2020年4月7日にCOVID-19にかかる緊急事態宣言が政府より発令された。この全ての企業活動を脅かしたコロナ禍のさなか、同年4~5月にかけて大規模システム開発プロジェクトの本番移行を計画し、本番移行を直前に控えた「社会インフラ基盤を支える」複数のクライアントがいた。我々はこれらクライアントの皆様と共にこの難局を乗り越えるための様々な工夫を考え、試行し、取り組み、クライアントと苦労を分かち合い、移行を無事乗り切ってきた。これらの経験はwith/afterコロナの時代にあって、多くの企業様に示唆を与え得るのではないかと考え、本稿をまとめた。
緊急事態宣言発令前後のタイミングでのシステム移行延期や本番移行直前からの後戻りは技術的にも容易でなく、失敗すると現行業務に多大な支障をきたし、ひいては多くのお客様や利害関係者に影響を与えてしまうかもしれない。だからと言ってコロナ禍に「本番移行を決行」することで、プロジェクト内部からCOVID-19罹患者が発生し、本来の移行担当者ではない代替要員が不慣れであることを原因にして移行作業をミスする等により、稼働後のシステム障害を誘発する可能性も捨てきれない。
このように大規模システム移行を直前に控える企業にとっては進退極まった状況下であったが、複数のクライアントは「本番移行の決行」を決断し、緊急事態宣言下での移行を成功させた。本稿では彼らがどのようにしてこの難局を乗り越えたのか、その際、我々はどのようなサポートを行ったのか、また、本番移行の成功が彼らに何をもたらしたのか等を紹介したい。