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新規事業開発には、なぜ当事者意識が必要なのか?

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新規事業開発には、なぜ当事者意識が必要なのか?
新規事業開発には、なぜ当事者意識が必要なのか?
 リクルート社が新規事業開発において、組織的な高いケイパビリティを持つことはよく知られています。その1つの要因は、新入社員の頃より「圧倒的な当事者意識」を求め、浸透させる環境を作ること、にあると考えています。新人の時から人材育成のフレームワーク(「Will:やりたいこと」、「Can:できること」、「Must:なすべきこと」により内省する)を使い、日常的な業務における期待値や自分の能力を振り返ることで、仕事の流儀を学んでいきます。特に、重要なのは、「Will」の中で常に自分の意思と与えられた仕事を結び付け、自分事にすることで、結果的に「圧倒的な当事者意識」が染みついていきます。
 新規事業推進の難しさの一つは、正解がない中で意思決定を繰り返すことが求められることです。社内的には前例がなく、試行錯誤しながら進めることになります。結果、失敗や修正が必ず発生しながらも、折れずに続けていくために、強い意志が必要になります。過去のプロジェクト支援経験からも、こうした局面でも柔軟な対応ができる人は、当事者として意思決定し、行動している人だと思います。

参考図表1:リクルートで使われている育成のフレームワーク
成功するリーダーは変化を捉えて、意思決定している
 新規事業推進の過程では、様々な困難に直面します。例えば、社内の協力を得られない、社外のパートナーとの交渉が不調に終わる、当初想定していた仮説が検証の過程で間違いと分かる、社内の方針転換により道半ばで撤退を余儀なくされる等、挙げ始めればキリがありません。こうした難しい状況の中で、当事者意識がない(上司から言われているからやっている)リーダーと、あるリーダーでは、成果に対して大きな違いが出ることは、皆さんもご理解いただけるのではないでしょうか。
 例えば、当事者意識を持っているリーダーは、社内で協力を得られない状況になっても、協力を依頼する先の業務や課題に対して、検討内容がどういった価値を提供できるかを様々な観点で提案していきます。自分たちの仮説や考え方をステークホルダーに正しく認識させ、自分たちのチームとどういった座組で、どういったことができるかなど、柔軟に対話を進めていきます。
 そうした取り組みの背景にあるのは、リーダー又は検討チームとして、ステークホルダーに対する理解の解像度を高めていることです。理解の解像度を高めるために、対峙するステークホルダーが抱えている個別具体的な課題を把握し、その原因を特定し、どういった解決ができるかを試行錯誤することです。前例や正解がない中で、常に当事者としての意思決定を行い、行動の結果をもとに、更に行動やプランを見直すといった小さなイテレーション(反復)を行っています。これを実行できるリーダーやチームは成功を掴みやすい特性を持っていると言えます。

参考図表2:意思決定の紆余曲折
ステークホルダーを巻き込むのための熱意
 「新規事業立ち上げに対する強い思い」の中には、当事者意識という文脈が含まれていると思っています。
 例えば、損害保険業界では、商品がコモディティ化しており、新たなビジネスや市場が生み出される度に新しい保険商品の開発競争が行われています。そうした中で、外部のスタートアップと協業を通じて、新しい保険商品の開発検討やその先にある新しい事業やサービスの領域を保険の付加価値に変えることで差別化を図るという検討を支援するプロジェクトがありました。
 支援したチームは、熱量とスピード感がある良いチームだと感じられました。新規事業開発を担う部門の責任者とプロジェクトを推進するリーダーが、二人三脚で進めていました。特に、社内でそれぞれ違う役割を担いながら、検討の障害になるような社内のルールや考え方を踏まえつつ、推進するための社内調整やリスク軽減のスキーム設計など検討を進めていました。
 事業開発の中心を担うリーダーは、そうした社内での対話を通じて、支援者を集めていくことが重要になります。チームのみならず、事業開発に関わる多くのステークホルダーを巻き込んでいくには、当事者としての思いを示すことや、巻き込むためのストーリーを語っていく必要があります。熱感をもって対話をするためには、自らの意思とのアライメントを取った行動でない限り、継続的に続けていくことが難しいというのが我々の経験から感じることです。

小さな失敗を乗り越えて、やり続ける胆力
 少し前にベストセラーになったアンジェラ・ダックワース著『やり抜く力GRIT(グリット)」を読まれた方もいらっしゃるかもしれません。著書の中で、才能に頼ることなく、最終的に成功を勝ち取る人の共通項として、「動機の持続性」を挙げていました。「動機の持続性」とは、「情熱」と「粘り強さ」という要素からなり、それらを計測する指標を簡易的に診断する質問票もついていました。
 前述の熱意を持つということと、その2つの要素の一方である「情熱」と強い関連性がありますが、ここでは、もう一方の「粘り強さ」について話したいと思います。「粘り強さ」が事業開発において、なぜ重要なのでしょうか。
 それは、計画通りに進まない取り組みを途中で投げ出さず、様々な工夫をもって成果に変えていくという活動が必要になるからです。新規事業開発のプロセスは、突破口を見つけるだけではなく、その後事業拡大(スケール)させるといった事業の成長段階に応じて、様々な課題に対応しながら、事業の形態を変えていくことが必要です。そうした変化する環境に応じて、粘り強く、対応していくことが、最終的な成功につながると考えています。
 我々が伴走している中で直面する悩みは、検討推進するチームの行動量の不足です。代表的な例は、
①仮説検証サイクルに入らない:検討がある程度定まってからじゃないと動き出せない
②仮説検証の過程でネガティブな反応に心を折られる:仮説は間違っているという前提で臨めない
③成功体験に縛られ、変化を嫌う:継続的な改善の取り組みに意識が向かない
などです。取り組みの多くは、現状維持の方向のバイアスがかかっており、事業開発の進捗に大きな影を落とします。
 古いことわざに「失敗は成功の母」という言葉あります。小さな失敗を経験することで、失敗からの学びにより、サービスや提供価値を改善していくということが、結果的に大きな成功につながると考えています。個人のみならず、検討推進するチームが持っている「粘り強さ」が、様々な取り組みの活動量につながり、最終的な成果の達成につながります。どうしたら勝てるか?よりも、勝つまでやり続ける(あきらめずに残った成功者に注目が集まる)という逆説的な思考も重要になります。
当事者意識が芽生える瞬間
 新規事業に携わっている方は、当事者意識の有無が事業開発の様々な局面で成否を分けることについて実感があるのではないでしょうか。そして大きな組織であればあるほど、「強い思い」をもって新しい変化を起こせる人材を見つけるのは難しいのが現実です。

参考図表3:スキルよりも思い/意識づけが大事
 ただ、当事者意識が高くないチームであっても、事業開発の仮説検証を通じた活動を体感することで、徐々に当事者意識が芽生えてくるものです。与えられた役割を遂行しようとするチームでも、一定期間をかけて仮説検証のプロセスを経ることで、大きくマインドセットや行動の変容が進みます。個人差はありますが、我々の経験では、3ヶ月程度で変化の兆しが見え始めます。Co-Creation Hubでは、イノベーションの取り組みに従事するクライアントチームに対して、コーチングの有資格者が事業開発のメンタリングも並行して行っています。興味がある方は、是非ご相談ください。

戦略ビジネスユニット ダイレクター

菅原 裕亮

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