変化の激しい時代における社会課題解決主体の進化・適応に関する調査

 

etic._imagephoto

1.プロジェクト目的・背景・アプローチ

ETIC_logo2020年、新型コロナウイルスの流行は、社会課題やその解決に向けて取り組む人々に大きな影響を与えました。まず、このインパクトを把握し、今私たちは何をすべきなのかを考察し、その結果を社会に発信しようという思いが、当調査の出発点です。NPO法人ETIC.(エティック)(以下、ETIC.)の社会課題解決主体との繋がりと、アビームコンサルティングの調査・分析力を活かし、本調査を行いました。

ETIC.は、1993年の創業以来、実践型インターンシップや起業支援プログラムを通して、企業・行政・NPOといった多様なセクターを巻き込みながら、挑戦したい人を支える仕組みづくりを行っています。

新型コロナウイルスの流行は、その世界的な規模や期間、人命や生活様式、さらには人々の価値観の変化も含め、未曾有の有事と言えるかもしれませんが、2000年以降を振り返ってもリーマンショックなどの経済危機や、東日本大震災等、社会に大きな影響を与える有事は多く発生しています。また、突発的な災害や危機以外でも、日本が抱える少子高齢化という課題など、今後さらに社会への影響が大きくなっていく事が考えられます。

これらの背景を踏まえ、VUCAと形容される変化の激しい時代において、NPOやソーシャルベンチャー企業などの社会課題解決主体の進化・適応の方向性を示し、その実現のための示唆を提供することを目的として本調査を実施しました。

公開情報やアンケートの分析による、社会変化や課題解決にあたる団体が受けた影響の調査。 28の団体と企業へのインタビューによる、仮説検証や、社会課題現場の生の声に基づく具体的な実態の把握。これらを通じて社会課題解決全般に対する示唆を抽出し、調査結果として纏めています。

 

etic._chosa

2.調査結果

① 新型コロナウイルスの流行によって社会課題解決主体が置かれた状況
初めにソーシャルセクターの現状と新型コロナウイルスの影響を俯瞰して見るべく、業界のデータの収集、および新型コロナウイルスの流行を踏まえた各団体の状況・取り組みについて調査を行いました。密回避のため対面支援ができなくなったこと、有事に受益者の困難度が増したことから、新型コロナウイルスの影響で社会課題解決主体が置かれた状況は、「現地対応の必須度」と「暮らしにおける緊急度」に応じて4象限に整理されました。

etic._chosa①


② 社会課題解決主体の進化・適応の4パターン
上記状況に置かれた社会課題解決主体がそれぞれの苦しい状況から脱するために、進化・適応していきました。その進化・適応のパターンを4つに整理しました。
 

etic._chosa②


③ 進化・適応のための4つのキーポイント
こうした業界分析とインタビュー内容を総合して、ソーシャルセクターが進化・適応するために特に重要な4つのキーポイントを抽出しました。各ポイントの詳細については、調査報告書をご覧ください。
 

etic._chosa③


④ 今後の可能性
今回の調査を通して、進化・適応するための重要ポイント以外に、各地域で生まれた好事例を他地域にも波及させていくことが、日本の社会課題解決を加速させるためのポイントであることが見えてきました。

かつては、好事例は都市部で生まれやすく、それが地方に展開されていくという考え方が強い傾向にありましたが、近年はLocal to Localで好事例やそのポイントが展開・共有される考え方が広まりつつあります。実際に地域の好事例が増加しており、それらを広めようとしている団体の動きも発生しています。

また、新型コロナウイルスによって加速したデジタル化や人々の価値観の変化を捉え、活用していくことで、さらに地域から地域への好事例展開の広がり、そして日本の社会課題の解決を加速する転機として捉え、潮流をつくっていくことが重要です。

ETIC.調査報告書

  • ※2021年3月31日発行

3.おわりに

本プロジェクトは、新型コロナウイルスの流行により社会課題解決主体が受けた影響を整理するところから始まり、VUCA時代においてNPOやソーシャルベンチャー企業などの社会課題解決主体の活動を持続可能にするための重要なポイントを明らかにした新しい取り組みでした。

社会課題解決に取り組む方々の経験や、個々人が感覚的に捉えているイメージを、言語化・可視化していくことで、多くの人に伝わる「情報」にすることができました。インタビューにご協力をいただいた関係者の皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。

アビームコンサルティングは、社会課題解決に繋がる取り組みを一層進めていく力となるべく、社会課題をめぐる更なる調査や次のプロジェクトを開始しています。

 

PARTNER'S VOICE

認定 NPO 法人 国際協力 NGO センター 理事長自然災害やコロナ禍のような危機は常に社会の脆弱性をついてきます。その中で私たちはどう変容すればよいのか。今回プロボノの皆さまのお力を借りることで、これまで感覚的に捉えていたことを構造的にまとめることができました。社会課題の複雑性が増す中で、ますます協働の重要性が高まっており、引き続きご一緒いただければとっております 。
 

etic.koji_yamauchi
NPO法人ETIC.
シニアコーディネーター/
Co-Founder
山内 幸治 様

page top