近年のイノベーターとして思い浮かべるのは誰でしょうか。Apple Inc.を創業したスティーブ・ジョブスでしょうか。それとも、革命家と言われるイーロン・マスクでしょうか。イノベーションは、1911年に、経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義されました。イノベーションを起こし社会を変革する人材を“イノベーター”として本コラムではイノベーターの条件を論考します。
近年のイノベーターとして思い浮かべるのは誰でしょうか。Apple Inc.を創業したスティーブ・ジョブスでしょうか。それとも、革命家と言われるイーロン・マスクでしょうか。イノベーションは、1911年に、経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と定義されました。イノベーションを起こし社会を変革する人材を“イノベーター”として本コラムではイノベーターの条件を論考します。
斎藤 岳
社会に変革を起こすイノベーターの条件を弊社では3つ定義しています。1つ目の条件は「変革への強い情熱、起業家精神」です。弊社が過去に実施したリサーチでは新規事業の成功要因として、「新規事業立上に強い想いがあること」が第一条件になっています。
2つ目は「First Moverとして誰よりも早く行動し、やり抜く力」です。イノベーターの役割が新たな市場を創造することだとすると、市場のライフサイクルにおける導入期の試練を突破する必要があります。導入期は事業化の失敗のリスクも高く、事業化が見込めず、周囲からの反対もある中で誰よりも先に行動する力が問われます。先の見えない状況で、未来の成長に向けたビジネスチャンスを捉え、諦めずに行動し続けれられるかが新たな市場を創造し、成長させるための重要な要因になります。
3つ目が「多様な人々による化学反応でイノベーションを起こすインクルーシブ・リーダーシップ」です。
インクルーシブ・リーダーシップは、先に挙げたスティーブ・ジョブスやイーロン・マスクも在籍し、アメリカの産業イノベーションの発信地のシリコンバレーの源泉となっているスタンフォード大学にて提唱されている概念です。
お互いを信頼し、不安や恥ずかしさを感じることなく、リスクある行動をとることができるチームを創り、深い愛情と謙虚さを持ってフィードバックし合う関係性を築くこと。お互いの個性・強みを掛け合わせることで、組織としての創造性を6倍以上に高めることができると言われています。
イノベーターの条件についてお客様にお話しすると、「社内にはそんな人材はいない。新しい人材を外から見つけてきてくれないか」ということを新規事業責任者の方から伺うことがあります。では、どのようにイノベーターを日本国内または世界から発掘すれば良いでしょうか。
各国のイノベーションに関する能力指標であるグローバル・イノベーション・インデックス(GII)の2020年版では日本の順位はアジアではシンガポール、韓国、中国より低い16位となっています。世界のトップ3はスイス、スウェーデン、米国です。GIIの調査が始まった2007年当初日本の順位は4位でしたが、過去に日本が発揮していたイノベーション能力が現在は低下傾向にあり、近年は他のアジア諸国など世界各国にイノベーターが生まれやすい土壌があると言えます。
では、日本からイノベーターはもう生まれないのか、と言えばそんなことはありません。筆者が着目しているイノベーターに、avatarin株式会社の深堀CEO、梶谷COOがいます。深堀CEOは全日本空輸株式会社(以下ANA)に新卒で入社され、飛行機を使わずにアバターという遠隔操作ロボットを用いて、「世界中に瞬間移動できる社会を実現したい」、というビジョンを掲げ、ビジネスを立ち上げています。
航空業界は今コロナ禍で飛行機を飛ばすことができず、苦境に立たされているため、新規事業としてアバターを使った事業を考えたのではないか、と思われると思いますが、アバター事業は約5年前の2016年10月に、米XPRIZE財団主催のコンペティションでのグランプリを受賞したことをきっかけに始まっています。
ANAが国内線や短距離国際線で事業を拡大している中で着想し、周囲からは「そんなことビジネスになるわけがない」と思われる中で、熱意を持ってプロジェクトを立ち上げ、今や会社を設立するまでに至っています。ANAは二人のイノベーター候補の熱意をビジネスに繋げるために、二人がグランプリを受賞したタイミングでデジタル・デザイン・ラボという社長直下のイノベーションを創出することを目的とした組織を設置しています。企業のマネジメント陣が組織的なサポートをしたからこそ、情熱の火を絶やさずに、ビジネスモデル革新に至るイノベーターを自社から生み出すことができたとも言えます。
未来のイノベーターの候補は社内にいるのではないか、という期待を込めて、人財を探しているでしょうか。あらためて考えるべきは、今までにない志・発想を持った人財は社内にはいないという思い込みに捉われていないか、という点です。全く違うことを考える人財に出会ったときに、情熱の火を消してしまうような否定的な意見で将来のイノベーター候補の芽を潰していないでしょうか。
イノベーターが貴社で生まれるかどうかは、リーダーの貴方が異次元の才能の芽を周囲の反対意見から守り、熱意を新たなビジネスの軌道に乗せる組織環境を創れているかにかかっています。人のポテンシャルや情熱を最大限に引き出す人財マネジメントの仕組みを構築し、異質な才能を活かすインクルーシブ・リーダーシップを発揮できていない限り、いつまでも自社にいない人を探し続け、見つからず、新たな事業も生まれないという悪循環に陥ってしまいます。仮に社外から新たな才能を持った人財を獲得したとしても、イノベーターが貴社に根付く土壌が形成されていない限り、またすぐに辞めてしまう、ということも日本の大手企業では必ずと言って良いほど発生している課題でもあります。
アビームコンサルティングでは企業が抱える構造的な課題を解決するために、将来のイノベーターの発掘、育成、活躍の場をデザインし、異能を開花させる人財マネジメントと、変革の実現を企業の文化にするためのコンサルティングサービスをご提供しています。
イノベーション型 組織形成/人材育成サービスのご紹介:
https://www.abeam.com/jp/ja/expertise/SL288
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