BearingPoint Institute × ABeam コネクテッド・デジタルエコノミーに取り組み、カスタマーエクスペリエンスを向上させるためには

インサイト
2018.06.01
  • 銀行・証券
  • マーケティング/セールス/顧客サービス
  • テクノロジー・トランスフォーメーション
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1. デジタルサービス革命

すべてが繋がる世界では、顧客は自分の指先で、完全で、パーソナライズされた、シームレスな体験ができることを期待しています。B2B/B2C 企業は、デジタルおよび伝統的なサービスを物理的な製品とリアルタイムで組み合わせることにより、エコシステムパートナーと一緒にこの期待に応えることが可能となります。

要約

  • 私達は、企業がサービス提供や顧客との関係構築について融合された技術を用いて新しい方法を生み出すコネクテッド・デジタルエコノミーの時代に突入しつつある。
  • スピードとカスタマーエクスペリエンスは必須事項であるが、どんな企業でも自社だけでは達成することができない。
  • 新しいサービスやサービスの組み合わせを組織化・収益化するために、企業にはデジタル基盤層が必要である。デジタル基盤層によってパートナーのエコシステムに参加することができ、エコシステムに参加することで顧客へマスパーソナライズされた新しいサービスを提供することができる。
  • そのためには、組織のトップから最前線の営業まで、意識改革が必要になる。

1-1.現在のデジタル革命は表面的なものに過ぎない

私たちは驚くべきデジタル時代の真っ只中にいます。今日のウェブ、ソーシャル、モバイル技術、クラウドコンピューティング、ビッグデータ分析は、それぞれが組み合わされ、ビジネスや個人的な生活のあらゆる面で、前例のない広範囲な影響をもたらしています。

しかしながら、現代のデジタル革命が全体的なものであると考えることは、重大な間違いです。最近では、顧客向けのオンラインサービスとモバイルアプリに焦点が当てられています。企業はアマゾンのような「デジタル生まれ」の競合に押され、市場機会に振り回わされています。彼らは、ビジネスモデルと提供価値のより根本的な転換、独自のサービス提供とカスタマーエクスペリエンスの最適化のためにデジタルを利用しようとしています。

将来の成功のためには、エコシステムのパートナーやサービスプロバイダーの目まぐるしい変化に対応できるよう、企業の境界を越えることが必要です。端的に言うと、たとえ大企業であったとしても、企業が単独ですべてを行うには、世界はあまりにも急激に変化しています。サービスをより充実させるには、デジタルプラットフォームを通じて統合され高度に自動化された要となるサービスにより、複雑性とコスト削減双方に対処することが求められます。私たちはこれを 「B2B2Xのデジタル基盤」と呼んでいます。「B2B2Xのデジタル基盤」により、新しいカスタマーサービス(B2C)を生み出しながら、エコシステムパートナーのサービス(B2B)を集約し、調和し、収益を上げることができるようになります。

デジタルを活用して基盤を整え、簡素化することによって、イノベーションに重点を置き、競争力を高め、ゲームチェンジを起こす提供価値を打ち出す余地を作ることができるのです。次のフロンティアは如何に個々の顧客ニーズに合わせてエコシステムを活用するかに懸かっています。結果的に、企業は未だマーケティングコストに制限される「デジタルの選択肢」としか見ておらず、根本的な仕組みを理解していません。すなわち、彼らは「デジタルが彼らのビジネスをどのように変革することができるのか」について、表面を引っ掻いているに過ぎないのです。

もし、カスタマー・エンゲージメントが成功の指標であるならば、パートナー・エンゲージメントが重要な役割を果たします。企業に時間の猶予はありません。「欲しいモノをすぐ手に入れたい」という世界の中で企業は即時に対応するか、機会が消え去り顧客が去っていくのを見るしかありません。これはカスタマーサービスにとって新しい「真実の瞬間(Moment of Truth)※2」です。消費者の動向とテクノロジーの進化は、社内の製品やサービスのライフサイクルよりもずっと早く進みます。そのため、サービスを組み合わせるためにはパートナーベースのエコシステムと連携することが最も重要です。

  • ※2

    マーケティング用語で「消費行動において顧客が価値を認識し決断をする時」を表す

1-2.デジタル・オぺレーショナル・エクスペリエンスの始まり

2010年に、ドイツテレコムの取締役会は、これまで手がけていなかった、新しい業界、サービス領域で成長するという大胆な動きを承認しました。そのちょうど2年後、ドイツの健康保険会社と提携し、2型糖尿病患者の自己管理を支援するための新しいサービスを提供することを発表しました。製品/サービスの組み合わせの事例として、契約者が自身の病気をより良く管理するためのコーチングを支援する健康監視用リストバンド(スポーツウォッチに似ています)や通信機能を備えたグルコース測定装置などが挙げられます。

TM Forum社により作られた業界標準の Frameworx スイート(eTOM、SID、TAMなど※3一連のツールが揃っている)を使用することにより、そのプロジェクトでは、安全性リスクとコンプライアンスの問題を軽減して、ベストプラクティスを構築することができました。そのプロジェクトは、提供も素早く、発表から5ヶ月で患者へサービス提供を開始しました。患者をより健康に保つ価値に加えて、年間の節約額は患者1人あたり4,000ユーロ※1でした。

  • ※3

    eTOM … The Business Process Framework、SID … The Information Framework、TAM … The Application Framework

このようなプロジェクトは、どのようにサービス管理し、運営していくかといったパートナーとの共同、オープンスタンダード構築およびデジタル・オペレーションなどと顧客ニーズを両立させなければ実現不可能だったでしょう。Forrester Research社のNigel Fenwick(ナイジェル・フェンウィック)は以下のようにレポートしています。「デジタルビジネスはカスタマーエクスペリエンスだけではなく、オペレーショナル・アジリティも推進する」※2。一度限りの成功はどのような会社でもあり得ますが、チャレンジとなるのは一貫した企業方針として革新的な新しいサービスを迅速かつ継続的に提供することで顧客との関係性を深めることです。Forrester社はこれを「デジタル・オペレーショナル・エクセレンス」※2と呼びますが、マーケティング、アプリ、ウェブサイトなどのデジタルへの陶酔は何の意味も持ちません。

カスタマーエクスペリエンスとオペレーショナル・エクセレンスを組み合わせることで、より優れた相互作用がもたらされ、顧客と真の長期的な関係を実現できます。同様にして、企業のアジリティ、マーケティングとエクスペリエンス管理、価格設定、パーソナライズされたレコメンデーションの作成を促進します。これらのゴールは、ビジネスのすべての領域とその運用モデルが変更され、プロセス、能力、文化すべてが拡張される場合にのみ達成されます。

結果、すでにデジタルの成果を繰り返し出している企業もあれば、エコシステムを基盤としたモデルが製品やサービスのライフサイクル全体にどの程度新しい影響を与えるのかをまさに学んでいる最中の企業もあります。多くの場合、内向き思考の複雑すぎるビジネスモデル、直線的なバリューチェーン、不適当なITシステム、等の多くのレガシー制約を乗り越えることが必要となります。デジタルとパートナーシップをビジネスにおいて両立するには、デジタルマーケティング・キャンペーン投資を継続するための文化的、能力的、組織的な向上が不可欠です。さて、一番良い方法とは何でしょうか?

1-3.B2B2Xのデジタル基盤の定義

二つとして同じデジタルイニシアチブはありませんが、その性質上、サービスの基盤から利益を得る、というところは共通です。デジタル基盤層のコアサービスは以下の通りです。

  • アグリゲーション - 新旧のサービス/システムの連携と統合を可能にする機能。例えばクラウドベースの分析エンジンを外部データソースと既存の顧客データの両方にリンクするなど。
  • オーケストレーション - 複数のサービスを統一感を持って実行し、運用要件とサービス・デリバリーを統一された全体として管理する能力。
  • マネタイゼーション - 組み合わされたサービスのアカウント管理、サービスカタログ、取引、使用状況監視(およびその後の請求)の自動化。

1-4.デジタルで成功するための7 つのステップ

ドイツテレコムの例のように、企業は単に自分自身のみでデジタル化することはできません。むしろ、B2B2Xのデジタル基盤を絶えず改善するためには、より豊かで、フレキシブルな他社との繋がりが必要となります。さらに、スピードとアジリティはパートナーとのコラボレーションによってのみもたらされます。新しい機能をすばやく導入したり、生み出したりすることは、単独の企業だけではできないのです。

このような背景の中で、企業は一体どこから始めるべきでしょうか?私たちは、成功の秘訣は以下に示す柱にあると考えています。

このような状況の下では、情報がとても重要です。情報は企業が新しいサービス提供をカスタマイズし、パーソナライズするための基盤となるからです。勝負は、競合他社よりも優れたデータと洞察を得られるか、です。新しい洞察は、独創的で、革新的で、差別化された方法で需要を満たすために、製品とサービスがどのように組み合わされ、カスタマイズされ、拡張されるかを定義します。良い循環では、サービスを売れば売るほど、データが集まり、良い洞察を得ることができます。それにより、正確なレコメンデーションとパーソナライゼーションができるようになります。

1.データ・ドリブンのアプローチを採用する
多くのデータソースが社外のものであることを考えると、最初のパートナーシップが、企業がデジタル戦略を推進する上で必要な洞察をもたらすために締結されるのは理にかなったことです。例えば、公開され共有されているビッグデータソースを、社内の従来のデータソースにリンクすることで、より優れた洞察を得ることができるでしょう。そして、関係が深まるにつれて、企業は、直接的な顧客とのコミュニケーションと、感情分析、テレビのスケジュール、天気予報、などの新しい情報の追加によって、顧客のより優れた洞察を得られるようになります。この分析は、企業が注意とスキルをどこに集中させるかを決定するのに役立ちます。

2.エコシステムを活用する
次のステップでは、パートナーのエコシステムを活用し、社内外の機能を融合して革新的な新しいサービスの組み合わせを企画し提供しながら、従来の直線的なバリューチェーンに基づくアプローチからバリューネットワークに基づくアプローチに移行します。これは、以下によって支えられる必要があります。

  • 共通のカスタマーエクスペリエンスを提供すること。例えばアマゾンのように、新しいパートナーを追加したり、サービスを更新したり、リアルタイムで価格を変更することができる統合・連合されたサービスカタログを通じてアクセス可能であること。
  • バックオフィスから最大の複雑性を排除すること。(完全に自動化されたサービス提供と請求を含む)このプロセスはレガシーITシステム、サービス、およびデータを完全に連携させ自動化して利用する。
  • POSシステムを超えた優れたカスタマーサービスを提供すること。パートナーが提供するサービスに紐づいた課題は警告が発信され、迅速に上位者に連携され、透明性を持って解決される。
  • クラウドベースのプラットフォーム、ソーシャル、モバイル、ビッグデータの主要なデジタル要素を組み合わせること。

これらの目標を達成するには、契約上およびサービスレベルで新しいパートナーを迅速に導入することができるB2B2Xのデジタル基盤層が必要です。(例えば、サービスを単一のサービスカタログに結合するなど)さらに、カスタマージャーニーとエンド・ツー・エンドのサービスライフサイクルに向けて組織構造を変える必要もあります。提携遅延は、新しいサービスの計画された利益を危険にさらしたり、無効にすることさえあります。このプロセスは迅速に行わなければなりません。

3.真の価値を付加する組み合わせを生み出す
デジタル開発は、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することにより、ブランド・プロミス※4を向上させ、ターゲット市場を喜ばせる新しいサービス提供を創出します。パートナーが提供するものの上に真に付加価値の高い経験を重ね、革新的な方法でそれらを収益化できるかどうかは、その企業次第です。これを怠ると、仲介業者を切り離し、より安価な商品やサービスを最終顧客に直接販売することによって利益を最適化できる、とサプライヤーが判断する可能性が高くなります。企業は自社のサービスとサービスの組み合わせを「ホワイトラベル化※5」し自律的な企業ブランドの基盤を提供できることに注意してください。この戦略は金融業界にとっては馴染みの深いものです。例えば、MBNA※6はクレジットカード業界でのホワイトラベルのマーケットリーダーです。企業は、フリーミアム※7やサブスクリプション※8のような全く新しい収益モデルを見つけることもできます。

  • ※4

    そのブランドが保証している(と消費者・顧客が思う)品質、機能あるいは価値

  • ※5

    ある企業が開発した製品やサービスを他の企業が自社のブランドとして販売できること

  • ※6

    英国の主要なクレジットカード会社

  • ※7

    基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデル

  • ※8

    ユーザーに物を販売するのではなく、利用した期間に応じて料金を請求するビジネスモデル

4.スピードの必要性を認識する
人口推計から新しいファッションまで、絶え間なく変化する市場動向は、新しいサービスの組み合わせを作成して提供するための機会の入り口を作ります。企業が成功するためには、それをパーソナライズする必要があります。機会を活用するにはスピードが重要です。すでに進んでいる市場のために何かを創り出すことには意味がありません。したがって、成功の鍵は、プロセス自動化とパートナーであり、次々とパートナーを囲い込むためのビジネスルールと関係性の抽象化を含みます。この自動化は、ビジネスライフサイクルとそのマネタイゼーションを完全に調和させるように設計されています。

5.顧客目線でサービスを提供する
サービスの組合わせは、サービスの安定性、パフォーマンス、および可用性に関する基本的な保証とともに開発される必要があります。これに加えて、サービスは、マーケットから得られる行動や情報(ソーシャルネットワークなど)の変化に応じて調整される必要もあります。サービスを社内に、そして社外に提供することによって、直接スキル、知識、その他サプライヤーに現実的に求めるものを経験し、またサービス・プロビジョニング、アップグレード、メンテナンスに関するベストプラクティスを磨くことができます。

マーケティングから販売、そしてカスタマーサービスまでのサービス提供のあらゆる段階で、風評被害から保護するために、サービスの組み合わせのエンド・ツー・エンドの責任者が必要です。何か問題が生じた場合、顧客に「申し訳ありません、それは外部サービスなので、私たちができることはありません」と言うだけでは不十分です。顧客の観点から見ると、サービスの組み合わせの提供者は、販売しているサービスのすべての要素に対して完全な責任を負うべきです。

6.独占と公開を両立させる
サービスの組み合わせは、自前で技術を「構築、再利用、借用、購入」すべきか、オープンスタンダードやプラットフォームを使用するかという、古くからの論点を想起させます。スタンダードは、エコシステムの革新と開発をより迅速に行えるようにします。ただし、定義上、オープンテクノロジーを選択することは、誰もが同じようにできることを意味します。独自の実装は顧客を囲い込み、短期的には優位性をもたらします。しかし、新しいスタンダードが出てきた場合には、互換性がないというリスクを伴います。したがって、業界が成熟するにつれて拡張と発展が可能な柔軟なデジタルアーキテクチャを構築することが重要です。よりスマートなデジタルビジネスは、サービスにAPIを提供する可能性があります。例えば、配車サービス会社Uberによって最近発表されたサービス※3のように。

7.コストに対するマージンを監視する
外部パートナーを利用した迅速なサービス開始の優位性は、マージンの縮小につながる競争的価格設定の必要性により、削減されます。企業は、組み合わされたサービスポートフォリオの継続的なマージンとコストを監視する必要があります。そうすることにより以下のようなことが可能になります。(1)特定のサービスの組み合わせを調整すること (2)新しいパートナーと提携すること (3)一部を自社内で内製化すること (4)必要に応じて、適切なリターンをもたらさないサービスを終わらせる判断をすること

成功はどのようにして計れるでしょうか?究極のリトマス試験は、マスパーソナライゼーションできたかどうかです。それは、瞬時に提案を作成して個人に直接アピールできるようになったか、ということです。マスパーソナライゼーションには継続的な革新が必要です。企業は、エコシステムパートナーから関連する新しいサービスを追加し、継続的に個人をターゲットとする魅力的な新しいサービスを作成する必要があります。これは従来のカスタマーセグメンテーションアプローチの変化を意味します。このサイクルがより速く行われるほどより良いことだということは明らかです。時間を無駄にすることは、価値を生み出す機会がなくなるということを意味するからです。

1-5.あなたの組織は、コネクテッド・デジタルエコノミー に対する準備ができていますか?

多くの企業では、まだ「デジタル」を一回限りのソーシャルメディア・キャンペーンや美しいウェブサイトのデザインだとみなしていますが、真のデジタルの成功は、継続的に提供される意味のあるカスタマーエクスペリエンスや、より深い顧客との関わりと価値の向上を実現する組織の能力を反映しています。

私たちは、コネクテッド・デジタルエコノミーの入り口にいます。技術革新は減速を拒否し、顧客の期待は高まり、「デジタル生まれ」の競合企業は彼らのビジネスモデルの潜在能力を最大限に活用します。その流れに乗れなかった場合、市場シェアが急速に失われる可能性もあり、図※4のブロックバスター、EMI、コダックのような高い注目を集める惨事になります。

重要な能力は依然として実行力であり、単にパートナーを見つけて提携するだけではなく、ブランド・プロミスを提供するための結束した全体の一部としてそれらを管理することができることです。しかしながら、リアルタイムの組み合わせがリスクをもたらすこともあります。B2B2Xのデジタル基盤の購入は長期契約を必要とする可能性がありますが、新しい組み合わせすべてが結果を出せる保障はありません。しかし、新しい製品と新しいサービスの組み合わせを積極的に創出するための「狩猟的」イニシアチブを組織することにより、ROIは高くなるでしょう。

サイロ化された業務機能の中での意識や文化の変化にとどまらず、経営陣まで到達するレベルで全社的に起業家的なやり方で考え、仕事をする必要があります。私たちは「ビジネス・トランスフォーメーション」という言葉を軽々しく扱っているわけではありません。企業には、デジタル基盤をどのように構築するか、そして、サービス提供やカスタマーエクスペリエンスを充実させるためのパートナーシップの役割を積極的に検討する組織が必要だということは明らかです。このプロセスは、戦略的資産を再定義する可能性を含み、既存の収益を共食いにより縮小する可能性があるため、非常に困難ですが、その他の選択肢はますます限られています。

デジタルの発展は、例外ではなく標準として扱われるべき閾値を超えました。将来の成功の鍵は、企業がどのように上手く(どれくらいの頻度で)、パートナーや顧客と深く連携し、様々なパートナーの「目玉」を組み合わせることによって顧客のニーズに合わせた革新的なサービスを立ち上げることができるかに基づいています。

重要ポイント

  • デジタルの成功は、複数のサプライヤーやパートナーからの製品やサービスをユニークで、革新的で、差別化された方法で組み合わせることにより、機会に素早く対応できる組織かどうかにかかっています。
  • 成功要因には、サービスカタログに新しいサービスを迅速に取り込み、新しい価値源を提供し、顧客との豊富な経験と関係を提供する、これらの能力を高める完全なエコシステムの開発が含まれます。
  • 異なる業界に属するパートナーをエコシステムに結集することで、新しい価値をもたらすことができます。それは、以前の分断されたバリューチェーンを統合して新しいサービスをパッケージ化することで、競合他社を排除し、独自性と差別化を生み出すことです。
  • どんな企業でも一回限りの製品やサービスの組み合わせを作成することはできますが、組織的に、継続して革新することは非常に困難です。
  • デジタル・カスタマーエクスペリエンスを可能とするために、ブランド・プロミスを実現するあらゆるビジネス領域はデジタル・オペレーショナル・エクセレンスを採用する必要があります。人々はアルゴリズムによって起動するビッグデータを利用することで、「マシンを信じる」ということを学ばなければいけないとともに、意思決定を迅速化することが必要になります。
  • 企業は市場に商品を投入するスピードとコスト・リスクのバランスを取る必要があるため、経営陣はより起業家的に考え、行動することが求められます。
  • デジタルを「マスパーソナライズされた」サービスの組み合わせに拡張する能力(個々の顧客を対象としてカスタマイズされたサービスと経験を生み出すためのサービスの調整)が成功の鍵です。

引用・参考文献リスト

  • ※1

    ‘Home | Research and publications | Case study, handbook 2014’, TM Forum, Morristown, NJ, USA, web, Annie Turner (ed), 10/13

  • ※2

    ‘Report | The future of business is digital’, Forrester, Cambridge, MA, USA, web, Nigel Fenwick, Martin Gill et al., 10/03/14, http://bit.ly/1B2l9cx

  • ※3

    ‘Business | Uber opens up its API ? and creates a new platform’, VentureBeat, San Francisco, CA, USA, web, Barry Levine, 20/08/14, http://bit.ly/1ueFqgj

  • ※4

    ‘Can Darwin teach us how to adapt to the era of the digital customer?’, BearingPoint Institute Report: Issue 004, London, UK, web, Erik Campanini and Kyle Hutchins, 04/14

  • Seven principles for fast-changing industries: lessons from the CIME sectors, MIT Center for Digital Business, Cambridge, MA, USA, PDF, Gregory Gimpel and George Westerman, 01/13, http://bit.ly/XYydDc
  • Addressing customer paradoxes in the digital world, Pearson Education France, Montreuil, France, French language: 1st edition, Eric Falque, 27/07/12, http://amzn.to/1rsfvzP
  • Darwinism in a consumer-driven world, Pearson, London, UK, Kindle: 1st edition, Erik Campanini and Kyle Hutchins, 25/04/14, http://amzn.to/1oeiLJR

2. アビームコンサルティングのインサイト

本レポートは2014年に発表されたレポートである。今から4年前の考察であるが、BearingPoint社の予測の通りデジタル化は進み、レポート内で例示されていた配車サービス会社のUber、民泊プラットフォームのAirbnbなど、パートナーを活用したビジネスモデルが世界中に広まっている。

しかしながら、UberやAirbnbは、日本においては海外ほど広まっていないように思える。もちろん、日本には規制があり、広げることができないという事情がある。ではなぜ、日本では規制が緩和されないのだろうか。

日本にはすでに優れたインフラが存在し、発展しているからではないだろうか。都内であればすぐにタクシーに乗ることができるし、ビジネスホテルも駅前に数多く存在する。日本の生活を支える一部となっており、関係者も多岐に渡る。

よって、日本のように優れた旧インフラがある環境では、新しいインフラとなるようなディスラプターは参入・発展しにくいのではないかと考えている。そのような環境では、既存のインフラを破壊するような劇的なディスラプトは起こりにくく、今後日本で起きるのは、大手企業とスタートアップとの"緩やかな統合"なのではないだろうか。

統合していくにあたって大切なことは、「顧客中心」であることだと考えている。世の中のデジタル化が進み企業がアプローチできる対象が広がる一方で、ユーザーの「デジタル慣れ」も進み、”賢いユーザー”が増えている。スマートフォンに好きなアプリをインストールし、見たいタイミングで見たい番組を見るように、自分の生活を自分でパーソナライズする時代になっている。これから必要になるのは、自分たちのプロダクトを売りに行くことではなく、ユーザーが自らカスタマイズできるサービス、およびサービスの組み合わせを用意し、ユーザーを惹きつけ"選んでもらう"ことになるだろう。

ユーザーの様々な嗜好に応えるために、これまでにないサービスの組み合わせを提供するには、他業種やスタートアップを含むパートナー・エンゲージメントが必要となる。日本でも、近年金融業界で広まっているオープンAPIへの取り組みや、オープンイノベーションに対する意識改革など、脱自前主義で実現する顧客中心主義(マスカスタマイゼーション)が台頭し始めており、2014年にBearingPoint社が提唱していたことが現実になっていると考えている。

ただし、企業の枠を超えたオープンイノベーションが日本で達成されるには、以下のような課題/注意点があると考えている。

  •  多様な文化を受け入れる柔軟性
    スーツにネクタイを締めて働く自社オフィスに、来客がジーパンにTシャツ姿で現れたとしても違和感なく受け入れることができるだろうか。受け入れることができるような組織文化が形成されているだろうか。イノベーションを起こすには多様な文化/考え方を受け入れられる柔軟性が必要である。例に出した服装に限らず、「多様性を受け入れる」と言葉にはしていても実際にはできていない、ということはないだろうか。
     
  • パートナー企業に対する意識改革
    協力会社やベンチャー企業を”下請けベンダー”として扱ってはいないだろうか。初対面にも関わらず、「あなたたちが(私の会社のために)できることはなんですか」と上から目線で業務/機能確認などをしてしまってはいないだろうか。エコシステムのパートナーになるのであれば、会社の規模の大小はあっても、会社の関係に上下はないはずである。ベンチャー企業であっても、下請けベンダーではなく”ビジネスパートナー”として扱い、接することができているだろうか。
     
  • 業界の常識に縛られない発想
    これまで請求をしていなかったユーザー/パートナーから請求することは不可能だろうか。機能を無償で提供し、プラットフォームを押さえてから回収する(収益化のタイミングを後ろにする)ような動き方はできないだろうか。競合と協力して収益を生む方法はないだろうか。今後は、これまでの常識を覆すような発想が重要になるが、これまでの常識ではあり得なかったような発想が出てくるような人材育成ができているだろうか。

著者

金融・社会インフラ ビジネスユニット
銀行・証券セクター
FinTech チーム
mail : JPABFinTech@abeam.com

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