インフラ業界は、他の業界と比べて組織間、事業部門間の壁が厚い特徴がある。なぜなら、大規模な設備への投資とその後の安定した保守・運用のため、企業規模が大きく、担当役務別に分割された事業部門の規模が大きいからだ。さらに、事業部門ごとの個別の利益、論理が優先され、全社最適の視点が見落とされることがある。データ提供を依頼するため事業部門を訪れても「なぜ、他事業のためにデータを渡さなければいけないのか?」といった意見が挙がってくる。
また、社内規定や指針を重視する文化である点もインフラ業界の特徴である。多くのインフラ事業者は、長い歴史を持ち、社会基盤サービスを安定的に提供する責務を担っており、そのために公的機関や行政機関に近い組織文化が根付いていることが多い。事業部門の責務が社内規定などに明記されることで、属人性を排し、一貫性ある意識のもと、組織全体として安全で信頼性の高い安定した品質のサービスを提供する役割を果たしてきた。しかし、社内規定などの重要性が強調される一方で、そこに明記されていない業務は実施しなくても良い、といった考え方が根付いてしまっていることもある。社内規定などに「データ提供義務」が明記されていないため、「なぜ、データを提供しなければならないのか?社内規定のどこにそんな責務が記載されているのか?」といった話が挙がってくる。
社内規定などを改定し、各事業部門にデータ提供の責任を明記すれば良いのだが、この改定により責任範囲が広がることを懸念する事業部門からの抵抗にあう場合もある。データ活用の重要性を丁寧に説明し、コストや責任範囲の拡大についての懸念に対する妥協点を見つけ、データ活用文化を浸透させるなど、地道な活動が必要となる。改定までには長期的な取り組みが必要であることを認識し、無理のないデータ活用計画を立てることが重要である。