジェクトベースの組織編成への変革や、それに伴うKPIの策定、各種企画・実行していく人材の育成や、その評価・報酬などへの施策も必要になります。
 サブスクリプション型ビジネスモデルに取り組むということは、企業のビジョンを再定義し、それに伴うビジネス・プロセスを再構築することで、新たな価値を創出する力を実装することを意味しています。つまり、新たなプロダクトを生み出すこれまでの新規事業開発とは異なり、新たな新規事業開発プロセスやケイパビリティが必要になるということです。
 アビームコンサルティングには豊富な支援事例がございますので、サブスクリプション型ビジネスの検討にあたり、お困りの際は是非ご相談ください。

(参考文献)
*1 https://jp.zuora.com/resource/subscription-economy-index/
*2 https://iot.aperza.com/2019/05/3421/

戦略ビジネスユニット
マネージャー              

高松 和正

 
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