これからの組立製造業に必要なのは、在庫を増やすことでも、本社統制を強めることでもない。地域に権限を委ねるだけでも足りない。在庫戦略や統制、分権といった従来の個別施策の延長では、この課題は解けない。求められるのは、どこを揃え、どこから任せるかという意思決定原則を、経営の意思として明示することである。地域が速く判断できるよう本社が何を提供し、何を標準化するか。この境界設計こそが、トップが下すべき判断である。
不確実性が常態化する時代において、企業競争力を左右するのは、平時の効率性でも、有事の在庫量でもない。地域市場の変化に対し、地域がどれだけ速く判断できるか。供給制約や有事の混乱に対し、全社としてどれだけ速く実行可能な打ち手を選び取れるか。この両方を、同じ運営モデルで成立させられるかである。連邦型SCMに向けた取り組みは、地域競争力を底上げしつつ、有事には拠点横断の相互補完を可能にする経営アジェンダである。
経営が下すべき判断は三つに尽きる。地域競争力を支える共通経営資源とSCM上の戦略制約をどう定義するか。平時の地域裁量と有事の標準化ルールの境界をどう引くか。そして、地域の意思決定と有事の代替判断を支えるデータ接続に向け、IT部門任せにせず経営として投資の優先順位を決断することである。順序はなく、これらを同時に設計し、地域の俊敏性と全社の供給継続力を、一つの運営モデルとして成立させられるかが問われている。
その起点となるのは、全社一斉のシステム刷新ではなく、自社にとっての境界設計──どこを標準化し、どこを委ねるかを経営の意思として定義することにある。 ただし、この問いに答えるには現場の実態を知らなければならない。どの資源が分断され、どの制約が共有されておらず、どこで意思決定が滞っているのか。共通経営資源として何が地域に不足しているか。制約はどこに潜んでいるか。権限の境界は現場でどう運用され、どこで機能不全を起こしているか。データは計画と現場の間でどこが途切れているか――。
アビームコンサルティングは、経営戦略の構想から、需給計画業務の再設計、製造現場の実行基盤の構築まで、計画と現場の双方に入り込める実行力を有している。我々が重視するのは、経営が描く構想を、現場が納得し実行できる共通言語へ翻訳し、定着させることである。
この三つの連動のうち、自社はどこが最も脆弱か、どこから手を付けるべきか。重要なのは、順序を議論することではなく、自社の弱点を起点に同時並行で設計を進めることである。その答えを、共に見つけるところから始めたい。