bg
TOP > Column > 新規事業創出に向けた、CVCを活用した出島戦略とは

新規事業創出に向けた、CVCを活用した出島戦略とは

新規事業開発
事業開発責任者向け
Corporate Venture Capital(CVC)
マネジメントコミットメント
Place
イノベーションを成功させる出島とは

イノベーション創出における出島の役割とは

 イノベーション創出には、既存の組織から離れた「出島」が大事だと、よく聞くけど一体どのようなものか?と疑問に持つ方も多いかと思います。 歴史的にみれば、出島は鎖国当時、キリスト教の布教活動や貿易を監視するために設けられたものです。貿易活動を通じて自国にないものを取り入れるには、 重要な役割(希少なモノや情報を得るチャネル)を持っていたことは、皆さんもご存じだと思います。

 イノベーションの観点から考察すると以下の3つの重要なポイントが挙げられます。

1. 出島は、本国とは異なる制度や文化を維持・管理する(1国2制度)

2. 海外の情報やモノは、相対的に貴重なもので、貴重なモノ・情報が集まる仕掛けを用意する
(外の情報を積極的に集める)

3. 出島を通じて、モノ・情報を行き来させる(相互の連携を図る)

意図的なダブルスタンダード(1国2制度)のメリット

 ダブルスタンダートということは、一貫性がないことを意味するネガティブな表現として使われることが多いと思います。 イノベーション創出の観点で、既存の仕組みに捉われない活動を維持するための工夫として1国2制度が用いられています。 例えば、別法人としてCVCを組成して、自社の投資の意思決定とは異なる枠組みで活動していくというのも1国2制度の一つの例です。不確実性の高い環境において、 新しい挑戦やトライ&エラーによる学習によって、より早く解を見つけていくことが重視されます。 そうした活動を担保するために、新しい取り組みを推進できる環境を守り、維持していくことが重要です。

 しかしながら、1国2制度は、一つの企業内に2つ仕組みを同居させることで、一定の混乱を生み出すこともあります。こうした弊害を解決するために、 経営陣を巻き込むことで異なるもの同士の対立の調整に動いてもらうことが必要です。 混乱を生じさせるように見える取り組みの意図や目的、活動のKPIやゴールを提示し、共感を得ることで、経営陣からの支援を取り付けることができます。 経営陣からの支援を得ることで、組織内のチームアップや部門間の協力関係の構築がスムーズになります。特に、変化の激しい競争環境に対応するためには、 平均点を下げてでも多様性を取り込み、ブレイクスルー(イノベーションを創出)させることが重要になります。

↑

成功する出島は、明確な目的と戦略を持っている

 一定の活動できる仕組みを構築した後は、出島に求めている情報やケイパビリティを集めるための仕掛けが必要になります。出島という手段が目的化している企業も多く見受けられます。 CVCの設立にばかり奔走するあまり、活用方法を定めるための戦略や設立後の円滑な運用を支える仕掛け作りが疎かになっている等は、その顕著な例といえます。

CVCの組成の検討ポイントについて、こちらを参照

 では、成功する出島は、どういった特性を持っているのでしょうか。成功する出島は、 旗を立てることで、自分たちが必要な情報やケイパビリティを明確に発信しています。 例えば、TOYOTAのResearch Instituteは、Visionの明確性、実現に必要な新しい専門人材の特定、彼らを引き付けるための外部発信など、明確な意思をもって実行推進していることが分かります。集まる情報を目利きし、重要性の高いものに限られたリソースを割りあてることで、成果を出しながら、スキームや体制の拡大を図っています。その結果として、活動のそのものが評判を呼び、求めているものを更に呼び込むという好循環が生まれます。

出島を活用した既存組織への揺さぶり

 出島が単体独立して存在して、自走できているだけでは、1国2制度の特性を十分に生かしきれません。出島に入ってきたものを、自社内の取り組みに変容させていくことで新しいケイパビリティの獲得や競争力に変化させていくことが出来て初めて、異質なものを取り込むことのメリットを最大限に発揮できます。

 そうしたメリットを享受するには、既存組織側との接点(人材の交流や実務レベルでの連携の推進など)を意図的に作り出す必要があります。 特に、難しいのは、異なる文化や価値観を理解した上で、共通の目的や世界観を共有することです。大企業のスタートアップの投資において、よくある失敗は、 一方的な期待や理解のみで取引の成立を優先させてしまうことです。 投資後に共同でビジネスの検討を進めていくためには、双方の狙いや目的を同一にする共通的な世界観を描き、双方が実現に必要なリソースを持ち寄って、実行推進していくことが重要です。 密な対話による相互理解や連携が成立しないと、よいパートナーになりうる相手とも協働が成立しないことが多いです。

↑

組織に新しい風を起こし定着させるための場を作る

 弊社では、外部との連携の重要性を認識しつつも、自社内の文化や制度の慣性を突破してイノベーションを創出する場として、Co-Creation Hubを提供しています。 自社内で出島が作りにくい場合でも、大企業の事業開発担当者が自らの検討テーマを推進できる環境を整えることで、組織を横断する能力が高まり、より組織内が革新的(Be Innovative)になることで、これまでと異なるスピードとスケールを実現するための共創を担えればと思っています。

戦略ビジネスユニット BizDev Mentor

菅原 裕亮