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ケイパビリティ獲得のためのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の正しい使い方

新規事業開発
経営企画向け
Corporate Venture Capital(CVC)
組織ケイパビリティ獲得
Place
ケイパビリティ獲得のためのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の正しい使い方
CVCブームによる失敗の背景
 イノベーション創出のための出島についてのコラムの中で、CVCの失敗例として、手段の目的化を上げました。スタートアップ(以前はベンチャー企業が多かった)との連携の重要性について注目される時期が何度かあったことは皆さんも記憶にあるのではないでしょうか。



 残念なことに、こうしたブームが戦略的な目的を定めぬままに、他社がやっているから採用するという流れを生み出す原因になっていたといえます。弊社がスタートアップエコシステムの参加者と話をする中で、日系企業への評価として「CVCブーム」を一つ例に挙げて揶揄されることが良くあります。過去に何度もこうしたブームに乗っては良い投資先はないかと情報収集にきたが、ブームが去ると潮が引くように、周辺からいなくなる為、エコシステム組成や活性化を目指す動きをしている自分達からすると冷やかしに見える、ということでした。
 CVCを上手に活用するには、外部経営資源をどのように活用するかという戦略的な目的を持ちながら進めることが重要になります。
CVCの上手な使い方と経営企画部門の役割
 戦略的な機能と財務的な機能を併せもつCVCの組成に関して、経営企画部門がその設計や管理を担うことが多いと思います。しかし、その両面の機能を担うため、各関連部門の専門性の理解と巻き込みが必要になるという難しい側面が出てきます。つまり、投資領域に関わる既存の事業領域の専門性や事業への貢献に向けた設計といった事業面から、投資活動としての財務的な特性の理解や投資の評価といった財務的な管理やその影響まで幅広い理解が必要になります。
 そういった中で、「他社もCVCをやっているから自社でもできないか」といった検討から、実行に向けて苦労している方も多いのではないでしょうか。経営企画が主導でCVCの検討を推進するためのポイントは、以下の3つです。

1. 中長期戦略との関連付けと求めるケイパビリティの特定(おざなりなことが多い)
2. 具体化のイニシアチブと巻き込みによる実行推進(ここがキモで、難しい)
3. 他の手法との住み分け・連携の設計(大局観を持つためのTips)

 他にも、CVCのテクニカルなスキームの設計や具体的な運用上の工夫の説明を別の機会に回すとして、それぞれのポイントについて、簡単に解説していきます。
【ポイント①】中長期戦略との関連付けと求めるケイパビリティの特定
 経営層と中長期的な戦略の経営アジェンダを議論する中で、自社に不足しているケイパビリティが明確化されているのではないでしょうか。特に、CVCにおいて重要になるのは、中長期的な時間軸で求めているケイパビリティが何かという議論です。これは、M&Aといった投資としての短期的な成果とは異なることが多いからです。その性質は、外部を活用するという点以外は、技術開発の様なR&D活動にも似ています。
 起こりがちな失敗のパターンは、CVCというキーワードから財務的な議論やスキームの話が先行し、CVCの支援実績のある金融機関系のVCに相談して、とりあえずCVCを組成してしまうといったパターンです。また、事業開発系の部門がスタートアップへの投資を機動的に行いたいというHowが先行してしまい、多くのスタートアップの粒に対する投資だけが積み上がり、中長期的なケイパビリティが積み上らずに、成果が出ないため撤退するといったパターンもあります。
 最近では、こうした失敗を教訓にしつつ、長期的に補完が必要なケイパビリティ(情報や技術力、人材や事業ドメインなど)について、時間をかけて外部パートナーや投資先から自社としての知見、専門性や人的なリソースを補強していく上で、CVCを活用している事例も出てきています。
【ポイント②】具体化のイニシアチブと巻き込みによる実行推進
 CVCの推進において難しいのは、外部にどういったものを求めるかについて、既存事業や新しい領域を担当する事業部門と経営企画部門の対話が必要になることです。我々の顧客の中にも、経営企画側と事業部門側の心理的な距離が遠く、双方での協力体制が築きにくいケースが多いです。理由の1つとしては、中長期的な時間軸のCVCの活動に対して、収益のKPIを持つ事業部門が労力を割くことに前向きになれないことが多い点が挙げられます。
 そうした心理的距離を越えるためには、経営層との議論の延長線上で事業部門の責任者を巻き込むことも必要かもしれません。また、既存事業領域に近いテーマ・分野において連携を議論することや議論の結果としての投資を活用できる機会が得られることを訴求するなどの事業部門側のメリットを提示するといったやり方もあるかもしれません。重要なのは、中長期の経営アジェンダを事業部門のテーマをつなぐための双方が共感できるストーリーやテーマを持つことです。
【ポイント③】他の手法との住み分け・連携の設計
 CVCという手法を単体で議論することが難しいという側面があります。それは、前述の不足するケイパビリティを外部経営資源の活用によりどのように補完するかという(インオーガニックな)戦略の一部であるからです。



 そのため、経営として求める新しいケイパビリティの獲得を多面的に捉えてCVCの検討を進めるために、経営企画部門は経営全体を大局的に見れる立場として参画することが重要になります。
 また、投資が起点になることが前提のため、事業部門のみならず、財務関連の部門との連携も必要になります。具体的には、CVCのスキームの設計や投資の評価方法の検討(M&Aとは異なる時間軸や成果の定義)です。そうした財務的な観点と、事業領域としての既存事業部門や新規事業開発部門などの具体的な検討を促進する仕掛けや工夫を組み込んでいくことになります。
 ここで注意が必要なのは、財務的な成果が重視されるあまりに短期的な投資リターンにフォーカスが当たりすぎて、機動的な投資判断が出来ずに、競合他社類業に重要なパートナーを取られてしまうといったことです。また、M&Aで対応すべきものの、マイノリティーしか投資できないので、CVCからの投資で対応するという形式的な運用になり、本来は、M&Aによって短期的に内部化すべきケイパビリティの獲得が進まず、業界内で競争力を失ってしまうといったことも起こります。


この様に、経営企画部門が関連するステークホルダーを巻き込みながら、中長期的に必要となるケイパビリティを獲得していく戦略的目的を持った全体設計をすることが、CVC検討において重要にな ります。CVCが担う役割は、あくまで投資(Capital)を活用して、『事業創造における挑戦』(Corporate Venturing)することであり、事業会社がVCを運用することではないとアビームコンサルティングは考えています。CVCを検討する際は、本コラムで紹介した観点を踏まえて、経営アジェンダと紐づけた議論ができるとCVC活用を円滑にすることができると思います。

戦略ビジネスユニット ダイレクター

菅原 裕亮

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