前項の5つの落とし穴に陥らないための第一段階は、外部プロの選定時に、相応の要件を満たしているかを見極めることである。
➀タスクの解像度:
現場の行動原理にそって緻密にタスク設計できることが重要だ。日本式の業務プロセスや組織力学をよく知った上で「誰でも回せるタスクセット」まで落とし込めることを求めるべきである。
②ITリテラシー:
変革目線を持ちつつも、ITの制約条件に鋭敏であることが重要だ。ターゲットオペレーティングモデル(TOM)に正対するのはもちろんのこと、現行ITの状況にも配慮して現実的なTo-Be像に落とし込めることを求めるべきである。
③成果の実現性:
インパクトの大きい施策を講じることも然ることながら、「実行と融合した計画」を作り込む姿勢を持っていることが重要だ。現場のリソース手当や施策の優先順位に配慮しながら、構想が現場に「実装」されるまで伴走できることを求めるべきである。
④現場の負担軽減:協業5
接点×物量×価格面でリーズナブルに現場支援ができることが重要だ。タスクの軽重を付けつつ、重い部分では、上から目線などでなく、人当たりの良いスタッフが現場社員のモチベーションを高めながら手厚くサポートできることを求めるべきである。
⑤自走化:
自社の「自走」を促してくれる姿勢と仕組みを有することが重要だ。最初は外部プロが牽引・先導しながら、実行の主導権を自社に順次渡してくれるよう求めるべきである。
➀~⑤の要件は、一つずつ見ればいずれも当然とも言えるものだが、重要なことが2つある。まずは、「5つのうち満たす数が多いほどよい」というわけではなく、できるだけ全てを同時に満たすことが望ましい。そして、一層重要なのは、この5要件には関連性があるということである。各要件には反作用も存在し、相互補完の関係にある。例えば、緻密なタスク設計は、現場から見れば煩わしくも思えるし、一方で「手離れがよい」ことは、現場から見れば突き放されている気にもなる。実現性を気にするほど、現場に迎合して大胆な手を打てないこともある。こうした反作用をお互いに相殺するのがこの5要件なのである(図1)。だからこそ、この5つの要件を同時に満たすことが望ましいと言えるのだ。