政治的安定性、規制の透明性、シンガポール金融管理局の高度な監督などにより、シンガポールはアジアで最も信頼される国際金融センターとしての存在感を不動のものとし、世界の投資家から「最も安全で予測可能な金融市場」と評価されている。昨今ではデジタルテクノロジーによってさらなる進化を遂げるステーブルコインをはじめ、フィンテック領域でグローバルをリードしている。
私はこの金融先進都市シンガポールこそがまさに、世界へ向けて成長軌道を描くストーリーのゲートウェイだと確信している。その真意を、これまでの自身の歩みとともに改めて伝えたい。
私はこの20年ほど、データアナリティクスとビジネストランスフォーメーションの領域でキャリアを積み重ねてきた。ソフトウエアデベロッパーからスタートし、ビジネスインテリジェンス(BI)コンサルティングの領域でデータマネジメントやアナリティクスの技術的な基礎を学んで自身の土台を築いた。その後、創業期にあったスタートアップ企業へ5番目の社員として参画。同社は他社との経営統合によって「LightStream Analytics」へと生まれ変わったが、私はその拡大を遂げていく変革期を初期メンバーとして支えた。
その後、LightStream Analyticsが2018年にアビームコンサルティングのグループ企業として「ABeam Analytics」となり、グループ内のデータマネジメントとアナリティクスの専門部隊として活動している。
ABeam Analyticsには現在80名ほどのプロフェッショナルが在籍しており、シンガポールを拠点に、データからビジネスの真の価値を生み出す支援をエンドツーエンドで提供している。
そもそも私がデータアナリティクスに着目したのは、キャリアの初期における一つの原体験が大きい。
ソフトウエアデベロッパー時代、マレーシアの大手銀行のプロジェクトに関与し、規制当局への報告の自動化に取り組んだ。当時、報告書の作成はすべて手作業で行われており、提出までに多大な工数を要するだけでなく、人為的なミスやそれに伴う膨大な見直し作業が発生していた。
そこで、これらの業務を単に自動化するだけでなく、そこに蓄積されたデータを現場のより良い意思決定や次の業務改善へと繋げられるプラットフォームを構築した。これにより、作業効率の向上や残業時間の大幅な削減、正確性の担保が実現しただけでなく、蓄積されたデータに基づく迅速かつ的確な意思決定ができる体制が整った。こうした成果が高く評価され、プロジェクト完了後にはクライアントから大いに感謝された。
この経験を経て私は、データアナリティクスがもたらすインサイトこそが組織の迅速な意思決定やパフォーマンス向上に直結し、変革を加速させる大きなインパクトをもたらすのだと確信した。
こうした原体験は、現在の私の舞台であるシンガポールにおいて、さらに深い意味を持っている。シンガポールが国際的な金融都市として認知される大きな理由の1つは、金融当局の報告要件の厳格さにある。マレーシアで培ったデータアナリティクスを意思決定へとつなげる知見は、より高度なコンプライアンスが求められるシンガポール市場で真価を発揮した。そして、この厳格なシンガポールで実現できたのであれば、データアナリティクスの価値は、グローバル市場での成長を志向するあらゆる企業にとっても、次なる成長への確かな道標になると確信した。