アビームの視点:COVID-19を超えて

イントロダクション

Download NowCOVID-19によるパンデミックが世界中の経済活動や企業活動に大きなインパクトを与えています。
そのインパクトは、パンデミックの終息までの影響に留まらず、世界規模の経済活動や社会活動に影響を与えることが予想されています。
私たちは、この危機に直面して、3つの重要な命題と向き合うことになるはずです。

第1の命題は、いうまでもなくパンデミックとの闘いにおいて生存を確保すること。
第2の命題は、COVID-19との共存において高まる不確実性に対処すること。
第3の命題は、パンデミック終息後に希望のある未来を創造すること。

社会や組織の一員として、そしてひとりの人間として、私たちはこれら3つの命題と向き合い、予測困難な一定期間の時間軸において、同時並行的に最適解を導き出さなければなりません。そのことは、企業経営においても、非常に難しい舵取りが求められることを意味しています。
また、歴史の教訓から、パンデミック後はそれ以前の大きな潮流(メタトレンド)が一気に加速する傾向にあるともいわれます。私たちは、こうした大きな潮目の変化を捉え、全ての命題に果敢に挑戦し続けることで、With/Post COVID-19の未来をより豊かで、持続可能な世界にする使命を負っています。

本稿では、企業にとってのWith/Post COVID-19に焦点を当て、私たちアビームコンサルティングの視座をご紹介し、未来との向き合い方を考えてみたいと思います。

COVID-19がもたらす危機を乗り越える重要な視座(パースペクティブ)

COVID-19がもたらす危機を乗り越える重要な視座(パースペクティブ)

私たちの最初のパースペクティブは、With/Post COVID-19の世界では、生態系との共生と持続可能性に対する考え方を再認識する必要性があるというものです。

COVID-19によるパンデミック以前から、「ヒト」という種が地球上に増えすぎ、その営みや行動が生態系に過度な負荷をかけてきたことは事実です。そして、他の環境破壊や社会問題と同様に、これはパンデミックを乗り越えたから終わるものではありません。地球という生態系と「共生」できるものだけが生き残るという、生物としての原則と向き合い続けることを意味しています。
私たちは、生態系との「共生」が「持続可能性」に対する新たな価値観や基準を形づくるのではないかと考えています。
これは、未来に選ばれる社会、組織、個人へと「進化」するために必要なパースペクティブといえるでしょう。

もう1つの重要なパースペクティブは、With/Post COVID-19における「ニューノーマル(新たな常識・状態)」とは、適応するのではなく創造するもの、という思考が求められるというものです。

ニューノーマルについて、米ノースウエスタン大学のフィリップ・コトラー教授はこう述べています(※1)。
『新型コロナウイルスの感染拡大を前にして「自分たちの元の生活に戻りたい」と思っている。しかし、振り返ってみれば多くの人々にとって、その生活がそれほど良いものだったかといえば、実は必ずしもそうではなかった。多くの人々は貧しかったし、おなかをすかせていたし、そして何よりも働きすぎていた。
私たちは今回の出来事をきっかけにして、いろいろなことを変えていくことになるだろう。そして、ここから多くの人々が充実し満足する生活ができる機会が得られる「ニューノーマル」を創っていくべきだ。』
私たちは、ニューノーマル(新たな常態・常識)とは、COVID-19との共存における「不確実性への対処」を意味するものではなく、新たな思想や挑戦からのみ生み出される知恵だと考えます。
これは、未来を創る社会、組織、個人へと「進歩」するために必要なパースペクティブといえるでしょう。

未来に選ばれるための「進化」と未来を創るための「進歩」、この2つのパースペクティブの両立は、COVID-19による危機を乗り越えようとする社会、組織そして個人にとって重要なヒントになるはずです。

With/Post COVID-19に向けた企業経営の潮流(メタトレンド)

ここでは、企業経営の観点から、With/Post COVID-19に向けた潮流(メタトレンド)について、私たちアビームコンサルティングが着目するポイントをご紹介します。

まず1つ目のメタトレンドは、企業経営における価値基準の変化です。
私たちは、20世紀型の資本主義というゲームのルールが再定義されていくと考えています。それは、20世紀の経済や産業の発展の裏付けとなってきた資本主義、特に持続的成長と経済的成長の追求を優先する株主資本主義という価値基準がアップデートされることを意味します。
With/Post COVID-19の世界では、地球、人類、社会の持続可能性や生態系との「共生」をベースとする社会的価値の追求と経済的価値の両立が、より一層重視されるでしょう。
この大きな潮流は、COVID-19の感染拡大以前からの世界的な流れとなっています。経済価値優先の資本主義から社会的な共感を中核においた資本主義へ、株主資本主義からステークホルダー資本主義への移行という流れが加速するはずです。
この潮流がもたらすパラダイムシフトのインパクトは非常に大きく、既存企業の中には、自らの存在意義や存在目的(=Purpose)を問い直すところから、経営というゲームの再設計に取り組む企業も増加するはずです。

2つ目のメタトレンドは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の質的な変化です。
With COVID-19における生存の確保や不確実性への対処においても、デジタルの活用は大変有効な手段として加速するでしょう。そして、With/Post COVID-19の世界に向けて、社会と産業のデジタルシフト、すなわちDXの潮流はさらに加速するでしょう。そして、この潮流は、既存の企業や組織が取組むこれまでのDXに、質的な変化を迫るはずです。
With/Post COVID-19におけるDXは、企業の生存能力の向上に向けて、より「合目的」な取組みへとアップデートする必要があるからです。言い換えれば、テクノロジー起点のDigitalization(デジタル化)から、より自己変容を実現する手段として、変革行動の中核に位置づけられていくことを意味します。

With/Post COVID-19に向けた企業経営の潮流(メタトレンド)

この2つのメタトレンドの結果、企業そのものの在り方にも革新が迫られます。
価値基準の再定義とDXの質的な変化という強力な潮流は、既存の企業や組織、中でも過去に大きな成功体験を有し、豊富なヒト・モノ・カネ・データなどの資源を有する20世紀型のエンタープライズ企業の在り方に再構成を迫るでしょう。
企業活動の社会(ソーシャライズ)化とデジタル化が進むことで、改めて組織の存在意義(Purpose)を再考し、共創を前提とする価値創造を実践し、デジタル・テクノロジーと人間との新たな関係に基づくオペレーションや経営手法のバージョンアップを進める。こうした自己革新を日々繰り返す”群れ”を実現するために、私たちは、企業という組織そのものの統治(ガバナンス)の在り方も発明する必要があると考えています。

企業経営における価値基準の変化、DXの質的な変化、そしてこの2つの大きなメタトレンドを受けた企業そのものの在り方の革新が、With/Post COVID-19における企業経営の変革を後押しする見えざる手となるはずです。

COVID-19を超えて企業経営のアップデートを実現するアビームコンサルティング

既存の企業や組織は、企業経営のメタトレンドに対し、自らの未来を創る存在となるべく、オペレーションや経営手法の変革だけでなく、企業や組織そのものの在り方をアップデートすることになるでしょう。
With/Post COVID-19に向けた企業変革の核心は、未来に選ばれるための「進化」と未来を創るための「進歩」の両立であり、そのために既存の企業や組織は、COVID-19終息後もアップデートを繰り返す力を手に入れる必要があります。私たちアビームコンサルティングは、このCOVID-19終息後の世界での生き残りをかけた企業経営のあり方のアップデートを、『エンタープライズ・トランスフォーメーション(EX:未来創造企業への変革)』と定義しています。今後加速するであろうメタトレンドに対し、自らの変革を行う能力が各企業・組織に問われているのです。

ここ数年常に話題となってきたDXを、単なるDigitization(情報のデジタル化)やDigitalization(デジタル情報の活用)に留めず、本来の意味であるDX(デジタルを活用した変革)を実現するには、その前提として、自らの変革を行う企業・組織の能力、そしてアップデートを繰り返すためのエンジンが必要です。デジタルを活用した本質的な変革を行うには、まずは前提としてEXによるアップデートを繰り返す組織能力を持つことが、肝要だということです。

ではそのEXとは何なのか?これを実現するための組織能力とはどのようなものなのか?
変革の重要な成功要因として、以下の3つを提示します。

COVID-19を超えて企業経営のアップデートを実現するアビームコンサルティング
< Crucial success factor 1 >

新たな価値を探索し続けること。
そのために組織の挑戦を称賛すること


企業が、EXを実現し、未来創造企業へと変わるためには、情報を収集し仮説を立て、新たな価値・新たな世界を探索し、未来を創り出すことが重要になります。この難易度の高い『新たな価値の探索』を実現するには、専門性の追求やルーティーンの進化だけでなく、慣れ親しんだルーティーンから離れ、未知の方向に興味・関心を向かわせるという、勇気を持った『挑戦』が必要となります。組織のストレスを最小化していくということに長けた既存の企業の仕組みから、問題が起こったとしても『挑戦』を称賛するという仕組みへのアップデートが必要となります。
例えば、企業内でも、新たな刺激を受け続けるような仕組みが重要になります。ここ数年、日本企業でも一種のブームとなっている社内ベンチャー制度もその一つです。また、組織内人材のダイバーシティについても、今後はさらに真摯に取り組んでいく必要があります。さらに、マネジメント層の評価に関しても、業績数字を達成するだけでなく、同時に新しい挑戦を行って初めて高い評価となる仕組みが、本格的に運用されるようになるはずです。また、経営幹部候補が、若いうちからベンチャーへの武者修行として出向したり、子会社のマネジメントに就任したりという経験を積むことも重要です。これらは一例ですが、各企業は、探索し続けるために挑戦がしやすい仕組みを組織内に組み込むことが重要です。

なお、この新しい価値や世界を描く行為は、変化の速度が加速度的に早まっている現在において、10年に一度行うようなもの、With/Post COVID-19の世界として一度きり行うものではありません。新たな価値を探索するということに加え、探索し続けること、その探索し続ける組織能力を持つことが重要です。
また、企業をアップデートすること、すなわちEXをするうえでは、変革後の姿として自身の企業・組織のことだけを考えるのではなく、顧客体験をどのように変革すべきなのか(CX Transformation)、業界全体をどのように変革すべきなのか(Industry Transformation)、社会全体をどのように変革すべきなのか(Social Transformation)といった複合的な視点で考えることが求められます。この野心的な試みに『挑戦』続けること、さらには、後述するような、様々な企業、人を巻き込んだ『共創』を行うことが重要です。

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< Crucial success factor 2 >

組織にアジリティ(素早い判断を基にした素早い動き)をインストールすること

今回のCOVID-19の危機下で、各企業・組織の意思決定スピード・実行スピードが、『平時』に比べ速かったことを実感した人も多いのではないでしょうか? このスピードをWith/Post COVID-19に際しても維持することが、今後の企業には重要です。スピード、正確には『アジリティ』が相応しいでしょう。スポーツの世界ではSAQという言葉があります。S:Speed(速さ)、Q:Quickness(素早い動き)、A:Agility(素早い判断を基にした素早い動き)、という使い分けをしているのですが、企業に求められるものは、素早い判断を基にした素早い動きです。では、組織にアジリティをインストールするにはどうすればよいでしょうか?いくつかポイントがあります。

一つ目は、リーダー層の意思決定の素早さです。そのためには、リーダー層に対し、出来るだけ生の情報がリアルタイムに上がる仕組みが重要です。いわゆる業績数字だけでなく、顧客の状況、従業員の状況、製造ラインの状況等々、現場の状況がわかる仕組みが不可欠になります。また、情報が十分でなくとも、不測の状況であっても、意思決定できるリーダーシップも求められます。そのためには、リーダーが若い時期から重要な意思決定を経験していくこと、短視眼にならない評価の仕組みがあることなどが求められます。

二つ目は、ヒエラルキー型の組織から、ダイナミックに変動可能な組織に進化することです。例えば、大きな組織においても、コンサルティング会社の運営のように、プロジェクトをベースとした組織運営が出来ないかなどの検討の余地はあります。権限移譲した組織運営もポイントになります。

三つ目は、省人化・自動化・高速化されたオペレーションの構築です。重層的でないシンプルなプロセスとなっているか?ハンコをなくすというだけでなく本質的なことを実現するプロセスになっているか?を考えていく必要があります。また、オペレーション構築にはシンプルなIT基盤が不可欠で、例えば、業務を変えるのにシステムの変更が必要で、それには半年かかるなどといった仕組みでは素早い動きは到底実現出来ません。

四つ目は、組織の一人一人が能動的にチャレンジできる人材であることです。リモートワークが広がった結果、『個々』が判断し動くというシーンが増えていきます。『個々』が独立しつつも、『ルーズにつながっている』状態、これがアジリティには欠かせないのです。そのためには、個々のメンバーにとっての道しるべとなるような、『パーパス(存在目的)』を明確にし、共有することも重要です。

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< Crucial success factor 3 >

共創によって価値を生み出すこと。
そのために共感・共有・つながりを大事にすること


COVID-19を経験した組織や個人は、より「本質とは何か?」という問いを考えるようになりました。逆に本質的ではない事柄は不要と判断され、我慢していたことをやめるといったことが起こります。消費者視点においては、個々のニーズの多様化が消費行動にそのまま反映されるという意味で多様化が加速化され、その多様化に連動して市場は成熟化し細分化が加速化されることになります。さらには刻々と変わる環境の中で、一企業の努力だけで消費者の多くを捉えることは困難になっていきます。この動きに対応するには、社内外の人々、企業という枠を超えて存在する人々や世界中の人々、それらのエコシステムを通じて価値を共創する力を高める必要があります。そのためには、いくつかポイントがあります。

一つ目は、多様な組織・人材が『共感』を生む価値を探索し、この価値について物語性をもって、チャーミングに伝えることです。逆に周囲の組織・人が伝えようとする価値を傾聴し、『共感』する感受性をもつことも同様に重要です。

二つ目は、リソース・アセットを『共有』し、価値を実現する仕組みを持つことです。例えば、アプリケーションを作成するのに地図アプリを独自開発するのではなく、Google Mapを組み込んだ仕組みにするようなことが、もっと広い範囲で行われるようになります。また、そのようなリソースやアセットの共有を前提として、オープンで標準的なAPI(Application Programming Interface)をお互いが具備するようなことも必要です。

三つ目は、『つながる』ことです。互いを結びつけモチベートすることに加え、精神的充足感を演出し、リソース・アセットを共有する際のしがらみ・軋轢を乗り越えられる工夫が重要です。
さらに、前述した世界観の複合化、すなわち企業自身の変革に加え、顧客体験の変革、業界全体の変革、社会全体の変革を複合的に考えるうえでも、この『共創』という営みはより一層重要な活動となります。

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以上三つの要素、すなわち、①新たな価値を探索し続けること。そのために組織の挑戦を称賛すること、②組織にアジリティ(素早い判断を基にした素早い動き)をインストールすること、③共創によって価値を生み出すこと。そのために共感・共有・つながりを大事にすること、を通じた組織能力の向上が、With/Post COVID-19の企業経営において、より重要となるでしょう。そして、それら組織能力の向上により、本質的なデジタルを活用した変革も実現可能となるでしょう。

アビームコンサルティングは、With/Post COVID-19に向けたリアルパートナーとして、『エンタープライズ・トランスフォーメーション(EX:未来創造企業への変革)』というコンセプトの下、『探索』『アジリティ』『共創』といった『組織能力』のアップデートを企業構造・ビジネスモデル変革のエンジンに据え、デジタル技術を徹底的に使いこなし、デジタル時代のパラダイムシフトを乗り越えることで、企業や組織の未来に選ばれるための『進化』と、未来を創るための『進歩』の両立を支援していきます。

出典

※1 日経ビジネス 4月16日 コトラー教授緊急寄稿「新型コロナ、ニューノーマルつくる契機に」より抜粋

ホワイトペーパー

アビームの視点:COVID-19を超えて

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