新規事業開発において、事業コンセプトやビジネスモデルの初期仮説を創るところから始めるアプローチは一般的と言えます。多くの企業でも、エスノグラフィー(行動観察調査)やアイディエーションプログラム(アイディアを出し合い、精査するプロセスを学ぶプログラム)を通じ、どのようなビジネスを展開すべきか、そのビジネスモデルはどのようなものか、といった仮説構築を事業開発の検討の起点としていることでしょう。
しかし、そうして構築された仮説は、多くの場合、デスクトップリサーチを通じて得られた情報をもとにしたものであったり、あるいは事業開発の担当者の個人的な経験/想いを起点としたものであったりすることがあります。検討起点としては非常に重要なのですが、新規事業で狙っていく不確実性の高い、もしくは自社にとって馴染みの低いマーケット/顧客の実態を捉えられた仮説になっていない可能性が高いことに留意する必要があります。
つまり、初期仮説としてのビジネスモデルやコンセプトが妥当かどうか、検証/再構築を繰り返し、時には自己否定をしながらアップデートし、精度を高めていく必要があるということです。そして、その重要性は多くの方が認識しているはずであるにも関わらず、実態としてはそうなっていないケースが散見されます。
例えば、図1の①アイディアの“種”発掘や②ビジネス案作成といった初期仮説の段階から多くの情報を時間をかけて収集し、完成度の高いものを仕上げようとする試みや、そうしてこだわって創った初期仮説を棄却しきれずに、それを「正」として図の③以降のステップも進めてしまう、といったことがあります。そうした場合、マーケット/顧客の実態と乖離したビジネス、まさに「絵に描いた餅」となってしまうことはご想像に難くありません。仮説を過大に重視するからこそ、仮説検証や以降の事業開発が推進できない、と言えます。