金融機関における店舗運営のポイントと将来的な店舗像

 

本稿では、主に金融機関(特に都市銀行・地方銀行)のリテール店舗における人材活用、運営体制やルール等のソフト面に関するポイントを整理し、将来的な店舗像について解説したい。

 

1.環境変化と金融機関店舗への影響

バブル崩壊以降日本経済の成熟化による企業の借入需要低下や、マイナス金利導入による資産維持コストの増加により収益が圧迫されており、各金融機関とも収益力向上の必要性が増している。また、この期間にインターネット、スマートフォンの普及等が進んだことから、顧客接点が多様化し、店舗を利用しない顧客が増え、規制緩和と相まって店舗の在り方も変化を続けている。

銀行チャネルの利用頻度

来店客数が減少する中、多くの金融機関は、店舗統廃合やデジタル技術の活用により、事務コスト削減を進め、資産運用、ローン、相続といった相談機能を高めることで、”事務”から”セールス”へと店舗の役割を変えようとしている。多様な顧客ニーズを効率よく捕捉し、相談機能を強化して収益力向上を図るには、店舗設備やシステム等のハード面だけでなく、実際に対応する人材活用や、運営体制・ルールといったソフト面の工夫も重要である。

 

2.金融機関に必要な店舗運営のポイント

近年の金融機関の動向から、金融機関に必要なソフト面の取り組みとして、①営業時間のコントロール   ②少人数運営体制の構築   ③人事・業績評価体系の見直し、の3点について解説したい。

 

①営業時間のコントロール
土日営業、時間外営業、昼休み導入等、弾力的な営業時間のコントロールを実現するためには、平日休み、午前・午後の交代制勤務、近隣店舗とのローテーション勤務等、従業員に多様な働き方を求めなければならない。 

長期的な人材確保に向けて、今後、金融機関は 、採用や人事制度 、例えば、パート・正社員間の転換制度、育児や介護を優先できるような残業無し正社員制度等を整備する必要がある。従業員が活き活き働ける環境を整備することは、応対品質にも効果を発揮し、結果として顧客満足度向上にも繋がる。

 

②少人数運営体制の構築
近年、金融機関では、事務作業・オペレーションの本部集約による店舗事務人員の削減や、店舗統廃合・省スペース化に伴う、提供金融サービスの領域絞り込みを進めている。

少人数運営の店舗では1人が担当する範囲が拡大し、却って業務が混乱するという課題が生じているが、その場合は必要に応じ、オンラインで本部や周辺の大規模店舗の担当者と繋ぎ、リモートで顧客対応する方法等が効果的である。

 

③人事・業績評価体系の見直し
店舗の営業時間や働き方が変化する中で、従業員にストレスを感じさせず、モチベーションを向上させるための仕組みとして、今後、金融機関は、人事・業績評価体系の見直しをする必要がある。例えば、人事評価体系については、収益目標の達成度合に依存した評価ではなく、対面コミュニケーションスキルや業務遂行能力を細分化した目標等を設定し、従業員が着実にスキルアップできるような評価に変えていかなければならない。業績評価体系については、店舗のエリアや地域特性を鑑みて、評価項目毎の目標ウェイトを柔軟に設定し、適切な業務推進を促していくべきである。

 

3.将来的な金融機関の店舗像

金融機関は「お金」を基点として、顧客の人生や生活に関する幅広い相談に対応できるような「人生のよろず相談所」に成り得ると考える。規制緩和によって取り扱い可能なサービス範囲が拡大することが前提であるが、総合的に顧客の困り事を解決するコンサルティング機能を提供し、幅広く専門業者を仲介することで、収益力を高めていく。金融機関の店舗に行けばワンストップで様々なサービスを享受でき、より良い人生に繋がるような体験ができれば、顧客は喜んで金融機関を求めると考える。

人生のよろず相談所

店舗の担当者は、今まで以上に長期的な顧客とのリレーション構築を重視し、幅広い知識や専門性、説明力や聞く力等のコミュニケーション力を、自身の特性に合わせて伸ばしていく必要がある。そのため、タレント・マネジメント等のスキル習得状況を管理できるような仕組みを整備することが望ましい。

また、地域や店舗の特性に応じて人材を再教育し、適材適所に再配置する必要もある。地域や顧客とのリレーション構築を担う人材、キャッシュレスやデジタル端末の利用を促す人材、相談業務に特化してセールスを強化する人材等が考えられ、専門性の高い人材は、本部やセンターに集約し、オンライン端末でリモート対応することが効果的である。

人口減少や非対面チャネル普及等の影響により、店舗の来店客数が今後更に減少していくことが予想されるが、金融機関は、店舗や担当者の魅力を高めることによって、顧客が進んで相談したくなるような店舗構築を志向する必要がある。

 

今回は金融機関(特に都市銀行・地方銀行)における店舗運営のポイントや将来的な店舗像について記載したが、アビームコンサルティングは、今後、都市銀行・地方銀行で蓄積した店舗運営・改革のノウハウを展開することにより、金融機関に限らず、店舗というチャネルの付加価値向上、収益力強化に貢献したいと考えている。

 

 

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