柔軟なガバナンス設計とコラボレーション文化の醸成
次に、会議体を軸に、意思決定の内容、頻度、意思決定者など、各サービスの目的達成を意識した柔軟なガバナンス設計を行う。特に、ローコード・ノーコード開発や、クラウドなどのXaaSを事業部門が主体となって推進するサービスに関しては、俊敏性や柔軟性を損なわず、最低限の基準やルールを適用するといったガバナンスの設計が必要となる。
また、関係者が持続的に価値を提供する仕組みを作るために、その土台となるコラボレーション文化を醸成することも、統合サービスマネジメント組織の活動となる。例えば、共通KPIによる評価やコラボレーションを促進する改善活動の推進、褒賞制度の適用などである。事業部門とIT部門、開発部門と運用部門といった各部門の文化の違いを理解し、それぞれの共通目標や共通となる行動指針の達成に向けて、関係者を巻き込んで推進する役割を担う必要がある。
エンドツーエンドのプロセス設計
エンドツーエンドとは、サービス提供の始まりから終わりまで、全体のプロセスを管理することを指す。SIAMにおけるエンドツーエンドのアプローチでは、異なるSPが提供するサービスを一元的に管理し、エンドツーエンドのパフォーマンスや品質を向上させることを目的としている。これらによって、複数のSPが関与する複雑なサービス提供環境において、顧客にとって価値あるサービスを提供することが可能になる。
また、SIAMのエンドツーエンドのアプローチでは、サービスの全体像を見える化し、サービスの提供や改善を進める上での問題や改善点を洗い出すことができる。さらに、異なるSP間のコミュニケーションや調整を円滑に行い、SP間の調整や問題解決を促進することができる。
統合マネジメントツール設計
そして、組織横断的な統合マネジメントを効率的・効果的に実現するためのツール設計を行う。これにより、統合マネジメントツールに蓄積されたデータを分析し、更なるコスト最適化やサービス品質向上の提案を行うことが可能となる。
最近は、統合マネジメントツールは導入されているものの、単なる実績管理に留まっているケースや、他サービスや地域への展開が進まず、効果が限定的と言ったケースが多く、統合マネジメントを実現するための設計見直しなどを図るケースも見受けられる。
このように、まずは、組織横断型のチーム組成(SI組織)を実施し、エンドツーエンドのプロセス・ツールを設計・運用することで、「(1)自社サービス視点の欠如(エンドツーエンドの管理)」が解消される。その結果、顧客・従業員の観点と合致することにより、さらなる満足度の向上を目指すことが可能となる。
次にSI組織にて、全体最適な視点で共通化すべき役割やプロセス、アウトプットなどを定義することで「(2)マルチソーシング環境によるサイロ化」を解消し、無駄な工数やコストを削減可能となる。
さらに、エンドツーエンドの管理方法の定義やサイロ化の解消によって、SPの俗人的なプロセスやブラックボックス化を解消することが可能となり、「(3)ベンダーロック」の回避を目指すことも可能となる。
最後に、SI組織を立ち上げるにあたって、自社で保持すべき機能、SI組織とSPでの役割の明確化を行うことで、イン/アウトソースの切り分けが可能となり、「(4)マルチベンダー管理をアウトソース出来ない」課題も解決することが可能となる。