以上の金融機関および保険会社における住宅ローン団信への取り組み動向を踏まえて、保険会社における今後の住宅ローン団信ビジネスの取り組みとして、考えられる5つの方向性を記載する。
① 先進的な商品の開発
金融機関の商品ラインナップ拡充ニーズに応えるためには、まずは幅広い商品ラインナップを用意し、金融機関やハウスメーカー、顧客のニーズに応じた商品を提供していくことが重要だが、保障範囲の更なる拡大や他社との差別化が困難な状況になりつつあることを踏まえると、他社に先駆けて先進的な商品を開発・提供していくことも選択肢の一つとなる。例えば、個人保険で既に提供されている健康増進型保険やリスク細分型保険を団信として提供することなどが考えられる。
② 新たな付帯サービスの提供
保険会社における団信付帯サービスの実際の利用状況は芳しくないものの、金融機関の販売現場において付帯サービスが好評なことを踏まえると、団信自体の商品性に加えて、付帯サービスにより他社との差別化を図ることも一案となる。例えば、引越し・家電購入の割引サービスや家事代行・病児保育サービス等、新生活や子育て世帯を応援するようなサービスを新たに提供することなどが考えられる。
③ 持病がある顧客への対応
顧客がハウスメーカー経由で住宅ローンを申し込む際、ハウスメーカー担当者は持病がある顧客でも団信に加入できるなど、加入間口が広い団信を取り扱っている金融機関を推奨する傾向にあることを考慮する必要がある。通常の団信よりも引受範囲を拡大したワイド団信等の引受基準緩和型団信の取り扱いは今後、必須になっていくと考えられる。
④ 金融機関のシステム対応負荷軽減
保険会社との新規提携において、金融機関にとってシステム対応負荷がネックとなっていることを踏まえ、金融機関が自社と提携しやすくするような工夫が求められる。例えば、団信システムのクラウド対応やAPI対応などにより、新規提携における金融機関のシステム改修負荷を可能な限り軽減することなどが考えられる。
⑤ 研修内容の見直し
金融機関やハウスメーカーの担当者が顧客に対して団信を効果的に訴求できるようにするため、研修内容の見直しについても検討の余地がある。具体的には、商品内容に関する説明を中心とする従来の商品起点の研修から、例えば、共働き世帯には夫婦連生団信、健康状態に不安のある退職前世代には引受基準緩和型団信といったように、顧客の属性やニーズ毎に異なる提案ストーリーや訴求ポイントを提示する顧客起点の研修への見直しなどが考えられる。加えて、他社団信との商品性差異や引受可否の判定基準等、金融機関やハウスメーカーが求める情報を提供していくことも重要だ。
上記のいずれにおいても、自社のターゲット層を見定めた上で、ターゲットとする金融機関やハウスメーカー、顧客のニーズに応じた取り組みを行っていくことが保険会社には求められる。
本インサイトではインタビュー調査に基づき、保険会社における今後の住宅ローン団信ビジネスの方向性についてポイントを絞って解説した。
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