メガバンクがグローバル市場で確固たる優位性を発揮するにはどうすべきか。その中核となり得るのが、グローバルに展開する日系企業への資金管理支援である。
日本本社との長年の取引関係を通じて蓄積した業界知見や取引慣行への理解、与信判断の蓄積は、外国銀行には容易に複製できない資産である。こうした強みを持つメガバンクだからこそ、子会社の資金効率や為替リスク、会計税務、ガバナンスを統制したい親会社と、現地の商流に応じて迅速に資金を使いたい子会社との緊張関係を理解し、資金の集中や配分、日中利用、通貨変換、グループ内貸借、会計税務処理を一体で設計できる。
また、想定されるターゲット顧客は日系企業に限定されるものではない。日本との貿易を行う現地企業に対しては、信用状(L/C)確認、売掛債権買い取り、為替ヘッジ、円建て決済、日本企業の信用情報に基づくリスク判断などの機能を組み合わせた多角的な支援が可能となる。
日系大手メーカーや商社をバイヤーとする現地サプライヤーであれば、サプライチェーンファイナンスを通じて売掛金の早期資金化を支援し、バイヤー側の支払い条件最適化とサプライチェーンの安定化を同時に目指すことができる。日本関連取引を持つ外資系グローバル企業に対しても、日本の決済や外為、貿易金融、規制実務に通じたパートナーとして、さらなる関係深化の余地が存在する。
メガバンクの海外拠点は、従来の日系企業支援という重要な役割を礎としつつ、日本関連商流全体を支える金融インフラへとその機能をさらに拡張していくことが求められる。現地銀行と正面から総合取引を争うのではなく、日本企業との商流や日本向け貿易、日系企業のサプライチェーンという接点に金融機能を重ねることで、独自のポジショニングが可能となる。
日系企業のサプライチェーン等への金融機能の提供を目指す場合に重要となるのが、その提供価値をどのように顧客業務へ組み込むかである。その実現手段として挙げられるのが、法人向け「プロセス統合型バンキング(注)」の推進である。従来の「プロダクト型バンキング」が個別商品を銀行チャネル経由で提供するのに対し、プロセス統合型バンキングは、顧客の業務フローそのものに金融機能を組み込む点で本質的に異なる。
海外での事業基盤が主に法人領域にあるメガバンクにとって、エンベデッドバンキングの主戦場は、この法人向けプロセス統合の領域にある。顧客が銀行ポータルを開いて操作するのではなく、日常の業務画面の中で資金移動や貿易金融の判断を行える状態を築くことこそが、今後の重要な差異化要因となる。AIの活用でも、決済失敗の予兆検知や資金不足の予測、入金消し込み、キャッシュフロー予測など、顧客の資金運営を安全かつ迅速化する領域への重点的な投入が有効である。
※法人顧客の統合基幹業務システム(ERP)やトランスポーテーション・マネジメント・システム(TMS)のほか、会計や購買、販売、物流、貿易に係る管理システムに、支払いや入金、為替、貿易金融、サプライチェーンファイナンスの機能を API 連携で組み込み、顧客の業務プロセスの中で金融処理を完結させるモデル。