Manufacturing DX:ビジネス変革を目指すDX戦略と未来工場
~Future Manufacturing Summit 2019 イベントレポート~

 

橘 知志

P&T Digitalビジネスユニット
IoTセクター長 執行役員 プリンシパル

 

~Future Manufacturing Summit 2019とは~

2019年9月11日、日経BP社主催にて「Future Manufacturing Summit 2019」が開催された。IoTやAIなどのデジタルテクノロジーが新たな価値を生み出そうとしている中、日本政府は「コネクテッドインダストリーズ」戦略を打ち出し、日本企業のDX(デジタル変革)を推し進めている。このような背景を踏まえ、本イベントではアナリティクス界のドラッガーと呼ばれるトーマス・ダベンポート氏をゲストに迎え先行する海外企業の取り組みを紹介するとともに、日本の「コネクテッドインダストリーズ」をリポートし、製造業(Manufacturing)におけるDX推進に必要なポイントや取り組みについて活発な議論を交わした。

Future Manufacturing Summit 2019

~Manufacturing DXにおける日本企業の現在地~

企業のDXが叫ばれて久しく、特にここ1-2年の進展は著しく業務への導入やPoCに取り組む日本企業が急増している。一方、製造業では、従来「自動化がものづくりの未来」と考えられてきたが、それが勝ち残るための戦略として正しいのか、改めて問いただされている。「何のために」「今後何を実現したいのか」といった議論無しにテクノロジーを導入し、手段が目的化してしまったり、今の業務の改善の域から抜けない、また特定の部門だけでの導入や部署ごとでバラバラに使っているケースがあったりなど、バリューチェーン全体の変革に程遠いのが実態だ。

~Manufacturing DXをスケールさせるデジタルトランスフォーメーション・ジャーニーの考え方~

製造業におけるDXを「今」の業務の改善で終わらせないためにまず必要なのは、自分たちの企業の存在価値を起点とし、「どのような競争優位性を確保したいのか」「どのような価値提供を行うのか」といった未来志向の根源的な議論と目的設定だ。そのうえで、製造業におけるDXは以下図のようにその目的から2つのアプローチに分かれる。また企業の戦略により双方取り組む場合も考えられる。1つ目は製品開発から製造、流通、販売までを一気通貫で結ぶ「プロセス変革」。2つ目はそこから生まれる新しいビジネスモデルに最適化された製品やサービスを生み出す「プロダクト変革」。この2つのアプローチによって、バリューチェーンを再構築することが必要だ。

デジタル・ジャーニー

~Manufacturing DXを支える未来工場、2つのアプローチ~

製造業のDXを支える未来工場もデジタルトランスフォーメーション・ジャーニーの2つのアプローチに沿って、その役割が異なる。1つ目は、日本企業が何十年と積み上げてきたQCDやカイゼン活動にデータ活用を掛け合わせ、さらなる品質向上・生産性向上、さらには自律自走できる仕組みを備えるデジタル武装型の未来工場。もう1つは、新しいビジネスやプロセスの実現を支えるProfit Centerとしての未来工場。これからの市場は日本企業が得意としてきた高品質や高スペックだけでは勝てず、サービス競争の時代に入る。需要予測までを含めたプロセスの最適化やバリューチェーン全体をうまく連携できる機能を備えることが重要だ。

~Manufacturing DXを新たなステージへ、欲しいのは適した方法論の確立と目利き~

デジタルテクノロジーはもともと汎用的なツールだ。AIにせよIoTにせよ取り入れれば何かが変わるわけではない。よって上述のデジタルトランスフォーメーション・ジャーニーのアプローチに沿って、「どこに取り入れるのか」「何をするために入れるのか」といったことを見極める目利き力が必要だ。ERPのようなパッケージ製品と異なり、企業の目的やニーズによって複数のデジタルテクノロジーを組み合わせ、ビジネスシナリオを作ることが求められる。また進化の速いデジタルテクノロジーの効果を最大限に引き出すため、さらに、これまでアナログで行っていたプロセスのデジタル化を推進するために、アジャイルな手法で効果を細かく確かめていくことが肝要だ。そのためには個別の業務に精通するだけでなく、部門横断でプロジェクトを進める力が欠かせない。大切なのはアルゴリズムやテクノロジーをどのように業務、サービスなどの実ビジネスに適合させていくのか、またそのスキル自体なのではないだろうか。

執筆者

橘 知志

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